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『アウシュビッツ 死者たちの告白』前後編 https://www.nhk.jp/p/bs1sp/ts/YMKV7LM62W/episode/te/125N343VYL/ | |||||
BS1スペシャル
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七年前に観た映画『サウルの息子』で採り上げられていたゾンダーコマンドに焦点を当てた秀作ドキュメンタリーだった。ナチスによるユダヤ人大量殺戮に協力させられたユダヤ人という立場に置かれた人々の当時のメモが発掘されながら、文字が判読できない程に消えていたものが、最新デジタル技術によって判読できたとのこと。 ドイツ軍の形勢悪化を受けて彼らが組織的なクーデターを計画していたという話は何かで見聞したことがあるし、番組によって教えられた新たなものが特にあったわけではないが、やはり肉声の持つ力は大きい。 マルセル・ナジャリが肉親を収容所で殺されながらも、自身がゾンダーコマンドを受容して生きる理由として“復讐心”を刻みつつ、戦後、沈黙せざるを得なかった歴史を娘の証言と共に炙り出していて感慨深く、ザルマン・レヴェンタルの遺した「いま生き残っている(自分のようなも)のは、二流の人間ばかりで、理由を取り繕ってはいるが、真実は何が何でも生きたいのだ」と記しているのが悲痛だ。ある者は「これ以上のものはない恥」と記していた。 そのあたりの葛藤こそが、ナチス側の周到な分断統治にもかかわらず、組織的なクーデターが計画された背景なのだろう。何とかしてナチスの空前絶後の非道を世に知らしめようとしていた。実際それは、イギリスに渡ったポーランド亡命政府の諜報員を通じて英米政府に伝えられたようだが、ユダヤ人の大量解放と受け入れが、既に亡命ユダヤ人の入国により就業機会が奪われているとの国内批判を更に激化させることを恐れた両国政府によって黙殺されたことを示す外交文書が英国の公文書館に残っていた。 ナチスによるユダヤ人迫害に対して「人間が違いを受け容れられない生き物であることを利用」したものだと述べていた歴史家の言葉が印象深く、番組の最後を締めていた2020年の式典におけるアウシュビッツ博物館長の“二度と起こらない過去の出来事”ではないとの言葉に重みがあった。 | |||||
by ヤマ '23. 6.25. NHK BS1 | |||||
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