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『これがヒロシマだ 原爆の絵アメリカを行く』 https://www.nhk.jp/p/ts/DN23LL75QJ/episode/te/85LKZ7YQKN/ | |||||
NHK特集 | |||||
四十一年前に、当時において三十七年前となる原爆の被爆者であった四十九歳の松原美代子さんのアメリカ横断講演旅行を追ってNHK広島が制作した番組だった。 その八年前にNHKの呼び掛けで始めたという被災者による原爆の絵のなかから50枚を持参して、レーガン政権下の1982年、ロサンゼルスから始めてニューヨークの国連本部での反核スピーチを行う、23都市五十日間の旅のなかでも、数年後に迫った核ミサイル基地計画に揺れるモンタナ州での記録が、一際印象深かった。言葉だけでなく、見える絵の持っている力は凄いと改めて思った。 十二歳のときに自身が負ったケロイドによって、希望していた“銀行の女子行員”には採用されなかったらしい松原さんは、この時点では、幾度もの手術によって遠目にはケロイドの跡が判らなかったが、完全には消えていないということだった。その被爆当事者の彼女が口にする「過ちは繰り返したくないの」の主語は、省略されていても「人類」であるのは明白だと感じられた。 彼女が微かに震える声で静かに発する「ノーモアヒロシマ、ノーモアナガサキ」に心揺さぶられない人はいないと思いたいところだが、被爆者の声に宿る切実さに対して、それゆえにこそ苦々しさや鬱陶しさを覚える人が、日本においてさえ決して少なからぬ数いることが実に嘆かわしく、悲しい。その一方で、彼女の大陸横断活動をコーディネイトし支えていた、広島名誉市民の反核活動家の米人女性バーバラ(六十七歳)のような人々もいるわけだ。グローバルな課題について、国名で以てのみ語ることのナンセンスを改めて感じた。反日だの反米だのといった物差ししか持てない人々の実に狭い料簡の浅薄さが残念でならない。 すると、かつての職場の同僚が「「安らかにお眠りください 過ちは繰り返しませんから」と書かれた石碑に対して「世界から核兵器が消えるまで目を見開いて睨んでいてください」と書くべきだといった意見を住井すゑさんが書かれていたのを思い出します。 「過ちは繰り返しませんから」 過ちとは?繰り返さないのは誰が?何を? ついに日本の総理大臣が戦術的核保有の有効性を語るように成り果ててしまった現在、存命の被爆者ご本人が少なくなる昨今だからこそ、かつての放送を繰り返し放送する事が重要になって来ましたね。「反戦」「平和」ですら胡散臭く捉えられる、本当に嘆かわしい時代になって来て安倍政権下でついに天皇が踏み込んだ表現で過去の戦争を過ちと言い切るようになったのに、同じことを一般人が言うと左翼扱いされる謎の国。長くなりましたが、NHKは過去のアーカイブから繰り返して何度でも放送し続けて欲しい。戦争のできる国にどんどん近づく日本に諦めつつある人を引き戻して欲しいと切実に思う今日この頃です」とのコメントを寄せてくれた。 碑文の主語問題が、国家主義者からも民主主義者からも、いろいろ言われてることは僕も承知している。元々は、戦争放棄に伴う、シンプルな非戦の誓いだったのだろうが、そうはできなくなっている状況は、随分前からのように思う。元同僚が寄せてくれた「存命の被爆者ご本人が少なくなる昨今だからこそ、かつての放送を繰り返し放送する事が重要」「NHKは過去のアーカイブから繰り返して何度でも放送し続けて欲しい」というのは全くその通りで、映像も音声も記録されているドキュメンタリーの最も価値ある部分だという気がする。 四十一年前の番組に何ら新たな部分を加えてるようにはなかったから、リンクしたNHKの頁に「初回放送日: 2023年7月31日」となっているのは、NHK特集として全国ネットで放送したのは、ということなのだろう。時まさに「ついに日本の総理大臣が戦術的核保有の有効性を語るように成り果ててしまった現在」だけに、ローカル番組を発掘したスタッフは立派だと思う。 | |||||
by ヤマ '23. 8.28. BSプレミアム録画 | |||||
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