染色法開発秘話
 この染色法のポイントは、なんといってもこの染色液、ファンタジー(パレス化学)である。1998年ごろから、根を染め分けられたらいいだろうなあと、ファンタジー(幻想)をいだきつつ、顕微鏡系染色液からインク、食紅までいろいろと試したがうまくいかなかった。20044月、海外から帰国し、新しい研究課題が見つからず八方塞がりだったある日、インタネット検索に何気なく「染色液」と打ち込んだところ、この切り花着色液が目に留まった。個人向けに通信販売していたので、さっそく注文したところ、翌日には届いた。すぐに家のまわりにあったヒメムカシヨモギの根を浸してみたところ、瞬く間に根が紫に染まった。これはいけるぞ、一気に元気はつらつバイアグラ、あとは怒濤のごとく、ホームセンターの苗を買っては、染色方法の開発に明け暮れた。そして、7月、ついに2株の根を完全に染め分けることに成功した。12月にはこれを研究成果としてまとめたが、それを見届けたかのように、ファンタジーの個人向け販売サイトが閉鎖になってしまった。私のために4年間開店していてくれたのだろうか。それにしても、切り花着色液は20年以上前からあり、花屋さんで青いカーネーションをしょっちゅう見かけていたのに、これまで気が付かなかったとは(なお、ファンタジーの性質について、パレス化学の方にはずいぶんていねいに教えていただきました。ここに記してお礼申し上げます)。



関連文献

1. 村上敏文 2004.8 マルチカラー染色法による根系分布の解明(第1報)日本土壌肥料学会東北支部会講演要旨 p6 

2. 村上敏文・島野智之・三好孝和・中嶋美幸・金田哲・浦嶋泰文 2005.7 根系識別のための染色法  根の研究, 14 p117

3. 村上敏文・島野智之・中嶋美幸・金田哲・三好孝和・浦嶋泰文 2005.11 染色法による圃場で生育するトマトの根の分布解明  根の研究, 14 p181

4. 村上敏文・島野智之・金田哲・中嶋美幸・浦嶋泰文・三好孝和 2006.9 マルチカラー染色法による根系分布の解明(第2報) 日本土壌肥料学会講演要旨

5. Murakami, T., Shimano, S., Kaneda, S., Nakajima, M., Urashima, Y. and Miyoshi N. 2006  Multicolor staining of root systems in pot culture. Soil Sci. Plant Nutri. 52(5)  618-622 

6.
村上敏文 2008.09 植物の根に関する諸問題「180」染色法を使った隣接する根の識別 農業および園芸(養賢堂) 83, 1011-1019

7. Miyazawa, K., Murakami T., Takeda M. and Murayama T.  2009  Intercropping green manure species-effects on rooting patterns. Plant and Soil 331, 231-239  doi 10.1007/s11104-009-0248-y

8.
池永幸子、村上敏文、小林浩幸、山下伸夫、好野奈美子、内田智子  2009 麦類を利用したリビングマルチ栽培における大豆の根系分布. 根の研究, 18 15-19

9. Murakami, T., Shimano, S., Kaneda, S., Nakajima, M., Urashima, Y. and Miyoshi N. 2011 Improvement of root staining method for field applications. Soil Sci. Plant Nutri. 57(4), 541-548

10. Miyazawa, K., Murakami T., Takeda M. and Murayama T. 2014 Dual and triple intercropping: Potential benefits for annual green manure production. Plant Production Sci. 17,194-201


             もとに戻る