■「イルカの棲む島」御蔵島バンドウイルカ研究会
6月に御蔵島にドルフィンスイムに行く予定のため、先週のマリンダイビングフェア「
ドルフィンスイムスペシャル講座
」に続き、「ICERC Japan」(国際イルカ・クジラ教育リサーチセンター)の主催するイルカの研究会に行ってきました。 後は、スキル面の準備をしておく事でしょうか...(^^ゞ
なお、本レポートの掲載に当っては主催者「ICERC Japan」の承諾を頂きましたが、文責は私、Lonverにあります。
日 時
2002年4月13日(土) 13:00〜15:30
場 所
東京渋谷「コスモス青山」B2F
参加費
500円 ※会員は無料 (定員50名)
報告者
御蔵島バンドウイルカ研究会 小木万布氏、他
御蔵島バンドウイルカ研究会「イルカの棲む島」
13:05〜13:55
「御蔵島バンドウイルカ研究会」の成果を撮影したビデオ映像を交えて紹介。「
御蔵島イルカ協会
」「
ICERC Japan
」の協力で、1994年から10年計画で、研修を受けたボランティアによるイルカの固体識別調査を毎年7〜8月に実施している。
これまで8年間で218頭を識別、140頭がコミュニティとして定着している。2001年の調査では、2000年の96%に当る136頭を識別。子イルカは毎年30頭前後確認されている。
成長段階は、体が太くて大きくて黒っぽくて斑点のある、性成熟した「アダルト」、体は一回り小さく明るいグレーで、まだ性成熟してない「サブアダルト」、体は明るいグレーで、まだ母と一緒にいる事が多い子イルカ「ジュベナイル」、体は白っぽく胎児線が残り、その年に生まれた「インファント」と、4つに分類している。
行動の分類は、首を振りながら人に真正面から近づきジジジとクリックス音を発したりする「詮索」、水底を大きな群れでゆっくり移動する「休息」、人に興味を示さずに速く泳ぐ「移動」、若いオスの集団が交尾の練習なのか生殖器を押し付けたり叩いたりする「絡み合い」、大口を開いて歯を見せる「威嚇」、タコを咥えたり離したり、ビニール袋や海藻をヒレに引っ掛けたりする「遊び」、若いメスが子育ての練習をしてるのか他の子イルカの面倒を見る「ベビーシッター」、母イルカの乳頭スリットから子イルカが舌を丸めて母乳を吸う「授乳」など。
有名な固体としては、8年間で4子を生んでいる背びれの前が欠けた「マエカケ」、下あごが大きくしゃくれた「コシャクレ」など。
イルカとのいい関係を築くべく「御蔵島イルカ協会」では、休息中の群れには接近しない、野生生物であるイルカには触らない、触ろうとしない、エサを与えない、など自主ルールを設けている。ルールを守り、よく行動を観察すると、イルカにストレスを与えず、逃げられずに長時間ウォッチング出来る。
視界が良くなくても活動できるよう、イルカは音を発して暮らしているため、音には敏感である。スクーバ、水中スクーターなどは厳禁、エントリーも静かに入る事。
「御蔵島バンドウイルカ研究会」では、学生から社会人まで多くのボランティアで活動・運営されている。本年度もボランティアを募集している。
小木万布氏「ウォッチングとイルカの行動の関係」
14:15〜14:35
三重大学大学院の魚類増殖学研究室に在籍し、御蔵島に在住して「ウォッチング活動とミナミバンドウイルカの行動との関係」について研究している小木氏による説明。
まだ研究は始まったばかりだが、ウォッチングがイルカの行動へ与える影響を定量的に調査している。
イルカに5m以内に近づけたのをウォッチング成功と定義し、エントリー方法(進路上、進路脇、群れの中、イルカから寄って来た)、その時イルカがどんな行動をしてたかによる成功率の違い、などを分析。
成功率が高いのは、何となく群れている「ミリング」、「詮索」の時、群れの中にエントリーした時、群れに子イルカがいる時。特にミリング時には、スイムの持続時間も長いのだとか。
逆に成功率が低いのは、「休息」や「波乗り」の時、進路上へのエントリーなど。社会行動中のイルカは入水時に寄ってくる事が多いが、接触時間が短いため、この場合の接近は親和的とは限らないのではないか。
今後の課題は、齢期による反応差、イルカの反応の継時的な変化、分布や繁殖への影響なども調べたい。
イルカ座談会
14:35〜15:40
御蔵の船と三宅から来る船との差は? 御蔵は小さな船で出港率は低いが静かにエントリーしやすくて成功率も高い。どちらがいいかは分からない。エビ漁船にはパッと寄ってくなど、船のエンジン音を覚えられるケースがあるので、調査捕獲の船は変えた。
スイムの上手な人との差は? 明らかにある。調査データを取ったのは研究会メンバー、一般客であるが、成功率は同じだが、持続時間に差がある。イルカとの距離を保つにはスキルが必要である。
子イルカがいると成功率が高いというのは? 理由ははっきりしない。ただ若い方がポジティブに反応するのかもしれない。
水温などによる成功率の差は? 水深によって水温は全然違うのでよく分からない。時間帯による差はあり、朝夕は詮索や絡み合いなど活発に活動し、10〜13時頃は休息が多い。
三宅島噴火の影響は? 群れの頭数も、子イルカの誕生数も変化無く、短期的には見られない。もう少し経ってみないと長期的には不明である。地震による崖崩れで音に驚いてか、沖に吹っ飛ぶように泳いでいったのは見た事がある。
スクーバや水中スクーターをやってる所もあるが? 慣れはするが、自然に無いものに慣らすのは危険。御蔵でスクーバを禁じてるのは、船の往来の多さや潮の流れの速さなど、むしろ人間の安全性ためでもある。
エサはいつ食べる? 昼はトビウオを捕まえたりするのがしばし見られるが、よく分かってない。夜は沖合いで深い潜水を繰り返してるというデータがあり、この時に捕食してると考えられる。胃の内容物からはイカ、甲殻類の幼生などが見つかっている。
イルカに触るのは? ダメ! 慣れると今度はイルカから触りに来て、いつか誰かが怪我をする事になり、実際そういう事例もある。また、イルカから人に感染し得る病気も発見されたそうで、もちろん逆もあり得る。
発信機による調査は? 予算的な問題、科学的にどんな成果があるか、などはあるがやってみたい。最近の発信機は小さくなり、17〜18万円からあるが、吸盤で取り付けて2日後位に離れた後、潮で流されてしまうので回収が難しいという問題もある。
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" My Diving Page " by Lonver at 02/04/14.