『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(Once Upon A Time In America)
監督 セルジオ・レオーネ


 ストーリーとしての説得力には今ひとつ欠けるものの、画面の描き出す情感にはなかなかのものがある。展開にも奥行きがあり、不良少年からのし上がっていった二人の男の友情と生き様を描いただけなのに、スケールの大きさを感じさせる。基調としての哀感にノスタルジックな哀惜が籠もる少年期の回想シーンが秀逸である。この頃はまた、ヌードルス(スコット・ティラー)とマックス(ラスティ・ジェイコブズ)の間の友情と信頼が美しいほどに固い。しかし、青年期に現実のなかで闘いながらのし上がってきたマックス(ジェームズ・ウッズ)と刑務所に隔離されてて出所後に迎えを受けたヌードルス(ロバート・デ・ニーロ)との間には、少なからずギャップがある。

 それでも二人は変わらぬ友情にしがみつく。二人とも他に深く繋がり合える者がいないのである。過酷で孤独な世界に生きていればこそ、よけいに多少のギャップには目をつぶってでも、互いにしがみつくのだ。しかし、結局訪れるのは互いへの裏切りである。ヌードルスはマックスの生命のために彼を裏切り、マックスは自らの野心のためにヌードルスを裏切った。その時、二人はそれぞれに人生を終えてしまったと言える。マックスは社会的成功を得たものの、既にかつての活き活きしたものはなく、ヌードルスはまさしく総てを失って、残り火のようなくすぼった人生である。友情の輝きによってのみ生を生たらしめていた二人にとって、その友情の終わりはそのまま人生の終わりとなってしまった。

 ロバート・デ・ニーロが卓抜である。物騒なギャングでありながら、感受性に富んだ、純なヌードルスを見事に演じている。哀しみと傷を深く内に湛えた老年期のヌードルスの演技はまさに素晴らしく、グッとくるものがあった。
by ヤマ

'84.10.25. 東宝宝塚



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