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『テルマエ・ロマエ』 『テルマエ・ロマエⅡ』 | |||||
監督 武内英樹 | |||||
2(続編)ものをあまり好まない僕にしては珍しくも早々と観に行った。その理由は、1日興行の割引効果にあるというのが正直なところだが、前作を観たときよりも随分と面白く観られたような気がする。二番煎じなのだから、当然ながらインパクトの部分は減退するのだが、思いがけなく随所で共感を覚えたからだろう。 前作を観たときは、悪くはないんだろうなと思いながらも、あまり乗れなかった。オペラと風呂の対照などの異文化遭遇の描き方には確かにインパクトがあったのだが、そういう部分のみが際立っていて、本作のようにニンマリできる部分が少々乏しかったような気がする。とはいえ、自分自身がちょうど同時代で過ごした銭湯文化が描かれていて、思い出し笑いをした覚えもある。 ルシウス(阿部寛)が最初にタイムスリップした銭湯は、確か1972年だったはずだが、加山雄三の若大将の映画ポスターが貼られていて、「それなら60年代だよな」などと思った。70年代後半に大学生として上京し独り暮らしをしていた僕は、当然ながら今の学生と違って内風呂住まいではなく銭湯だったから、あの風呂上がりの甘い牛乳の味には、とても懐かしいものがある。僕の好みは、いちご牛乳であってフルーツ牛乳ではなかったけれど、映画ではその後、直ちに2012年へのタイムスリップになっていたから、余程あのフルーツ牛乳ネタをやりたかったのだろうと思った。 そんな第1作のルシウスは、現代日本のテルマエ文化によって自身の成功と成長を手に入れ、山越真実(上戸彩)は、古代ローマを知ることで成功と成長を手に入れるわけで、ともに「出逢えてよかった、ありがとう」という結末になっていたように思う。 第2作は、そういう個人的な成功と成長よりも、世界に向けて誇るに足る日本の入浴文化というものを意識して描いていたような気がする。しかし、昨今のやたら挑発的で好戦的な愛国主義などと違って、実に納得感のある日本文化への自負と誇らしさがあって、大いに感心した。体制に与しないカウンターカルチャーの流れを汲みつつも、ずっと軽やかで柔らかい“庶民性”が気の利いた語り口で宿っていたような気がする。 なかでも“コロッセオでのグラデュエーターたちの死闘”と同じく“円形闘技場とも言うべき土俵での相撲”を対照させて、ルシウスに感嘆させている場面や風紀紊乱に堕しない混浴文化を讃えている場面が、大いに気に入った。 日本文化たる“和”の本質を“癒しと和み”として捉えており、格闘技興行においてさえ、殺伐とは相反した節度と儀礼を尽くすスタイルを取っていることにルシウスが驚き、ローマに持ち帰るくだりを観ながら、昨今の日本の愛国主義者たちの挑発的で好戦的なスタイルというのは、全く日本的ではないことに改めて気付かされるとともに、翻して今の日本が随分と西洋化され、下品になってきていることを照射している作品のようにも感じた。 そういうことを言うと、おそらく作り手は、仮に実際そうだったとしても、そんな大仰なことは考えてないと慎ましく言うのだろう。そういう日本的韜晦が、ある種、ディーセントな娯楽性を醸し出していて、好もしい味わいの作品になっていたように思う。 推薦テクスト1、推薦テクスト2:「お楽しみは映画 から」より http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-21c1.html http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-8c22.html | |||||
by ヤマ '12. 5. 8. TOHOシネマズ6 '14. 5. 1. TOHOシネマズ7 | |||||
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