語釈
に リ ス ヲ
@ 宋 人 有 耕 田 者。
ニ レ 一
ニ リ リテ レ ニ リテ ヲ ス
田 中 有 株、兎 走 触 株、折 頸 而 死。
レ レ レ
リテ テテ ノ ヲ リ ヲ フ タ ヲ
因 A釈 其 耒 1而 1守 株、冀 復 得 兎。
二 一 レ 二 一レ
カラ タ ハ レリ ノ ヒト
2兎 2不 可 復 得、而 身 為 宋 国 笑。
レ 二 一 二 一
スルハ テ ヲ メント ヲ ル ヲ
今 3欲 以 B先 王 之 政、治 当 世 之 民、皆 4守 株 之 類
下 二 一 中 上 レ
3也。
(五蠧 第四十九 一 守株)
(注)@宋 周代に今の河南省南丘県付近にあった殷の子孫の国。A釈 放り出して。B先王之政 堯・舜・兎・湯・文・武など昔の王者の行った政治。儒家が理想とした古代の天子の政治。
一 書き下せ。
二 口語訳
宋の人に畑を耕している者がいた。畑の中に木の切り株があった。うさぎが走ってきて切り株に当たり、首を折って死んだ。そこで耒を捨てて切り株を見守って、またうさぎを手に入れることを願った。(しかし)うさぎは二度とは手に入れることができず、自身は宋の国の人たちの笑いものになった。
今、昔の聖王の政治のやり方で当世の民を治めようとするのは、切り株を見守っているのと同じたぐいである。
三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 宋人 2 兎 3 頸 4 釈 5 耒 6 因 7 冀
四 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 田
2 頸
五 二重線部1〜3の文法問題に答えよ。
1 而
2 不 復
3 也
六 傍線部 1〜4の問いに答えよ。
1 どうすることか。
2 「兎」と「身」が対比して書かれているが、何を言おうとしているのか。
3 (1)この部分を比喩によって述べている個所を抜き出せ。
(2)この部分に込められて理う真意を記せ。
4 なぜか。
構成
比喩 宋人 株にぶつかった兎を得る 一度目成功
株を守る 二度目失敗
政治家 昔の王の政治 うまくいった 一度目成功
昔の王の政治で人民を治める 二度目失敗
主題 昔の政治が今の世に合う訳が無い。今の世に合う政治をすべきだ。
守株 原義 木の切り株の番をする。
転義 旧習を守ってそれにこだわり時勢の変化に対処することを知らない保守的な態度。
解答
一 宋人に田を耕す者 有り。田中に株 有り。兎走りて株に触れ、頸を折りて死す。因りて其の耒を釈てて株を守り、復た兎を得んことを冀ふ。兎復た得べからずして、身は宋国の笑ひと為る。
今 先王の政を以つて、当世の民を治めんと欲するは、皆 株を守るの類なり。
三 1 そうひと 2 うさぎ 3 くび 4 す 5 すき 6 よ 7 こいねが
四 1 たはた。耕作地の総称。 2 くび。のどくび。管の前も部分。
五 1 順接。 2 部分否定 復た〜ず 二度とは〜ない
六 1 (兎がぶつかるのを待って)切り株の番をする。
2 兎は手に入らなかったし、そのうえ皆から笑われた。踏んだり蹴ったりの状態になった。
3 (1)「釈 其 耒 而 守 株、冀 復 得 兎」
(2)儒家の非現実主義への皮肉。
4 「先王之政」が成果をあげたのを拠り所として同じやり方で「当世の民」を治めようとしている人。
労せずして兎を手に入れたため同じことを期待した宋人。