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『抜き射ち二挺拳銃』(The Duel At Silver Creek)['52] | |||||
監督 ドン・シーゲル | |||||
ゴールドラッシュの時代、かような阿漕が罷り通っていたのかと唖然とするような序盤に驚いた。電光石火のライトニング【稲妻】との異名をとる早撃ちながら、負傷して引き金を引けなくなっているタイロン保安官(スティーブン・マクナリー)と、金鉱採掘権を奪い取られたうえ父親を殺されてガンマンになったと思しき、二挺拳銃を携えたルーク・“シルバーキッド”・クロムウェル(オーディ・マーフィ)のどちらが主役なのか、その邦題と人物造形からすると、どっちつかずになるような感じが漂っていたのは、その役柄にもかかわらずスティーブン・マクナリーが見せていた貫録と、タイロン保安官が“ブラウンアイズ”と呼んでメロメロになっていた悪女のオパル(フェイス・ドマーグ)との関係が印象深く描かれる運びのせいかもしれないと思った。 証拠さえ残さなければ怖くないと豪語しつつ殺しを繰り返し、悪辣非道の無法者を率いていたわりには優男然としたロッド・レイシー(ジェラルド・モーア)も、彼らを追う保安官タイロンもすっかり手玉に取りつつ、ロッドの妹を称していたオパルの悪女ぶりを達者に演じていた、フェイス・ドマーグが目を惹いた。ルークとタイロンの諍いを盗み聞き、タイロンにオパールの首飾りを着けさせてみたり、わざと床に落として彼に拾わせる際の指使いを目視して確かめる小賢しさは、ルークが心を寄せる“ダスティ”ことジェーン(スーザン・キャボット)の単純さとは役者が違い、ジェーンがタイロンを慕いつつも彼がオパルのほうに魅せられるのも解らぬではない艶やかさをよく演じていたように思う。 さればこそ、素性がばれた際にあっさり白状してしまう呆気なさが意外だったが、七十年前の西部劇であることからすれば、已む無き約束事のように思えなくもない。それが大衆文化たる映画の往年の約束事だったように感じられるほど、昨今は、虚構でも現実でも、実に往生際の悪い足掻きや居直り強弁、しらを切る面々が目立つ。そのようなことを触発してくれた、オパル・レイシーの最期の印象深さから、僕にとっての本作の主人公は、オパルだったような気がした。 このところ、『胸に輝く星』『誇り高き男』と後進への保安官指南を描いた西部劇を続けて観たこともあり、若いルークに比して実に形無しだったタイロンを描いた本作は、その点からもなかなか興味深かった。 それにしても、原題が“Silver Creek”となっていて“Gold Creek”ではないのは何故だろう。地名と言ってしまえばそれまでだが、やはりシルバーキッドから来ているのだろうか。 | |||||
by ヤマ '23. 4.27. BSプレミアム録画 | |||||
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