何か忘れかけていた古き良き時代の4ビートを思い出させてくれる燻し銀のドラミングだ
"COBB IS BACK IN ITALY"
MASSIMO FARAO(p), PAOLO BENEDETTINI(b), JIMMY COBB(ds)
2002年3月スタジオ録音 (TBPJAB054)

前掲のMIRABASSIのアルバムを聴いた後は、しばらく、その余韻が残っていた。こんな時は思い切ってがらりと曲想の違うアルバムを選ぼうと思った。でないと、余韻の影響を受けて批評が辛口になると予感できたから。
試聴機でこのアルバムを聴いたとき、JIMMY COBBのドラミングに引かれた。こういう懐の広い大人のドラミングはヨーロッパのミュージシャンにも見習って欲しいものだ。幸いにトリオを組む二人はイタリアの新鋭だという。
ドラマーがリーダーのアルバムというのは、得てして自己顕示欲の塊みたいなヤツをよく見かけるが、これは違う。あくまでもグループの調和をメインに展開されており、耳障りな部分が皆無だ。全曲、COBBの軽快なシンバリングに心も踊る。

@"SONG FOR THE STREET PEOPLE" いきなりの4ビートがご機嫌なのだ。このシンバリングを聴いたら、体が揺れてくるというものだ。明るく陽気なでノリの良いアメリカン・テイストの曲。
A"I'M AFRAID THE MASQUERADE IS OVER" @同様の快いドラムのシンバリングに乗って明るく軽快な演奏が展開される。

B"WHAT KIND OF FOOL AM I?" しっとりとバラード。
C"SUGAR RAY" PHINEAS NEWBORN JR.の曲。リラックスして楽しもう。
D"JUICY LUCY" ファンキーなHORACE SILVERの曲。
E"LOVE FOR SALE" GERSHWINの名曲。COBB、大いに張り切る。

F"WRINKLES" かつての盟友、WYNTON KELLYの手になる典型的なブルース。12小節がぴったり嵌っている。4ビートを刻むシンバルの音が「ビシビシッ」と聞こえて快い。ケリー節も適度に加えて、やってくれますね。
G"LET'S FALL IN LOVE" 今度はブラッシュ・ワークだ。「サクサク」とここでも軽快!リラックス、リラックス。
H"THE BEST THINGS IN LIFE ARE FREE" 最後に4バース(4小節交換)で決めた!

ピアノのMASSIMO FARAO'は派手さはないが堅実なスウィング感溢れる演奏で好感が持てる。ベースのPAOLO BENEDETTINIはお世辞にも上手いとは言えない。ベースがもっと上手かったらこのアルバムも更に印象が良くなるだろうに。
そんなこんながあったとしてもCOBBのドラミングは見事。兎に角、耳に快いスイング感に満ちている。特に4ビートのシンバリングがGOOD!!「ピシ・ピシ、ビシ・ビシ」と聞こえるシンバリングの音が最高なのだ。何か忘れかけていた古き良き時代の4ビートを思い出させてくれる燻し銀のドラミングだ。

このイタリアのAZZURRAレーベルというのは低価格が売り物のレコード会社らしい。このCDも消費税込みで、1400円出したらお釣りが来た。これは有難い。昨今、コピー・コントロールCDとか言ってユーザー・ベネフィットを損なっているにもかかわらず¥3000近く払わせるレコード会社が日本にはあるが、こういうサービス精神を見習って欲しいものだ。
(2003.11.27)



JIMMY COBB

独断的JAZZ批評 165.