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『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』(Borg McEnroe)['17] | |||||
監督 ヤヌス・メッツ
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近頃の伝記映画というかセミ・ドキュメンタリー映画における実物とのそっくりさん加減には、どれを観ても感心させられるが、本作のビヨン・ボルグ(スヴェリル・グドナソン)は別格のように感じた。記憶にあるやや猫背で伏し目がちな歩き方にしても、テニスのプレーにしても、本物の記録映像を使っているような気がしたくらいだった。ジョン・マッケンロー(シャイア・ラブーフ)のほうもかなりいい線を行っていたから、ちらりと出てきたジミー・コナーズへの違和感が半端なかったほどだ。 ボルグは僕より2歳上で、マッケンローは僕の1歳下という同時代を過ごし、二十代の時分は、僕もテニスに興じていただけあって、ボルグ5連覇のウィンブルドン大会の記憶は、若かりし頃の思い出とともに残っている。ライバルということでは、マッケンローよりもコナーズという感じだった覚えがあるのだが、本作に描かれた '80年と翌年のウィンブルドンが余りに鮮烈で、こうなってしまったのだろう。それにしても、スイートスポットの広いデカラケではないウッドのラケットでトップスピンを自在に操るなどという芸当は、他のプレイヤーには真似のできないことのように思う。 そのような同時代的な記憶もあっただけに、アイス・マンと呼ばれた彼が、十代半ばの時分はマッケンロー以上に悪態をつく問題児だったことは知らなかったから、すっかり驚くとともに、最高にメンタルの強さを誇っているように見えたボルグがあれほど神経質で脆そうな姿を晒していたとは思いがけなかった。それだけテニス、それも特にシングルス・プレイヤーは精神的にきついのだろう。ボルグが26歳で引退した時には些か驚いたものだが、本作を観ていると、確かにもう限界だったのだろうという気がした。 ボルグのプレースタイルがそのように変わり、マッケンローは変わらずに、それでいて共に頂点に至ったのだから、どちらのスタイルがということではないのだろうが、ボルグのほうが頂点で君臨していた期間は長くとも、無理をしていた分、選手寿命が短かったわけだ。マッケンロー以前に“悪童”と言われていたコナーズも選手寿命が長かったことを思うと、やはり無理は長続きしないということだろう。 それからすれば、ボルグ以来と言われる偉業を数々果たし、アラフォーの今なおトッププレイヤーとして現役を続けているロジャー・フェデラーの怪物ぶりには、想像を絶するものがあると改めて思った。 | |||||
by ヤマ '20. 9. 2. BSプレミアム録画 | |||||
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