『ラブレター』をめぐって
ケイケイの映画日記」:ケイケイさん
ヤマ(管理人)


2019年08月04日(日)06:28~2019年8月13日 00:12

(ケイケイさん)
 この作品は、未見です。拝読して、とっても観たくなりました。

ヤマ(管理人)
 ようこそ、ケイケイさん、
 是非是非ご覧ください。そして、都志春と有子について忌憚のないところをお聞かせください。加えて、村井元夫妻(仲谷昇&加賀まりこ)についても是非お聞かせ願いたく思います。
 僕の予想では、ケイケイさんの同情を買うことができるのは、仲谷昇だけのような気がするので、四人についてどう御覧になるのか、とっても楽しみです。関根恵子は、ホントにもう眼福ですよ~って、女性に言っても仕方がないか(笑)。

(ケイケイさん)
 アマゾンプライムタイムで見ましたよ~。

ヤマ(管理人)
 早速に、ありがとねー。そーか、今ならアマゾンで何でも簡単に観られるんだなぁ。くわばらくわばら(笑)。

(ケイケイさん)
 何せお坊さんも配達してくれるんだもん(笑)。金曜日は『よこがお』を観るつもりだったんですが、もう暑くてばてばてで、それで思いつきました。
 さすがケイケイさんの同情を買うことができるのは、仲谷昇だけのような気がするは、御明察(^^)。ブランコに乗って無聊を慰めたり、あんな若い美人と添い寝するのに、手を出さすに先に寝ちゃったり、いい人じゃないですか(笑)。私なら許してあげるけどな。そして死ぬまで夫婦のイニシアチブは、私が取ります。優柔不断だと自分でも言ってたから、ちょうどいいですよね?(笑)。

ヤマ(管理人)
 やっぱ予想どおり「ケイケイさんの同情を買うことができるのは、仲谷昇だけ」でしたね。まぁ、僕が[A中]としたのも、拙日誌で“ほとんど女神のような圧倒的な存在感”だと強調している“二十六歳当時の彼女の表情や裸身の余りの美しさ”ゆえ(笑)。加えて、三十八年前は、おそらく今回のケイケイさん同様に随分と苛立った都志にいちゃんの見え方が、今回再見して観るとけっこう違って見えてきたということがあってのことだからね。


-------うさぎうさぎ、は何ゆえのものだったのか-------

(ケイケイさん)
 ヤマさんが[A中]だと仰るので期待したけど、すっかり騙されちゃった(笑)。時代を超えた男女間の機微を感じず、ずっと古臭い趣のまま、ラストまで行っちゃいました。
 うさぎうさぎと出て来る度、イライラしてもぉ~(笑)。小っ恥ずかしいったら、ありゃしない。私は、中村嘉葎雄は好きなんですが、その私にして、若い関根恵子を虜にした魅力が感じられません。俺が女にした、みたいな台詞でしたが、それ程セックスが上手いと思わせるシーンもなかったし(笑)。「お前は俺のものだ」とか、私も30年前に聞いたら、好きな男に言われるんですから、うっとりしたかもですが、今なら笑わせないでよの台詞です。それに有子が幾らあの時代にせよ、あまりに受動的なことに、またイライラ。

ヤマ(管理人)
 今の時代に失われてしまったものを愛でる気分と、時代を超えた普遍的なものを求める気分とは、相反しがちなものだから、ずっと古臭い趣のまま、ラストまで行っちゃいましたというのも分らぬではない(笑)。僕でさえ有子をウサギと呼んで愛玩していたいい気さ加減というか、ろくでもなさと記しているものにうさぎうさぎと出て来る度、イライラしてもぉ〜(笑)というのは、とてもよく判る気がして笑ってしまった。

(ケイケイさん)
 ありがとうございます(^^)。私もこの年になり、若い頃とは男女間についての思考にだいぶ変化があり、この作品も公開時なら、有子に気持ちが添えたかもしれません。

ヤマ(管理人)
 あの映画に表れた限りの小田都志春を観て、若く美しい女性を虜にした魅力がまるで伝わってこないというのも『カミーユ・クローデル』['88]でのロダン同様で、名高い詩人だの彫刻家という設定で了解するしかないわけだけど、逆のパターンも含めて現に男女間にはそういうことが起こるというのもまた、世の中にありがちなことだという気はするなぁ。

(ケイケイさん)
 それはありますね。ましてや彼女は、寄る辺ない身の上だったみたいだし、父性的な愛情も感じていたと思います。

ヤマ(管理人)
 あの作品は、ロマポ枠で制作されたこともあって専らターゲットは男性客だから、もしかすると、作り手には確信的に都志春のろくでもなさを強調することで、観る側の胸を焦がさせる思惑があったのではないかという気もするところ(笑)。

(ケイケイさん)
 これなんですが、今回観て、もっと扇情的なシーンがあるのかと思っていたら、まるでないの(笑)。かと言って、女性が好むような官能的な場面があるわけでもなし。正直これでロマポ???と感じました。これこそ、時代のせいですか?

ヤマ(管理人)
 時代で言えば、いまのほうが遥かに映画でのベッドシーンの演出は抑制的になっていると思うけど、本作がロマポ十周年記念作品として撮られた異色作で、ロマポらしくないのは、間違いないね。でも、おかげで当時、破格の女性集客を果たしたらしいけど。

(ケイケイさん)
 じゃーまー、性に奥手の女性に受けたんですよ(笑)。
 『エマニエル夫人』ならわかりますよ。監督がカメラマンだったから、すごくビジュアルが美しかったし。フィフティ・シェイズ・オブ・グレイも大したことなくて、あのマドンナ様が「これはセックスをあまりしたことのない人向けの作品ね」と仰って、まぁ私と同じことを思ったのねと、感激しましたよ(笑)。

ヤマ(管理人)
 『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、そりゃもう児戯に等しく笑止千万だったなぁ。ハーレクイン風SMロマンスの線を狙ってたんだろうけど…。
 それはそうと、有子が幾らあの時代にせよ、あまりに受動的なことに、またイライラというのもよく分かる(笑)。“明らかに愛人気質と呼べるようなもの”と拙日誌に僕も書いてる部分のことだよね。

(ケイケイさん)
 そうそう。
 薄いネグリジェ一枚で、毎日都志春を待っていたり、体が弱っていても、セックスだけは出来ちゃうとか(笑)。あれじゃ加賀まり子に、男欲しくてこれ見よがしと言われても仕方ないなぁ。先の事も、これっぽちも考えていないし。これ、水商売の女性が愛人なら、もう少し賢かったのじゃないかと思います。

ヤマ(管理人)
 その点、道頓堀川のまち子は、しゃきっとしてたよ、確かに(笑)。賢いかどうかはともかく。

(ケイケイさん)
 いやいや、男心を掴む手練手管は心得ているはず。床上手という意味じゃなく、あくまで心。

ヤマ(管理人)
 松坂慶子演じるまち子はね、十九歳の画学生邦彦(真田広之)と、彼が学生でいる間だけ同棲したいとの想いで、十年囲われてた“旦那”にケジメを付けに行って頬を叩かれてたね。
 って、ご覧になってる?『道頓堀川』

(ケイケイさん)
 映画は未見ですが、原作は読んでいます。映画化の後に読みましたが、当時松坂慶子の役は、大原麗子だなぁと思いました。

ヤマ(管理人)
 あぁ、それ、書いてくれてたね。

(ケイケイさん)
 映画日誌にお書きの有子が不眠に悩まされるほどの寂寥感を(都志春が)与えていたのは、奔放な身勝手さではなく、実のところ、彼女を持て余している部分があっての逃避のような気もした。というのは、そうかもですね。元々がメンヘラ気質の女性みたいですから。

ヤマ(管理人)
 僕の大きな関心は、拙日誌に元々備わっていたから愛人になったのか、愛人生活を重ねるなかで培われたものなのか、一概に言えない気がしてと綴った部分をケイケイさんがどう御覧になるか、だったのだけど、その点では明快に元々がメンヘラ気質の女性みたいと回答を貰えて満足。やっぱ、そーか、と(笑)。

(ケイケイさん)
 一途に待たれるより、それこそ浮気の一つも出来る女のほうが、扱いやすかったかも。

ヤマ(管理人)
 この部分、拙日誌でカップリングした『道頓堀川』と『ラブレター』に相通じる肝のところで、どっちにしたところで、“扱いやすい女”なんてそうそういるものではないような気が…(笑)。
 基本、扱いにくいとしたものよ(たは)。持て余すかどうかはともかく。

(ケイケイさん)
 で、続いて映画日誌のおまけに『道頓堀川』の松坂慶子と同じく、昭和の時代の女性の語り口にある、ついぞ甘ったれていない甘さとでもいうのかですが、言動は甘ったれですよ(笑)。顔立ちのせいで、そう感じるんじゃないですか?
 確かに清潔感もあって新鮮な魅力はありますね、関根恵子。お書きのようにスタイルもよく、品があるので、濡れ場が続いても可愛らしく見えちゃう。個人的には、高橋恵子になってからの、芯の強さを醸し出してからのほうが好きですが。演技はところどころ良い時もありますが、下手です(きっぱり)。

ヤマ(管理人)
 言わんとするところ、よく判るけど、これは演出側の巧さでもあって、彼女の“演じてる感”を上手く使って“ウサギを演じる有子”という造形をしてたから、僕には気にならずにむしろ効用のほうがあったような気がする(笑)。惚れた弱みかもしれないけど(あは)。

(ケイケイさん)
 これはそうですな。愛するが故の深読みでしょうか?(笑)

ヤマ(管理人)
 常時、都志春を“都志にいちゃん”と呼び、自身を“ウサギ”と呼び合う二人の関係に素のものとしてのケ(褻)はなく、互いに“都志にいちゃん”と“ウサギ”を演じるハレ(霽れ)の関係だから、深読みということではないけれど、それが“演じてる感”を巧みに表現していたとまで言えるか、となると、演技・演出ではなくて「期せずして」みたいなことかもとは思ってる(笑)。


-------鍵にはならないセックス、されど-------

(ケイケイさん)
 精神科に勤めていた時、同じ年のナースさんがいて、まだ50前の時です。目指す憧れの年上女性は?と、話していたんです。私は、風吹ジュンか、浅田美代子。

ヤマ(管理人)
 風吹ジュンはともかく、浅田美代子!?(笑)
 じゃあ、とても残念な仕上がりの『エリカ38』は、殊更に残念でしたね。

(ケイケイさん)
 中高年女性向けの雑誌に出てくる彼女は、本当に素敵なんですよ。若作りしないのに若々しくてセンスが良くて、自然体で可愛くて。美人じゃないところもポイント高いし(笑)。だから『エリカ38』は、とっても期待していましたから、残念を通り越して腹が立ちました。
 で、同じ年のナースさんが目指す憧れの年上女性は、高橋恵子だったんです。私は些かびっくりしちゃって。

ヤマ(管理人)
 へぇ~、そうなんだ!(驚)

(ケイケイさん)
 高橋恵子は綺麗な人だとは思っていましたが、好きでも嫌いでもなく、現在・過去も憧れたことがなかったので、すごく意外でね。演じ手が誰かで、演技が云々いう前に、こちらに語りかける熱気は違いますよね。

ヤマ(管理人)
 僕は、あまりそういうのに左右されないほうなんだけど、時に例外もある(笑)。

(ケイケイさん)
 また、小田と出会う前の溌剌とした ダンスを見せていた彼女については、何回も出てきたけど、これも学芸会+α。愛人になるまでのシーンは構いませんか、それ以降ダンスシーンが出て来るたび、白けました。

ヤマ(管理人)
 「何回も出てきたけど」と書いておいでるように強調されてたよね。これが、愛人以前と愛人以後の様変わりを示しているように感じて、僕は元々備わっていたから愛人になったのか、愛人生活を重ねるなかで培われたものなのか、一概に言えない気がしてとなったわけだけど、明快に元々がメンヘラ気質の女性みたいと受け取る立場からは、シラケるかもしれないね。

(ケイケイさん)
 あと金子光晴といい、全く男たちには困ったものだとつくづく思う。とのことですが、もう今はこの手の男性のファンタジーに付き合ってくれる女性がいないから、心配ないです(笑)。
 村井元夫妻の二人は、なかなか現実味がありましたよ。加賀まり子も嫌らしい女でしたけど、気持ちは理解できます。夫は、肌を合わせたら仲直り出来ると予想していましたけど、これも違うんだなぁ。どうして男性はそう思う人が多いのかしら?

ヤマ(管理人)
 そこまで言ってなくて、これ、可能性の一つとしてというか、もし仲直りできることがあるとすればってな一縷の望み的な表白ではなかったかなぁ。それで仲直りが果たせるというようには言ってなかった気がする。

(ケイケイさん)
 夫婦ですから、一瞬は歩み寄るでしょうが、根本的な部分が解決していなんだから、それでチャラにはなりません。

ヤマ(管理人)
 お!核心部分が出て来ましたよ(喜)。

(ケイケイさん)
 ていうか、男性はセックスに持ち込まれたら、チャラになっちゃうの?

ヤマ(管理人)
 これは、たぶん男女ともにそうなんじゃないかと思うけど、セックスによってチャラにするんではなくて、もうチャラにしていることをセックスによって互いに確認しているのであって、肌を合わせることで自分及び相手がチャラに出来ているいないを測ってるんじゃないの?
 村井元夫妻の場合は、やっぱダメだったとなるわけだけど、別の場合には、何とかやり直しができそうとなる場合もあるだろうし。でもそれって、セックスで仲直りしているんじゃなくて、仲直りできるかどうかをセックスで確かめているのだと思うよ。

(ケイケイさん)
 で、ダメだったんですね(笑)。

ヤマ(管理人)
 うん、村井夫妻の場合はね。

(ケイケイさん)
 でも飄々としていたでしょう? あの夫。あれは腹が立ちますよ。

ヤマ(管理人)
 それが“これでもう大丈夫的な態度”の表われなの?(ふ~む)

(ケイケイさん)
 俺は別れたくないと、懇願しまくれば、妻の気持ちも変化があったと思いますね。

ヤマ(管理人)
 パッションの表現スタイルが、やっぱ合わないんだね、彼らは。夜毎公園に通ってきてブランコを鳴らして知らせはしても、言葉でそういうことを表現する熱情を彼は持ち合わせてないよね。

(ケイケイさん)
 うん。女性は直接言葉にして欲しいと思いますよ。自分の気持ちや行動に共感して欲しいんですよ、女性は。
 ブランコが子供なら同じ様に切なくなりますが、夫なら何の効果もありません(笑)。

ヤマ(管理人)
 で、村井夫妻における未解決の“根本的な部分”とは何だったと捉えてるの?

(ケイケイさん)
 所謂性格の不一致ですね。便宜上じゃなく、本当に。あの奥さん、だいぶ気が強そうだったでしょう?
 何回も夫にこうして欲しい、直して欲しいと訴えていたと思います。特に優柔不断なところとか。

ヤマ(管理人)
 気の強い女性における、男の優柔不断に“苛立つタイプ”と“愛でるタイプ”の差は、どこから生じてくるんだろうな(笑)。

(ケイケイさん)
 これは愛でるのではなく、悟りの境地を開かねば(笑)。それでも時々少しずつ溜まって、爆発しますよ。つい先だっても、旅行前に爆発して夫を躾けたばっかりです(笑)。

ヤマ(管理人)
 あれ? 前に「優柔不断な男が好み」みたいなこと、言ってなかったっけ?
 けっこう意外な言葉で、そういう女性もいるんだと印象深かった覚えがあるけど。

(ケイケイさん)
 今でも優柔不断で穏やかな人は好きですよ。
 うちは優柔不断で決められないから、私が決めると後で文句を言うんです(怒)。あっちのほうが良かったと昔は言い切りましたが、今じゃ私が怖いからオブラートに包んで言ってます(笑)。それがもう、本当に血管が切れそうなくらい、気分が悪い。自分で決めても、後でぐだぐだ言います。それを聞くのも、ヒジョーに気分が悪い。
 この前、「ちょっとそこ座って!」と、だいぶ説教しましたから、暫くは大丈夫だと思います(笑)。
 村井夫妻の場合は、どんどん溝が深くなっているのに、夫は気付いていなかったと思います。浮気は引き金だけだと思うな。

ヤマ(管理人)
 同感、同感。でもって夫の側は、彼の台詞にもあったように、何故いつも怒りを溜めている女なのかが、分からないでいるわけだよね。まさに“不一致”ということなんだろうな。

(ケイケイさん)
 これね、離婚「された」夫、あるあるなんです。妻は何回も一生懸命訴えているのに、夫には取るに足らないことなんです。何で何回も訴えるかというと、夫婦として楽しく暮らしていきたいから。夫って、夫婦であるだけで良くて、「楽しく」がすっぽり抜けていて、じゃあ私は何なのか?と妻は激怒する。ほら、31年目の夫婦げんか

ヤマ(管理人)
 なるほどね。

(ケイケイさん)
 冒頭で、アパートの若い男子を加賀まり子が拒絶していたでしょう?
 あれは都志春と有子を見て、夫を思い出したんだなと、仲谷昇登場で理解出来ました。

ヤマ(管理人)
 僕はそれこそ、一度や二度寝たくらいで調子づくな的な反応かと(笑)。

(ケイケイさん)
 それよりも彼女、夫とセックスしたかったんですよ。

ヤマ(管理人)
 31年目の夫婦げんかのケイ(メリル・ストリープ)みたいにってことね。

(ケイケイさん)
 そうそう。夫婦間では、あの夫婦もあまりなかったんじゃないかと。

ヤマ(管理人)
 開始早々のケイの台詞からして、それは間違いないかと。

(ケイケイさん)
 でも村井夫妻は、セックスしてみても、満たされなかったんでしょうね。

ヤマ(管理人)
 アーノルドとケイのようには、いかないわけだ。

(ケイケイさん)
 描かれていなかったけど、もし、これでもう大丈夫的な態度を夫が取ったなら、失望もしますし、傷つきますよ。

ヤマ(管理人)
 あの元夫は、そういうタイプの男じゃあないと思うけどなぁ。

(ケイケイさん)
 う〜ん、態度には出なくても、安堵の心が透けて見えたとか。

ヤマ(管理人)
 っていうか、有子の妄想じゃないけど、村井元妻というのが、どうしたところで、ついそのように見えてしまう“気の毒な女性”だったような気がするんだけどね。

(ケイケイさん)
 グレタ・ガーヴィク主演のマギーズ・プランでも、うだつの上がらぬ夫のイーサン・ホークが、妻の怒りを静めようと、楽しく接待&濃厚なセックスに持ち込んで、妻も喜び一安心するんですが、翌朝妻は問題を蒸し返すんです(笑)。
 アメリカの男も同じ思考なのかと、その時すごく笑ったのを覚えています。セックスで妻が喜んで不問にするだろうなんて、けしからん思考ですよ。

ヤマ(管理人)
 『マギーズ・プラン』は未見作だな。それはともかく、セックスで妻が喜んで不問にするだろうなんて、けしからん思考を持っていてそうしているのか、他に手立てがなく窮してそうしているのか、一概に言えない気がしているけれども、仮に前者でそんな俺様感で臨んでこられたら、概ね妻は、喜んだりできなくなるとしたもんじゃないのかなぁ。

(ケイケイさん)
 『マギーズ・プラン』の夫は、他に手立てがなく窮してそうしてました(笑)。妻が喜んでくれて、ホッとしたのも束の間、翌朝妻が蒸し返すんです。すごく笑いました。
 妻の気持ちはもちろんわかるし、夫に対しても腹が立つより気の毒に感じて、上手い描き方でしたよ。
 だから、最後で有子に優しくなったんじゃないかなぁ。女同士ですもん。

ヤマ(管理人)
 有子に葬儀の件を教えてあげたこと? 口ではそう言ってたけど、優しさから教えたとは限らない気も。むしろ、これまでの事々からして、悪意の一つと観るほうが相当では?

(ケイケイさん)
 ヤマさん、意地悪だなぁ(笑)。

ヤマ(管理人)
 あの執拗さとか頑なさって尋常じゃなかった気がするよ。

(ケイケイさん)
 わたしゃもっと凄い人、いっぱい知ってますよ(笑)。身近にいないなら、ヤマさんは女性運がいいんですよ。
 今までの意地悪は、全部隣近所の出来事でしょう? 精神病院って普通僻地にあるから、都志春が死んだのに、そこまでしないわ。病院送りになって以降は、有子に同情したと思いますよ。

ヤマ(管理人)
 そーか。僕は、止めを刺しに行ったような気もしたんよね。
 そしたら、想外に有子はタフさを見せて乗り込んで行ったんだけど。

(ケイケイさん)
 あれは褒めてあげたいなぁ。行くと行かないでは、これからの有子の人生を左右しますから。
 行かないと、退院出来ないです。


-------都志春と村井元妻に関係はあったのか-------

ヤマ(管理人)
 このへんに関わるもう一つの重要な僕の関心事があって、村井の元妻(加賀まりこ)が都志春(中村嘉葎雄)と交わっているのを有子(関根恵子)が目撃する場面があったでしょ。有子が「自分の頭がだんだんおかしくなってきていた」と独白していたなかでの出来事だったわけで、あれを有子の妄想とみるか、都志春の放埓とみるか、村井元妻の挑発とみるか、ケイケイさんのご見解は?

(ケイケイさん)
 妄想です。

ヤマ(管理人)
 これまた、明快!(拍手)

(ケイケイさん)
 次のシーンで、ウィスキー片手に談笑していた場面がありますから、それがそう見えたのだと思いました。村井の妻の嫌がらせには間違いないですが。

ヤマ(管理人)
 なるほど(納得)。僕も有子の妄想派(喜)。加えて、「村井の妻の嫌がらせ」!(拍手)
 どうして彼女は、そこまで執拗なのだろう? ケイケイさんの御見解は?

(ケイケイさん)
 有子が羨ましいんですよ。

ヤマ(管理人)
 うん、そうだね。
 じゃれ合うように睦ながら道を歩いている二人と擦れ違う冒頭場面での、加賀まりこの見せていた険のある顔つき、相当なものだった気がする(笑)。

(ケイケイさん)
 そして都志春は、有子の傍に居る時は、痒い所に手が届くくらい、彼女を慈しむでしょう?
 妻って夫の世話するばかりで、私も慈しまれた記憶なんかないです。慈しむのは、私ばっかりですよ(怒)。これ、夫も浮気相手にしているのかと、思うんじゃないですかね?

ヤマ(管理人)
 そういう繋がり方をするわけね(笑)。有子が言うところの“底無しの残酷”のほうは見ずに。

(ケイケイさん)
 だから村井の元妻は、有子に「私はあなたのご主人の愛人じゃありません!」と言われるんです。でも、村井の妻も、夫の愛情を信頼できずに絶望の淵にいるんですから、まぁお相子ですよ。

ヤマ(管理人)
 必ずしも八つ当たり的なものに対する抗議とも言えない、図らずも有子の側が招いた部分もあっての出来事と観てるわけですね(笑)。確かに、薄衣の件も咎めてたよね。愛人なら愛人らしく、もっと密やかにしてろってな想いがあったんやろね。

(ケイケイさん)
 そうそう、罪の意識で、隠れてコソコソしていたらいいんですよ。
 堂々としてたでしょう?有子。見下げる存在ならいいのに、対等に思えたから脅威だったんですね。
 ここは私は村井の妻の気持ちはわかりますね。

ヤマ(管理人)
 常に腹立ちを溜めているらしい彼女にしてみれば、夫に浮気された私への当てつけかってな、それこそ御門違いの怒りやね(苦笑)。

(ケイケイさん)
 ところで、私もお聞きしたいんですが、何度も都志春と有子の逢瀬は途切れますが、都志春の妻が悪いのではなく、都志春自身の治療のため、入退院していたのじゃないかと思いましたが、如何ですか?

ヤマ(管理人)
 これは想起してなかったなぁ。でも、成程と思った。

(ケイケイさん)
 唐突に50代前半の男性が亡くなるなんて、不思議でしょう?

ヤマ(管理人)
 まぁでも、それは無くもない話であって、それもあってか本作では、オープニングを都志春と同い年の友人の思わぬ逝去で始めてた気もする。ある種の儚さを見せていたようにも思うなぁ。

(ケイケイさん)
 うんうん、儚い男と女のお話でした。

ヤマ(管理人)
 僕的には、都志春と有子の逢瀬が途切れがちで間遠かったということが現実感を欠いた感じだったからね。もっと入り浸り、有子に溺れて然るべきところだろうと(笑)。ま、元ネタがある以上、そうはならないとすれば、そここそが有子と大川内令子との大きな違いでもあるのだろうと思ってた(笑)。でも、都志春自身の体調不良によるものと観るほうが遥かにいいね。

(ケイケイさん)
 それと、途中で入籍したのは、配偶者としてじゃなく、養子縁組だったですよね? 私は遺産を残そうとしたのかと、後で思ったんです。まぁ妻に抜かれちゃいますが。

ヤマ(管理人)
 いいえ、妻だったよ。有子、それに喜んで、村井元妻にも告げてよけいに挑発する形になってたもん。
 モデルとなった金子光晴も、五十三歳で大河内令子と恋愛関係になった後、五歳ほど年下の妻三千代との間で、離婚と入籍を繰り返したらしいよ。それもなかなか凄絶なブランコやね!(笑)

(ケイケイさん)
 最後に妻が籍を抜いたと描いていたんで、養子縁組と勘違いしました。
 昔知り合いの人で、ご主人が愛人と駆け落ち、そして愛人が勝手に離婚届を出して、婚姻届も出された人がいるんです。裁判起して、無効にしたと言ってました。ここでは都志春の奥さん、籍を抜くのに同意したってことですか? そして夫の死に際にまた入れ替える。こりゃ愛人は、有子が初めてじゃないね(笑)。
by ヤマ

2019年08月04日(日)06:28~2019年8月13日 00:12



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