『けっこう仮面』['91]
『けっこう仮面2』['92]
『けっこう仮面3』['93]
『009ノ1 ゼロゼロクノイチ THE END OF THE BEGINNING』['13]
監督・脚本 早川光
監督・脚本 秋山豊
監督・脚本 秋山豊
監督 坂本浩一

 定例合評会の主宰者である高校時分の映画部の部長に、『けっこう仮面』と『009ノ1 THE END OF THE BEGINNING』による「永井豪 VS 石森章太郎の実写R15対決」を課題作案として提起したら、後者が新しくて青春プレイバックにならないと却下され、残念がっていたら、DVDを貸してくれた。

 その映友部長がBOXで鑑賞してあの頃の永井豪のイマジネーション世界に惚れてしまったひとりとして、なんだか大切な作品…その後もたくさんの映像化がありますが、画質と配役、演出はこれがベスト。とSNSに書いていたので、ひとっつも観ちゃあせん気がするき、ベストも何とも言いようがないけんど、必殺技おっぴろげジャンプを紙面で観たとき、唖然としたことは、よう覚えちゅう(笑)。なんぼ言うたち、とそのアホさに笑うた。とのコメントを寄せていたものだ。前日にイーストウッドが「お仕置きは大好きだ」などと言っていたトゥルー・クライムを観たばかりだしという奇遇もあってスパルタ学園を訪ねることにした。「顔をかくして、身体かくさず!」コンプリートコレクションのDVDには、シリーズ3作品が収録されていた。

 最初に観た第一作では、トップクレジットがポール牧ときて意表を突かれたが、「顔をかくして、身体かくさず!」のけっこう仮面だから、学園長のサタンの足の爪から来るしかなかったのだろう。学校教育における恐怖支配を謳い上げるプロローグに続くタイトル表示後の本編が女子寮の学生の寝姿で始まる如何にも感が妙に可笑しかった。本編では顔が隠れたままだったけっこう仮面だが、特典のメイキング映像でヌンチャクの扱いを練習していた女優がけっこう仮面だったのだろう。

 それにしても、聞きしに勝るアホ映画だった。今どきだと、学園先生の仕置きネタよりも弁教師(モロ師岡)の猫の解剖実験ネタのほうが顰蹙を買いそうだ。縛りつけられた猫の異様に発達したおっぱいに唖然としつつ、それによって弁先生の剃毛趣味を仄めかしていた気がする。気色の悪い怪演ぶりは登場教師中、No.1だったように思う。最も可笑しかったのは、柔道の新任教師立花(プリティ長嶋)のキャラクターで、体育会系の直線的な邪心のなさで繰り出し誇示する“上二方乳固め”などの技名に笑った。けっこう仮面と違ってジャンプのないおっぴろげ技の、威力というかチン力の無さといい、しょぼさが群を抜いていた気がする。

 けっこう仮面が必殺技おっぴろげジャンプを繰り出すときも立花同様に決め技名を発していたように思うが、それがなかったのは僕の遠い日の記憶違いなのだろう。だが、開股角度が全然足らなくて原作漫画を損ねているように感じられたのは記憶違いではないはずで、大いに残念だった。折角あそこまで演者が頑張っているのに、肝心の決めショットの絵柄に力がない。肝心の場面に力を欠くと、誰もが間違いなく実写化不能と思っていたであろう迷作を敢えて実写版で送り出す意気込みに欠けると看做されても仕方がない気がする。どうせ暈しで隠すのだから、体操競技経験者を確保してワイヤーアクションで撮ればよかったのに、と思ったが、予算がなかったのだろう。

 翌年の第二作では、監督・脚本が早川光から秋山豊に代わり、尺が二十五分も長くなっているが、むしろ緩慢になって仇になっているように感じた。弁先生に替わるDr.ポチ(TERU)も、助手のルイ・シュタインベック3世(酒向芳美)も活かされていなかったし、バイオレンス・チャック(団時朗)もまるで冴えなかったように思う。ただ原作者の永井豪がひややっこ先生として特別出演しているだけあって、必殺技おっぴろげジャンプの開股角度は文句なしだったし、きちんと決め技名を発していた点には感心した。だが、お馬鹿映画はテンポの良さこそが命だと思われるのに、そこのところがさっぱりだったので、落胆した。

 前作の女子寮ではなく反省棟から始まったが、同じ拘束を描いてもチェーンソーが登場すると、エロではなくホラーになるのだと、拘束具の本義のほうに気づかされたのも束の間、肌を覗かせるためだけの衣服の切り裂きしかせずにすぐさまエロ系に回帰する序章に少々感心したことが仇になったのかもしれない。寮の名前が「凄ノ寮」だったのは、やはり『凄ノ王』からなのだろう。

 さらに翌年の第三作になると、尺も一時間半を超え、立派な単体映画の長さになっていたが、使い回しのスパルタ学園画像がいきなり映し出され、さすがに食傷しそうで先が思いやられると思いきや、第二作の反省棟とワーグナーから、ロマン派のチャイコフスキーを弾く音楽室に転じるばかりか、けっこう仮面が「いやん」と発しながらしたためるラブレターが現れて意表を突かれた。恋する乙女と化した彼女が正義の使徒たる己が務めと己が技への恥らいに葛藤するなどというトンデモ展開もさることながら、笑い処連発の小ネタが嬉しい意外作だった。

 名も与えられぬ仕置き教師A(山口健三)に恋する女学生めぐみ(高橋真由美)の仇名が魔女っ娘メグならぬマゾっ娘メグというお仕置き好きで、彼女がスパルタ学園の弱体化を憂い、けっこう仮面と高橋真弓(桂木亜沙美)一派の足を引っ張る側に回っていて、学園長サタンの足の爪(九十九一)の姪で学園立て直しに乗り込んできたキューティーハニーならぬキューティバニー(近藤理枝)の一味についていた。バニーガールスタイルのキューティバニーの言う舐めるとしょっぱいわヨに失笑し、けっこう仮面が恋する音楽教師の名前が黛で、この声は菅田俊?とその役処の思い掛けない甘い二枚目ぶりが面白くて、キューティバニーが連れてきたサタン軍団のセイレーンならぬチヂレーン(尾崎魔弓)や、暗いところでは威勢がいいけれど、明るいところではからっきしとなるデビルマンならぬビビルマン(斉藤聡介)、けっこう仮面のカタカタ人形などが可笑しかった。

 ダーティ・ペアならぬダンディ・ペアなるものは今一つだったけれども、前作でけっこう仮面の仕置きを受けたサタンの足の爪は、拝一刀の乳母車を思わせる車椅子に乗る生活を余儀なくされるほどに弱体化しているのが可笑しく、口元も隠れているけっこう仮面と黛先生とのキスシーンや、けっこう仮面の雑踏での野外撮影に驚いた。石井光三による大魔神ネタや、うる星やつらのラムちゃんならぬラメちゃんネタは冴えない気もしたが、七人ものけっこう仮面が♪花のワルツ♪に乗せて舞い踊り格闘して、愛の讃歌を謳い上げる、スパイダーマンメタバースを先取りしていたとさえ思えるような結末に呆気に取られた。

 そして、エンドロールのスペシャルサンクスに「パート2を見て笑ってくれた人」「エンドタイトルまで読んでる貴方」とクレジットされていたのが可笑しかった。ニ十分カットして第二作より短くし、笑いネタを厳選して引き締めていれば、本作が最も面白く観られたような気がした。


 映友がやはり、あの頃を知る監督がやらないと別世界になっちゃうと記していた『009ノ1』のほうは、R15指定ながら、ミレーヌ・ホフマン(岩佐真悠子)のバストガンすらおっぴろげないという、非R15指定の『けっこう仮面』にも及ばぬ、実に露出の絞りが利いている作品だった。

 アクション監督による監督作品だけあって、ポルノ映画のベッドシーンのごとく、やたらと格闘シーンやアクション場面が頻出してきていたように思う。フェチ的ジャンルで言えば、いわゆるキャットファイトものということになるのだろう。

 ミレーヌよりも、クリスこと弟ポール(木ノ本嶺浩)が母に似せて作ったというミリアム(長澤奈央)のほうが、かっこよかったような気がする。ゾンビをパクって、アンデッド・ミュータントなどと言っているのが可笑しく、また本田博太郎の出演は、いったい何だったのだろうと失笑した。
by ヤマ

'23. 5.17,19,20. DVD観賞



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