葛藤にまみれた心描く
 『ショパン 愛と哀しみの旋律』(Chopin:Desire For Love) 監督 イェジ・アントチャク

高知新聞「第61回県芸術祭特選映画鑑賞会 見どころ解説」
('11.10.31.)掲載[発行:高知新聞社]


 わが国で最も有名なポーランド人の筆頭に挙げられるのは、おそらくフレデリック=フランソワ・ショパンに違いない。そのピアノの詩人の後半生を描いた作品だ。

 ポーランド映画であるにもかかわらず、英語劇になっているのはともかく、ほぼ全くと言っていいほどに美化されていない点が目を引いた。

 今どき流行の、女性のほうが年上の「年の差カップル」。それを150年余り前に先駆けていた部分を軸に、作家ジョルジュ・サンド(ダヌタ・ステンカ)とのノアンでの暮らしぶりが主に描かれるのだが、ありがちな故国への思いのほどがつづられたりはしない。むしろ有り体と言っていいように描かれた愛人生活において、いささか幼稚で短絡単純なショパン(ピョートル・アダムチク)像が印象深い。映画の中に出てきていたように思う15歳差という言葉が奇妙には映らないくらいだ。サンド母子の少々異様にも感じられる親子関係にはあぜんとした。

 ショパンが最も美しい作品の数々を誕生させていた時期がこのような状況の中にあったことを思うと、音楽に限らず芸術というのは、単に美しいだけでは済まない奥深いものであることが、あらためて染み入ってくる。ショパンが放浪した各地を忠実に追ったというロケーションによる風景や調度品の美しさが、葛藤にまみれた人間の心模様とは対照的に際立っていた。
by ヤマ

'11.10.31. 高知新聞「第61回県芸術祭特選映画鑑賞会 見どころ解説」



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