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『エバー・アフター』(Ever After) | |||||
監督 アンディ・テナント | |||||
久しぶりに妻と連れ立って観に行った映画である。原題の『エバー・アフター』は、童話などでよく使われる結びの句で“その後ずっと”という意味だが、言わば例の“めでたし、めでたし”に相当するものだということを帰宅してから辞書で調べてみて知った。大人の視点からの童話の読み直しというのは、ここ数年の隠れたブームだという気がしているが、その点では、一昨年の秋に観た『スノーホワイト』(マイケル・コーン監督)よりも格段の出来栄えだった。 まずもって、「童話としての『白雪姫』は、実は本来こういうお話でした」というものよりも、「かの『シンデレラ物語』は、実はこういう実際の出来事がもとになっているのです」という設定のほうが、作り手の創造性が遥かに発揮しやすいし、観る側も魔法やおとぎ話ではない『シンデレラ物語』とはどういうものなのかとの興味をそそられやすい。 その効用がドリュー・バリモア演ずるシンデレラすなわちダニエルのキャラクター造形に窺える。読書を愛し、剣をよくし、知性と独立心に富み、進歩的な社会観とヒューマニズムを持った働き者の女性としての颯爽とした姿は、少なくとも16世紀における理想的な女性像としては語られることのなかったものだと思う。特に、ダニエルをおなじみの優しい働き者の辛抱強い娘とはせずに、いわゆる優しさを“思想としてのヒューマニズム”の獲得者に変え、社会性の観点を加えたことや二人が例の舞踏会以前にも互いの人格に触れる出会いを重ねているという設定が、ストーリー展開に現実感と説得力をもたらしていて、ヘンリー王子がダニエルに恋することが、単に物語の展開上の決まりごとに終わっていない。そして、ヘンリーとダニエルを超えた、若い男女の恋物語としての普遍性を獲得していて、嘘と誤解、思い込みと疑い、情熱と不安といった、恋につきもののスリリングで豊かな感情の動きが、童話の単純さとは異なる形で綴られる。それでいて童話や寓話の持っている象徴性や娯楽性を保っているので、気持ちよく観られる。 魔法使いをレオナルド・ダ・ヴィンチにしたのは確かにアイデアだ。彼の数々の発明や見事な筆捌きは、一般人から観れば、魔法以外の何物でもない。また、衣装や美術の充実、効果的な空撮などによるスケール感など、思っていた以上によくできた作品だった。 推薦テクスト:「eiga-fan Y's HOMEPAGE」より http://www.k2.dion.ne.jp/~yamasita/cinemaindex /ecinemaindex.html#anchor000206 | |||||
by ヤマ '99. 4.29. 松竹ピカデリー1 | |||||
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