『GHQの6年8か月 マッカーサーの野望と挫折
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映像の世紀バタフライエフェクト
 

 1945.8.30.の横須賀上陸・厚木着陸に始まるGHQによる占領政策を概観していた。その第一義が、軍国主義に染め上げられた日本人の洗脳解除のための非軍事化と民主化にあったとする点からは、現今推し進められている軍備強化と国家主義化こそは、まさに反占領政策として旧態を「取り戻そう」とする動きであることが浮き彫りにされていたように思う。

 その非軍事化と民主化のために取られた五大改革として挙げられていた施策が、①参政権を始めとする婦人の解放、②労働組合の奨励、③学校教育の民主化、④圧政的諸制度の廃止、⑤財閥解体を始めとする経済機構の民主化、という形で並べられたときに、最も日本国民に影響が大きかったはずの農地改革をなぜ避けているのだろうと思ったら、後に別途大きく取り上げられていた。

 それにしても、前段に挙がったこの五項目を改めて眺めてみるだに、現政権与党の「保守派」と呼ばれている勢力が、いかに反占領政策を志向しているかが歴然としてくるように思えて、この項において敢えて農地改革に言及せずにおいていたことの意味が強く窺えるように感じた。

 ①に対しては、選択的夫婦別姓や経口中絶薬への頑迷なまでの反対。②に対しては、雇用流動化政策の推進のための正規雇用と非正規雇用による分断。③に対しては、愛国教育や国家・国旗の法制による教育現場への徹底。④に対しては、国民保護法や特定秘密保護法、平和安全法制などの制定。そして、⑤に対しては、エコに名を借りた減税による車と家電の販促やふるさと納税などの富裕層や大企業に対する優遇税制や縁故資本主義による公的資源のアウトソーシングなどが、忽ち思い浮かぶ。これらの施策が着々と推し進められて来るに従って、日本の国力が衰退してきているように常々感じていただけに、本作の構成に大いに感心した。

 七十年前の時点で既に、この占領政策の第一義が、中華人民共和国の誕生とソ連の強化により、いわゆる逆コースを辿ることで蔑ろにされるようになったわけだけれども、マッカーサーの所期の政策に対するアメリカ政府からの変更圧力が掛からなければ、日本はどのような国となって独立することになっていたのだろう。近年特に顕著な“反五大改革”のここまでの進展というものを見ることはなかったのだろうか。
by ヤマ

'23. 8.22. NHKプラス



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