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 解雇・・・
「日本では、正社員を解雇することはほとんど出来ない。それが会社側が雇用調整を行いづらい原因になっている。」
と言う人もいます。果たして本当でしょうか?

元々、法律の中では「正社員」「非正規社員」などどいう言葉は存在しません。「無期雇用」「有期雇用」の言葉はありますが、
法律本文の中では出てきません。
 <労働基準法>
(解雇制限)
第十九条  使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、
この限りでない。

(解雇の予告)

第二十条  使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
 実は、労働基準法には、身体上の理由による「解雇制限」と「解雇をするときは30日前までに該当労働者に伝えなさい。」
という文書のみです。
解雇について書かれている法文は、近年に制定されさらに労働関連法をややこしくした 「労働契約法」 に書かれています。
 <労働契約法>平成23年施行
(解雇)
第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を
濫用したものとして、無効とする。
 (以前の「労働基準法 第18条2」の条文を移行)
ここで問題は、「社会通念上相当」とは何かという事です。これがまた曖昧な言葉で、解釈の仕方次第ということになりかねません。

従来より、解雇ができる合理的な理由 として、最高裁判例の「整理解雇4要件」が適用されています。
整理解雇の4要件

説 明    

1 人員整理の必要性  余剰人員の整理解雇を行わなければならない、経営上の相当の必要性が認められること。
 (一般的に、企業の維持存続が危うい程度に差し迫った必要性が認められる場合は、もちろんであるが、そのような状態に至らないまでも、企業が客観的に高度の経営危機下にある場合、人員整理の必要性は認められる傾向にある。
 人員整理は基本的に、労働者に特段の責められるべき理由がないのに、使用者の都合により一方的になされるものであることから、必要性の判断には慎重を期すべきであるとするものが多いが、判例によっては、企業の合理的運営上やむを得ない必要性があれば足りるとして、経営裁量を広く認めるものもある。)
2 解雇回避努力義務の履行 期間の定めのない雇用契約においては、解雇は最後の選択手段であること。
役員報酬の削減、新規採用の抑制、希望退職者の募集、配置転換、出向等によって、整理解雇を回避するための相当の経営努力がなされ、整理解雇に着手することがやむを得ないと判断できること。
3 被解雇者選定の合理性  解雇を行う人選基準が合理的であり、あわせて、具体的人選も合理的かつ公平であること。
4 手続の妥当性   説明・協議、納得を得るための手順・手続きが妥当であること。
この4要件の一つでも欠けると、解雇は「無効」であるとされています・・しかし、
特に、近年は裁判等でもこの4条件が拡大解釈される傾向にあり、比較的整理解雇がしやすい方向に向かっています。
それでは、有期雇用である場合はどうでしょうか?
有期雇用には、契約社員や一般的なパートタイマーの人からいろいろ形があります。
有期雇用の期間について、労働基準法では次の様に定められています。

<労働基準法>
(契約期間等)

第十四条  労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年を超える期間について締結してはならない。
(但し、次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年
 専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)

 厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。


労働基準法の第14条では、働く契約期間(有期雇用)を特例を除いて3年以内にしなければならないとされています。
有期雇用者の解雇については、労働契約法に書かれています。
 <労働契約法>
 第四章 期間の定めのある労働契約 (有期雇用)
(解雇)
第十七条  使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その
      契約期間が満了するまでの間
において、労働者を解雇することができない。
 労働契約法では、「有期雇用者は契約期間は解雇されない。」という原則が書かれています。それでは、有期雇用者に対して
使用者は、契約期間が終了したら、無条件に解雇することができるのでしょうか?
 これについては、労働基準法14条の2の条文(上記の下線部分)が示しています。
厚生労働大臣が基準を定める基準」・・この部分について、厚生労働大臣(厚生労働省)が次の基準を示しています。

 契約締結時の明示事項等
(1)使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示すること。
(2)使用者が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して、契約を更新する場合
  又はしない場合の判断の基準を明示
すること。
(3)使用者は、有期労働契約の締結後に(1)又は(2)について変更する場合には、労働者に対して、
その内容を明示すること。
 

示された基準では、使用者は、労働契約の更新(延長)の可能性があるかどうか示しておくことと書かれています。
では、有期雇用者には、無期雇用者のような「解雇制限」は全くないのでしょうか?

実は有期雇用者でも
@ 業務内容が恒常的であり、更新手続が形式的である。
A 雇用継続を期待させる使用者の言動が認められる。
B 同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例がほとんどない。 等、
事実上、期間の定めのない雇用者(無期雇用者)と同じ状態である場合
原則解雇できません
例えば、「何年も同じスーパーでパートタイマーで働いている」という場合などの突然の解雇は、正当な行為ではありません。
この事を知らないで、一方的に雇い止めをされて、途方に暮れている人も多いようです。

この部分は説明がややこしいので、今度の機会に詳しく書きたいと思います。

詳しくは、ここを見てください。http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/dl/h1209-1f.pdf
以下 執筆中
追記   2013年の予定として、「労働契約法」で、非正規労働者も5年以上継続して労働すれば、
      正社員と同等の地位を得られる改正を行おうとしていますが・・果たしてどうなるでしょうか。

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 リストラという名の不当解雇・・・