『ダンディー少佐』拡張版(Major Dundee)['65]
『特攻大作戦』(The Dirty Dozen)['67]
監督 サム・ペキンパー
監督 ロバート・アルドリッチ

 先に観た『ダンディー少佐』は、原案自体は悪くないどころか、とても興味深い話のように思えるのに、肝心の脚本が御粗末で実に散漫な焦点のぼやけた作品になっている気がした。それでも、136分を飽かせず見せる画面作りというか、人物の映し方は大したものだと思った。

 ただ、これではタイトルになっているダンディー少佐(チャールトン・ヘストン)の無能指揮官ぶりを縷々語った話になっていて、元部下で彼が罷免したことによって南軍将校に転じたと思しきベンジャミン・タイリーン大尉(リチャード・ハリス)との因縁の深さと愛憎及び信頼の入り混じった関係の描き方が全く不十分な気がした。部下なのか軍属なのかよく判らないサミュエル・ポッツ(ジェームズ・コバーン)との因縁の深そうな関係についても同様で、釈然としない食い足りなさが残った。さらに訳が分からなかったのが、ダンディーとタイリーンを手玉に取っていた村の女医テレサ・サンティアゴ(センタ・バーガー)の人物像だったが、センタの美貌と思い掛けない豊満さに目を奪われて、どうでもよくなった。

 それにしても、最後のフランス軍との戦闘では、どう見ても語り手であるラッパ手のライアン(マイケル・アンダーソン・Jr)が言っていた国境の川を渡ったのは戦闘前からだったように思われるが、最初にフランス軍が川を挟んで待機していたのは、川が国境ならアメリカ側だったのだろうか。タイリーン大尉が最後に死に花を咲かせたのはメキシコ側のはずなのだが、されば、フランス軍は元々どちら側にいたのだろう。ともあれ、南軍・北軍・先住民・フランス軍・メキシコ自由軍、あちらでもこちらでも戦闘というなかなか凄まじい時代だったが、ダンディー少佐が率いたような混成部隊というのは、果たして実在したのだろうか。


 翌日観た『特攻大作戦』は、前日に『ダンディー少佐』を観た流れで今度は、ライズマン少佐(リー・マーヴィン)を観たものだ。子供の時分にテレビ視聴して以来の再見だが、やはり抜群に面白かった。オープニングの絞死刑にしろ、最後のナチスのガス室処刑を思わせる大量殺戮にしろ、首尾の味の悪さが戦争という非道の愚劣を印象付けて、決して安易なカタルシスを与えないにも関わらず、どこか痛快だったように思う。部下を見棄てて自分だけ医薬品を持って逃走した卑怯者の上官を撃ち殺して将校歴三日で終わったというウラディスロー(チャールズ・ブロンソン)が最後に言った将軍殺しが癖になりそうだが効いてくる筋立てになっていたからだろう。

 序盤で、ライズマン少佐の不遜な態度に憤ったウォーデン少将(アーネスト・ボーグナイン)が君を満足させるために戦ってるのではないし、君の便宜のために軍があるのでもない。と言っていたが、下からすれば、同じセリフを突きつけたいような上官が腐るほどいたに違いない軍隊組織でありながら、上官命令は絶対だという軍紀が支配していることへの異議申し立てが全編を貫いていた気がする。

 そのうえでは、ライズマン少佐とブリード大佐(ロバート・ライアン)の対照が効いていて、デントン准将(ロバート・ウェッバー)の存在による補強が印象深く、演じた二人のロバートが地味ながら、なかなかのものだったように思う。

 ライズマンに協力依頼をしていたアンブラスター少佐(ジョージ・ケネディ)が、演習のなかでライズマン部隊の見せた、ブリード大佐率いる部隊を出し抜く手並みにほくそ笑んでいた様子に、共感を覚える観客は少なくなかろうと思った。
by ヤマ

'23.10. 2. BSプレミアム録画
'23.10. 3. BSプレミアム録画



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