『ロボット 完全版』(The Robot)['10]
監督 シャンカール


 今やIT大国で知られるインドに相応しい物語世界がCG満載の画面で展開される、実にインドらしい大らかなスケール感に満ちた作品だった。豪勢な居宅の風情がかつて馴染みのインド風から一変していたのが印象深く、国力の勢いが感じられるような気がした。それと同時に、世界に冠たる格差社会に何ら変わりがないことの有り体が透けて見えていたように思う。そのうえで、長らく欧米中心の世界が続いてきたが、今後は結局のところ、世界の牽引力が四大文明の発祥地に移行していくのではないかという予感を抱かせる映画だったような気がする。

 とりわけ、最後の数十分間に繰り広げられたロボット軍団のフォーメイションプレーのシュールさに脱帽。たわいない荒唐無稽を何とも派手に繰り広げ、ここまでやるのかと唖然とさせておいてから、現時点の人類のレベルにはまだ見合っていない破格に威力ある機械は使うのは危険で、解体すべきという渋いコメントの判決が下される。本作の翌年に起こった福島原発事故を経た今観るなかで、このコメントに原発再稼働の問題を想起せずにはいられない。なかなか侮れない作品だ。

 しかも、例によってマサラムービーのインド美人は、ボリューム感があって、踊りも蠱惑的で、実に素晴らしい。ヒロインのサナを演じたアイシュワリヤー・ラーイは、'94年のミス・ワールドなのだが、それから十六年を経た本作のほうが『ミモラ-心のままに-』['99]のとき以上に魅力的だったような気がする。

 それにしても、なぜ三年前の公開作品を今頃になってお正月番組に持ってきたのだろう、あたご劇場は。本作のチラシに記された惹句ではないが、「ワケわからんが面白い」劇場だ。

by ヤマ

'16. 1. 3. あたご劇場



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