訓読の決まり
1 漢文の歴史
中国 BC3000年ごろ 漢字が発明された。
AD97年 最古の字典『説文解字』(許慎)が作られた。
日本 AD57年 中国の王が送ったという金印が江戸時代に北九州で発見された。
500年ごろ 漢籍が伝来した。
2 漢文の受け入れ方
(1) 中国人の撥音そのままに音読した。
(2) 漢文をそのまま日本語で読む方法を工夫した。これを訓読と言う。
(3) AD800年ごろ、かな(ひらがな)、カタカナ)を工夫し、かなで書いた。
(4) それから、漢字を交え漢字仮名交じり文で書いた。
3 訓読の基礎 漢字を上から一字ずつ読む。返り点のあるところで順序を変える。
訓点 返り点、送り仮名、句読点を合わせて訓点と言う。
返り点 漢文を日本語として読むために語順を変える記号。
ム ヲ
レ点 一字上に返って読む。 (例)読 書
レ
ル ヲ
一・二点 漢字を二字以上隔てて返って読む。 (例)見 南 山
二 一
上・中・下点 甲・乙・丙点 天・地・人点など
漢字を一字ずつ返って読む。
ー つなぎ線 この線の上下の漢字を熟語で読む。
送り仮名 漢字の右側にカタカナでつける。
句読点 句点「○」 読点「、」
文の名称
白文 訓点のついていない漢文 (例)我 読 書
ム ヲ
訓読漢文 訓点の付いている漢文 (例)我 読 書。
二 一
書き下し文 訓点に従って漢字仮名交じり文に書き改めたもの。カタカナは平仮名にする。
助詞・助動詞は、平仮名にする。助字のうち、訓読するとき読まない文字を
置き字といい、書かない。
(例)我書を読む。
訓読練習問題(一)
一 上の書き下し文を参考にして、下の白文に返り点、送り仮名を記せ。
問題
書き下し文 白文
1
はす。 大 器 晩 成。
2
はにし。 良 薬 苦 口。
3
ひをじてとす。 転 禍 為 福。
4
はをたず。 歳 月 不 待 人。
5
をくはをばとす。 行 百 里 者 半 九 十。
6
はにかず。 百 聞 不 如 一 見。
7
にらずんば、をず。 不 入 虎 穴 、不 得 虎 子。
8
をむは、をしむにかず。 好 之 者、 不 如 楽 之 者。
訓読練習問題(一)
一 上の書き下し文を参考にして、下の白文に返り点、送り仮名を記せ。
解答
書き下し文 白文
1 ハ ス
はす。 大 器 晩 成。
2 ハ シ 二
はにし。 良 薬 苦 口。
レ
3 ジテ ト ス
ひをじてとす。 転 禍 為 福。
レ レ
4 ハ タ ヲ
はをたず。 歳 月 不 待 人。
レ レ
5 ク ヲ ハ バトス ヲ
をくはをばとす。 行 百 里 者 半 九 十。
二 一 二 一
6 ハ カ ニ
はにかず。 百 聞 不 如 一 見。
レ 二 一
7 ンバ ラ ニ ヲ
にらずんば、をず。 不 入 虎 穴 、不 得 虎 子。
レ 二 一 レ 二 一
8 ム ヲ ハ カ シム ヲ 二
をむは、をしむにかず。 好 之 者、 不 如 楽 之 者。
レ レ 二 レ 一
二 次の口語訳の空欄を埋めよ。
問題
1
はす。 大きな器は完成するのが( )。
2
はにし。 ( )は口にすると苦い。
3
ひをじてとす 災いを変えて( )とする。
4
はをたず。 ( )は人を待ってくれない。
5
をくはをばとす。
百里の行程を行く者は( )行ったところを半分だとみなす。
6
はにかず。 百回聞くのは( )見るのに及ばない。
7
にらずんば、をず。
虎の住む穴に入らなければ、虎の子を( )ことはできない。
8
をむは、をしむにかず。
( )は、楽しむ者に及ばない。
二 次の口語訳の空欄を埋めよ。
解答
1
はす。 大きな器は完成するのが(遅い )。
2
はにし。 (よい薬 )は口にすると苦い。
3
ひをじてとす 災いを変えて(幸福 )とする。
4
はをたず。 (年月 )は人を待ってくれない。
5
をくはをばとす。
百里の行程を行く者は(九十里 )行ったところを半分だとみなす。
6
はにかず。 百回聞くのは( 一回 )見るのに及ばない。
7
にらずんば、をず。
虎の住む穴に入らなければ、虎の子を(捕まえる )ことはできない。
8
をむは、をしむにかず。 ( 学問を好きなもの )は、楽しむ者に及ばない。
三 上の訓読漢文を読むとおりに、下の□(漢字一字を表す)に読む順序を算用数字で記せ。
問題
訓読漢文 読む順序
1
大 器 晩 成。 □ □ □ □。
2
良 薬 苦 口。 □ □ □ □。
3
転 禍 為 福。 □ □ □ □。
4
歳 月 不 待 人。 □ □ □ □ □。
5
行 百 里 者 半 九 十。 □ □ □ □ □ □ □。
6
百 聞 不 如 一 見。 □ □ □ □ □ □
7
不 入 虎 穴 、不 得 虎 子。 □ □ □ □ □ □ □ □。
8
好 之 者、 不 如 楽 之 者。 □ □ □ □ □ □ □ □。
三 上の訓読漢文を読むとおりに、下の□(漢字一字を表す)に読む順序を算用数字で記せ。
解答
訓読漢文 読む順序
1 2 3 4
1
大 器 晩 成。 □ □ □ □。
2 1 2 4 3
良 薬 苦 口。 □ □ □ □。
3 2 1 4 3
転 禍 為 福。 □ □ □ □。
4 1 2 5 4 3
歳 月 不 待 人。 □ □ □ □ □。
5 3 1 2 4 7 5 6
行 百 里 者 半 九 十。 □ □ □ □ □ □ □。
6 1 2 6 5 3 4
百 聞 不 如 一 見。 □ □ □ □ □ □
7 4 3 1 2 8 7 5 6
不 入 虎 穴 、不 得 虎 子。 □ □ □ □ □ □ □ □。
8 2 1 3 8 7 5 4 6
好 之 者、 不 如 楽 之 者。 □ □ □ □ □ □ □ □。
訓読練習問題(二) @再読文字
問題
上の書き下し文を参考にして、下の白文に訓点を記せ。
書き下し文 白文
1 未だ嘗て敗北せず。 未 嘗 敗 北。
2 田園将に荒れんとす。 田 園 将 荒。
3 酒を引きて且に之を飲まんとす。 引 酒 且 之。
4 猶ほ魚の水有るがごとし。 猶 魚 之 有 水。
5 当に分蔭を惜しむべし。 当 惜 分 蔭。
6 応に故郷の事を知るべし。 応 知 故 郷 事。
7 過てば即ち宜しく之を改むべし。 過 即 宜 改 之。
8 行楽須らく春に及ぶべし。 行 楽 須 及 春。
9 蓋ぞ各爾の志を言はざる。 蓋 各 言 爾 志。
訓読練習問題(二) @再読文字
解答
上の書き下し文を参考にして、下の白文に訓点を記せ。
書き下し文 白文
ダ テ セ
1 未だ嘗て敗北せず。 未 嘗 敗 北。
二 一
二 レント
2 田園将に荒れんとす。 田 園 将 荒。
レ
キテ ヲ 二 マント ヲ
3 酒を引きて且に之を飲まんとす。 引 酒 且 飲 之。
レ レ レ
ホ ルガ
4 猶ほ魚の水有るがごとし。 猶 魚 之 有 水。
二 一レ
シ
二 シム ヲ
5 当に分蔭を惜しむべし。 当 惜 分 蔭。
レ 二 一
シ
二 ル ノ ヲ
6 応に故郷の事を知るべし。 応 知 故 郷 事。
レ 二 一
シ
テバ チ シク ム ヲ
7 過てば即ち宜しく之を改むべし。 過 即 宜 改 之。
レ レ
シ
ラク ブ 二
8 行楽須らく春に及ぶべし。 行 楽 須 及 春。
レ レ
シ
ゾ ハ ノ ヲ
9 蓋ぞ各爾の志を言はざる。 蓋 各 言 爾 志。
三 二 一
ル
訓読練習問題(二)A再読文字
問題
上の訓読漢文を書き下し文にせよ。
ダ テ セ
1 未 嘗 敗 北。
二 一
二 レント
2 田 園 将 荒。
レ
キテ ヲ 二 マント ヲ
3 引 酒 且 飲 之。
レ レ レ
ホ ルガ
4 猶 魚 之 有 水。
二 一レ
シ
二 シム ヲ
5 当 惜 分 蔭。
レ 二 一
シ
二 ル ノ ヲ
6 応 知 故 郷 事。
レ 二 一
シ
テバ チ シク ム ヲ
7 過 即 宜 改 之。
レ レ
シ
ラク ブ 二
8 行 楽 須 及 春。
レ レ
シ
ゾ ハ ノ ヲ
9 蓋 各 言 爾 志。
三 二 一
ル
訓読練習問題(二)A再読文字
解答
上の訓読漢文を書き下し文にせよ。
1 未だ嘗て敗北せず。
2 田園将に荒れんとす。
3 酒を引きて且に之を飲まんとす。
4 猶ほ魚の水有るがごとし。
5 当に分蔭を惜しむべし。
6 応に故郷の事を知るべし。
7 過てば即ち宜しく之を改むべし。
8 行楽須らく春に及ぶべし。
9 蓋ぞ各爾の志を言はざる。
訓読練習問題(三)@助字(文中にある助字)
一 上の書き下し文を参考にして、下の白文に返り点、送りがなを記せ。また、助字の役割を記せ。
問題
書き下し文 白文 助字の役割
1 藍よりも青し。 1 青 於 藍。 1 於
2 人に施すこと勿れ。 2 勿 施 於 人。 2 於
3 学に志す。 3 志 干 勘。 3 干
4 学びて時に之を習ふ。 4 学 而 時 習 之。 4 而
5 任重くして道遠し。 5 任 重 而 道 遠。 5 而
6 弦歌の声を聞く。 6 聞 弦 歌 之 声。 6 之
7 善く人と交はる。 7 善 与 人 交。 7 与
8 其の己を行ふや慎む。 8 其 行 己 也 慎。 8 也
9 物壮なれば即ち老ゆ。 9 物 壮 即 老。 9 即
訓読練習問題(三)@助字(文中にある助字)
一 上の書き下し文を参考にして、下の白文に返り点、送りがなを記せ。また、助字の役割を記せ。
解答
書き下し文 白文 助字の役割
シ ヨリモ
1 藍よりも青し。 1 青 於 藍。 1 於 比較
二 一
カレ スコト 二
2 人に施すこと勿れ。 2 勿 施 於 人。 2 於 対象
レ 二 一
ス 二
3 学に志す。 3 志 干 学。 3 干 対象
二 一
ビテ 二 フ ヲ
4 学びて時に之を習ふ。 4 学 而 時 習 之。 4 而 順接
レ
クシテ シ
5 任重くして道遠し。 5 任 重 而 道 遠。 5 而 順接
ク ヲ
6 弦歌の声を聞く。 6 聞 弦 歌 之 声。 6 之 役割関係 の
二 一
ク ハル
7 善く人と交はる。 7 善 与 人 交。 7 与 対象 と
レ
ノ フ ヲ シム
8 其の己を行ふや慎む。 8 其 行 己 也 慎。 8 也 については や
レ
ナレバ チ ユ
9 物壮なれば即ち老ゆ。 9 物 壮 即 老。 9 即 条件を受ける すなわ
ち
訓読練習問題(三)A助字(文中にある助字)
一 次の訓読漢文を書き下せ。
問題
シ ヨリモ
1 青 於 藍。
二 一
カレ スコト 二
2 勿 施 於 人。
レ 二 一
ス 二
3 志 干 学。
二 一
ビテ 二 フ ヲ
4 学 而 時 習 之。
レ
クシテ シ
5 任 重 而 道 遠。
ク ヲ
6 聞 弦 歌 之 声。
二 一
ク ハル
7 善 与 人 交。
レ
ノ フ ヲ シム
8 其 行 己 也 慎。
レ
ナレバ チ ユ
9 物 壮 即 老。
訓読練習問題(三)A助字(文中にある助字)
一 次の訓読漢文を書き下せ。
解答
1 藍よりも青し。
2 人に施すこと勿れ。
3 学に志す。
4 学びて時に之を習ふ。
5 任重くして道遠し。
6 弦歌の声を聞く。
7 善く人と交はる。
8 其の己を行ふや慎む。
9 物壮なれば即ち老ゆ。
訓読練習問題(三)B助字(文末にある助字)
一 上の書き下し文を参考にして、下の白文に返り点、送りがなを記せ。また、助字の役割を記せ。
問題
書き下し文 白文 助字の役割
1 天帝の命に逆らふなり。 1 逆 天 帝 命 也。 1 也 なり
2 何ぞ富貴ならんや。 2 何 富 貴 也。 2 也 や
3 豈に千里を遠しとせんや。 3 豈 遠 千 里 哉。 3 哉 や
4 嗚呼哀しいかな。 4 嗚 呼 哀 哉。 4 哉 かな
5 亦楽しからずや。 5 不 亦 楽 乎。 5 乎 や
6 其れ真に馬無きか。 6 其 真 無 馬 邪。 6 邪 か
7 直だ百歩ならざるのみ。 7 直 不 百 歩 耳。 7 耳 のみ
8 忠如のみ。 8 忠 如 而 已 矣。 8 而已矣 のみ
9 我往かん。 9 我 往 矣。 9 矣
訓読練習問題(三)B助字(文末にある助字)
一 上の書き下し文を参考にして、下の白文に返り点、送りがなを記せ。また、助字の役割を記せ。
解答
書き下し文 白文 助字の役割
ラフ ノ 二
1 天帝の命に逆らふなり。 1 逆 天 帝 命 也。 1 也 なり 断定
二 一
ゾ ナラン
2 何ぞ富貴ならんや。 2 何 富 貴 也。 2 也 や 反語
二 シトセン ヲ
3 豈に千里を遠しとせんや。 3 豈 遠 千 里 哉。 3 哉 や 反語
二 一
シイ
4 嗚呼哀しいかな。 4 嗚 呼 哀 哉。 4 哉 かな 詠嘆
タ シカラ
5 亦楽しからずや。 5 不 亦 楽 乎。 5 乎 や 反語
二 一
レ ニ キ
6 其れ真に馬無きか。 6 其 真 無 馬 邪。 6 邪 か 疑問
レ
ダ ル ナラ
7 直だ百歩ならざるのみ。 7 直 不 百 歩 耳。 7 耳 のみ 限定
二 一
8 忠如のみ。 8 忠 如 而 已 矣。 8 而已矣 のみ 限定
カン
9 我往かん。 9 我 往 矣。 9 矣 詠嘆
訓読練習問題(三)C助字(文末にある助字)
一 次の訓読漢文を書き下せ。
問題
ラフ ノ 二
1 逆 天 帝 命 也。
二 一
ゾ ナラン
2 何 富 貴 也。
二 シトセン ヲ
3 豈 遠 千 里 哉。
二 一
シイ
4 嗚 呼 哀 哉。
タ シカラ
5 不 亦 楽 乎。
二 一
レ ニ キ
6 其 真 無 馬 邪。
レ
ダ ル ナラ
7 直 不 百 歩 耳。
二 一
8 忠 如 而 已 矣。
カン
9 我 往 矣。
訓読練習問題(三)C助字(文末にある助字)
一 次の訓読漢文を書き下せ。
解答
書き下し文
1 天帝の命に逆らふなり。 二
2 何ぞ富貴ならんや。
3 豈に千里を遠しとせんや。
4 嗚呼哀しいかな。
5 亦楽しからずや。
6 其れ真に馬無きか。
7 直だ百歩ならざるのみ。
8 忠如のみ。
9 我往かん。