『ゼイラム』['91]&『ゼイラム2』['94]
『ジュピター』(Jupiter Ascending)['15]
監督 雨宮慶太
監督 ラナ&アンディ・ウォシャウスキー

 先に観たのは、ほぼ三十年前の特撮映画になる『ゼイラム』の二作。クリーチャー造形や森山祐子の演じたイリアは、けっこう魅力的だったけれども、筋立てや運びが何ともチープで、勿体ない気がした。股旅っぽいゼイラムのシルエットには、松本零士の『ガンフロンティア』を想起した。それにしても、特典で観たアメリカ版の予告篇では、ゼイラムがZERAMになっていたのは何故だろう。また、アメリカでの興行成績はどうだったのだろう。

 続けて観た第二作は、基本的に三年前の第一作と変わりないが、前作よりも見映えがし、オッサン臭さばかりが目立っていた神谷肇(螢雪次朗)の活躍する見せ場が少なからずあって目を惹いた。平成ガメラでの大迫刑事以上だったように思う。イリアたちを裏切るフジクロ(サブ)のキャラクターが些か鬱陶しかったが、森山祐子の演じるイリアは相変わらずカッコよく、豊かな胸の魅力は倍加していたような気がする。

 それはともかく、第二作の最初のほうで登場するバウンティ・ハンター軍団の雰囲気に『マッド・マックス:怒りのデス・ロード』['15]を先取りしている感じがあったことに驚いた。また、先ごろNHKで、三十年前にブームになった巨大観音像建築が老朽化するなか、バブル崩壊で所有者も変遷して荒廃し、各地で問題になっていると報じていたが、まさしくその巨大観音像を舞台にしていたところが目を惹いた。本作で使われていた観音像は現在、どうなっているのだろう。


 続けて観た『ジュピター』は、リアル・ドラマなのか『スター・ウォーズ』系のスペース・ファンタジーなのか、木に竹を継いだような妙な展開にジュピター・ジョーンズ(ミラ・クニス)の夢見物語かもしれないと思い掛けていたら、観たばかりの『ゼイラム』に、ある意味、通じるようなファンタスティック映画だった。

 従妹のジュピターに卵子提供のカネ稼ぎを唆す従兄が取り分がどうして逆なのとの異議申立てに対して資本主義さ、糞は下へ、利益は上に流れると返すという台詞を設えてあったりすることに早々と感心していたら、人間は資源を巡り争ってきた。石油、鉱物、土地…でも、宇宙で最も価値のあるものは時間よなどといった含蓄のある台詞が、随所に散りばめられていたように思う。

 筋立てにしても、運びにしても、アクション、特撮、スケール感、製作費、いずれをとっても『ゼイラム』とは次元が違うとすっかり観惚れていたら、なんとウォシャウスキー姉弟の作品だった。『マトリックス』['99]によって間違いなく映画史に名を残すに違いないウォシャウスキーと並べるのは、さすがに酷というものだとは思ったが、続けて観たから仕方がない。

 各種の異種交配によるクリーチャーの造形も見事なもので、アクション設計やメカニカルな造形にも、何処にも安っぽさのないクリエイティヴな画面にハリウッドの威力を感じた。
by ヤマ

'23. 7. 1. DVD観賞



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