4.講習を豊かにする各種情報源
救急法の講習教本は、いろいろな情報のエッセンスを集めたものです。従って、この本の内容だけ説明したのでは、どうしても話が一般的になり具体性に欠けてしまいます。それで、実際に人を助けた話とか、ケガの話とか、中毒でどうなったというような具体的な話を「おかず」として集めておく必要があります。以下に、様々な情報源の紹介をします。これからすこしづつ充実させてゆきます。
書 籍
1.救急医療と市民生活 杉本 侃著 へるす出版 A5判 190p 1890円(税込み)1996年 この本は総合防災訓練の研修会で日赤の医師が薦めていたもの。著者は、元大阪大学救急医学部教授で、これまでの大中規模の災害を分析して、救急医療に対して重要な問題提起を行っている。この本を読んで、防災訓練で作る、野戦病院型の救護所は、日本のように救急車で病院にすぐ運べる場合は意味をなさないと思った。あれができるまでに、軽中傷者は自力か通行人によって病院に行き、重傷者も救急車で病院に運ばれていて、現場には誰もいなくなるからである。それから、搬送に関連して、救急搬送と医療が別々の組織に分かれていることの問題点、救急車がなぜ消防署なのかという小学生のとき以来持ち続けている疑問が明らかにされている。その他、救急車の代用に霊柩車を使った話や手塚治虫氏の名前も出てくる読み応え十分の書。 |
|
2.改訂版 救急マニュアル(エキスパートナースMOOK7) 小林国男責任編集 小学館B5判 271p 2100円(税込み)1999年
看護士用の救急マニュアルで、我々が行う救急法+その後の救急医療について解説されている。意識不明、呼吸停止の原因は、非常に多く、それらについてある程度の医学知識を持っていれば、講習に余裕が持てると思う。中身は、図や写真が多く、文章は簡潔なので、読みやすい。銃弾を撃ち込まれた組関係の方の写真など、結構恐ろしい写真もある。マニア必携か? |
|
3.戦場を駆ける医師 リチャード・ヴィラー著、熊谷千寿訳 原書房B6判318p 1890円(税別)1999年 |
|
4.パレスチナ難民の生と死 ポーリン・カッティング著 広河隆一訳 岩波同時代ライブラリー69 文庫判365p 1020円(税込み)1991年 |
|
5. 脳卒中ことはじめ 山口武典編集 医学書院 A5版 192p 2800円(税別) 1997年 私の身近では、脳卒中による、働き盛りの中年の死亡例が非常に多い。小さいお子さんと奥さんとが遺されるケースがほとんどで、6章の学科では、つい、手当や予防の説明に力が入る。この本は、そういった要求に応えてくれるもので、脳卒中の種類、症状、手当、診断について、豊富な図や写真でわかりやすく説明している。CT診断では、脳梗塞の病巣部位がすぐわからないので、症状や病歴(高血圧など)が初期診断に重要であることをはじめて知った。 |
|
6. 旅客自動車の運転者による応急救護処置[指導員用] (社)全日本指定自動車教習所教会連合会 編集・発行 A5版 207p 非売品 2002年
本書は自動車教習所の教官の講習会で使ったものである。内容は、赤十字の教本と似ているが、絵も多く、読みやすい構成になっている。また、当然のことながら、救急通報や交通事故時の手当について充実した内容になっている。さらに良いのは、左ページが教習生のテキストと同じで、右ページが、指導用の解説になっている点である。赤十字の教本も指導員用として、このようなものがあればいいと常々思っていたので、非常に参考になる。もちろん、指導員としては、日々の勉強によって、教本の解説のためのネタを仕入れる必要はあるが、教本の内容の補足説明ぐらいは書いてあってもいいと思う。例えば、心肺蘇生法を中止して良い条件に、傷病者が拒否反応を示したときと書いてあるが、これはいったいどんなものか、見たことがないので、いつも自信なげにささっと説明している。少なくとも、「あなたに人工呼吸されるぐらいなら死んだ方がましよ、私のことはほっといて」という拒否ではない、ことは確からしい。指導員は医療関係者でない場合が多いので、教本に指導要領を合体させ、解説を付け加えた新しい本を作るべきと思う。おそらく、日本で一番教本を読んで使っているのは指導員なので、その意見を取り入れるシステムも必要である。
|
|
7. 平成12年版 消防白書 消防庁編 (株)ぎょうせい A5版494p 2857円(税別) 2000年
赤十字の救護と切っても切れないのが、消防署の活動である。消防白書は、救急車の出動、災害救助についてのデータが載っており、講習時の説明に役立つ。インターネットでも情報が公開されている。
|
|
8. ソルフェリーノの思い出 アンリー・デュナン著 木内利三郎訳 (株)日赤会館 B6版195p 420円(税込み) 1997年 赤十字関係者にとって、基本中の基本文献であるが、読んだことのある人は意外に少ない(私も4年前にやっと手にいれた)。傷つき、汚れ、痛みに呻く負傷兵の様子が淡々と語られる。講習時に、これが赤十字創設のきっかけを作った本です、と言って見せるだけでも十分価値のある一冊。 |
|
9. 赤十字の創始者アンリー・デュナンを語る 日本赤十字社福島県支部編・発行 B6版66p 非売品 2004年 世界赤十字デーの記念行事として、2003年5月に福島市で行われた講演を収録したものである。講演者は、アンリー・デュナン博物館館運営顧問のエーテル・コッハー女史と国際赤十字史研究者の岸井敏氏である。コッハー女史からは、アンリー・デュナンの生涯について興味深い話が紹介される。一方の岸井氏は、赤十字ゆかりの地のツアーガイドもされていて、ジュネーブやソルフェリーノがどんなところかが説明される。小冊子ながら、写真も多く、赤十字の生い立ちなどを説明するのに重宝している。 |
|
10. フローレンス・ナイチンゲール ルーシー・セーマー著 湯槇ます訳 メヂカルフレンド社 B6版 275P 500円(税別) 1998年
アンリーデュナンとよく対比される、ナイチンゲールの伝記である。指導員養成講習会で比較表をもらったのを覚えているだろうか。ナイチンゲールは、女の細腕ながら果敢に戦場で負傷兵の手当をしたということで、ジャンヌダルクのようなイメージで見られている。しかし、この伝記を読んでみると、上流階級の出身で、イギリス政府に働きかけて軍の医療や衛生の改善をはかった人であることがわかる。日本では、少しまちがったイメージが定着しているのではないかと感じる。
|
|
11. 図解中毒マニュアルPART2 暮らしに潜む危険を考える会編 同文書院 B6版207p 1262円(税別) 1995年
世の中にはこんなに、中毒物質があるのかと思うほど、いろいろな事例が紹介されている。絵がなんとも、劇画系で中毒マニュアルにふさわしい。また、スピーディーな話の展開に思わずに引き込まれる、事件録が載っており、読み物としてもおもしろい。もちろん、講習のおかずにも使える。
|
|
12. 猛毒動物の百科 今泉忠明著 データハウス A5版175p 2000円(税込み) 1994年 世界に名だたる、猛毒の動物をカラー写真で紹介したもの。事故例も豊富に紹介され、巻末には、手当の方法も載っている。教本第3章の傷と止血の蛇、蜂の解説、第6章の急病のカニ中毒の説明時に重宝している。カニの中毒のところに、スベスベマンジュウガニという毒ガニのことが書いてあるが、ただ、教本を読んだだけでは受講生の記憶に残らない。しかし、本書の写真を見せると、なるほどこんなカニか、と納得してもらえる。余談であるが、日本にはスベスベマンジュウダニというダニがいる。命名者はこのカニのパロディで名前を付けたという話である。 |
|
13. アトラス応急処置マニュアル 原書第8版 聖ジョン救急機構本部、聖アンドリュース救急機構本部、英国赤十字社 編 山本保博・黒川顕監訳 南江堂 A5版285p 2800円(税別)2004年 |
|
14. からだの地図帳 高橋長雄 監修・解説 講談社 A4版162p 3883円(税別) 2000年 |
|
15. カラーアトラス人体 第3版 横地千仭、J.W.Rohen、E.L.Weinreb著 医学書院 A4版147p 4800円(税別) 2000年 |
|
16. ボーニー 人体骨格模型 改訂版 井上貴央・牛木辰男・和田洋一著 西村書店 A3版34p 4200円(税別) 2004年 |