DON FRIEDMAN の名盤というとこのアルバムが一般的だが、果たしてそうだろうか?
"CIRCLE WALTZ"
DON FRIEDMAN(p), CHUCK ISRAELS(b), PETE LA ROCA(ds)
1962年 スタジオ録音(RIVERSIDE OJCCD-1885-2)

DON FRIEDMANの名盤というと必ずといって良いほどこのアルバムが紹介される1961年録音のピアノ・トリオ盤。

このピアニストは常にBILL EVANS と比較されるかEVANS派の一人として扱われ、過小評価されている嫌いがある。近年の FRIEDMAN を聴くにつけ、必ずしもEVANS派だとは思わない。むしろ、リリシズムと同時にスピード感やドライブ感を併せ持っている稀有なピアニストだと思う。

「この人のベスト・アルバムは?」と聞かれたら、僕は "LATER CIRCLE" が決定盤だと思うのだが、何故か世に現れてこない。CD盤が出たらすぐにでも紹介したいと思うのだが、どうも廃盤になっているようだ。
ともあれ、このCD。
6曲目 "SO IN LOVE" でのピアノ・ソロによる激しい情念のほとばしりが僕は好きだ。この曲を除く6曲はトリオ演奏で、美しいテーマを無難にこなした感じ。4曲目の"IN YOUR OWN SWEET WAY" や、 "LOVES PARTING" は FRIEDMAN のピアノがしっとりと歌い上げているが、それ以上のものがない。サラーッと甘く美しさだけに流れた感じ。

PETE LA ROCA というドラマーの名前は実に懐かしく感じる。確か "BASRA" というリーダー・アルバムがあった。当時は結構色々なグループに参加していたハズだ。このアルバムでは左手のおかずがバタバタと五月蝿い。
ベースの CHUCK ISRAELS は1960年代の前半、BILL EVANS TRIO のメンバーとしてもやっていた。このアルバムはその頃の二股を掛けていた時の演奏だ。

個人的な好みで言えば、JAZZ批評 55."THE DAYS OF WINE AND ROSES" の方が断然好きだ。最後に入っている "IT COULD HAPPEN TO YOU" を筆頭に、ドライブ感がある上にグループ全体のまとまりもある。FRIEDMAN 自身が EVANS の幻影から逃れアイデンティティと自分のスタイルを確立している。4曲目と8曲目のオリジナル曲にそれが良く表れている。
BGM 的しっとりと聞きたい向きにはこの "CIRCLE WALTZ" の方が良いかも知れない。 (2002.06.16)



DON FRIEDMAN

独断的JAZZ批評 77.