語釈 ク ニ ノ ヒテ ニ ク
@ 曾 子 之 妻 之 市。其 1子 隨 之 而 泣。
レ レ
ノ ハク レ ラバ ニ ノ サント ヲ
其 母 曰、「女 還。3顧 反 為 女 殺 A彘。」
レ レ
キテ ニ タル ス ラヘテ ヲ サント ヲ
妻 2適 市 來。3曾 子 欲 捕 彘 殺 之。
レ ニ レ 一レ
メテ ヲ ハク ダニ ハ ルル ト
妻 止 4之 曰、「1 5特 與 嬰 兒 戲 耳。」
レ ニ 一
ハク ハ ザル ニ ルルニ
曾 子 曰、「嬰 兒 2非 6與 戲 也。
ニ 一
ハ ザル ルニ チテ ヲ ブ
嬰 兒 非 有 知 也。7待 父 母 而 學 者 也。
レ レ ニ 一
ク ヲ カバ ヲ レ フルニ ニ クヲ
聽 父 母 之 教。今 8子 欺 9之、10是 教 子 欺 也。
二 一 レ 二 一
キテ ヲ ル ゼ ノ ヲ
母 欺 子 而 不 信 其 母、
レ レ 二 一
ザル ニ ス ヘヲ ニ ル ヲ
非 所―以 成 教 也。」遂 烹 彘 也。
二 一 一レ レ レ
(外儲説左上 巻三十二 十二 曾子之妻之)
(注)@曾子 曾参。字は子興。孔子の弟子で、孔子より四十六才年少。A彘 豚。B顧反 かえる。戻る。
一 書き下せ。
二 口語訳
曾子の妻が市場に行った。その子が後を追って泣いたので、その母は言った。「お前お戻り。帰ってきたら、お前のために豚を殺して御馳走してあげるよ。」と。市場へ行って帰ってきたところ、曾子が豚をつかまえて殺そうとした。妻は其れを止めて、「子供相手のほんの冗談だ。」と言ったが、曾子は言った。「子供には冗談は通じない。子供は何も分からないで父母について学んでいくもので、父母の教えのままなのだ。今お前がそれをだましたら、それは子供にだますことを教えたことになる。母親が子供をだまし、子供のほうはその母を信じないということになれば、とても教育など出来る者ではない。」と。其のまま豚を煮た。
三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 烹 2 適 市 3 嬰児 4 耳 5 所以 6 遂 7 顧反
四 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 烹
2 嬰児
3 知
4 所以
5 顧反
五 二重線部1〜2の文法問題に答えよ。
1 特〜耳
2 非
六 傍線部1〜10の問いに答えよ。
1(1)指示内容を記せ。
(2)「子」はどうして泣いたか。
2 どういう意味か。
3 (1)「之」の指示内容を記せ。
(2)曾子はなぜ突然このようなことをしようとしたのか。
4 指示内容を記せ。
5 具体的にどのようなことが「戯」になるのか。
6 この字の後に漢字一字を補え。
7 意味を記せ。
8 指示内容を記せ。
9 指示内容を記せ。
10 指示内容を記せ。
構成
市場へ行く 「帰ったら豚を御馳走するから帰っていろ。」 → 家に帰る 。 「子供相手のほんの冗談だ。」 → |
妻 |
←行きたがる 曾子=豚を殺そうとする。 ←曾子「母が子供を騙すと子供は母を信じない。」 豚を殺す。 |
子供 |
主題 王は臣下との約束を守らなければならない。そうしなければ臣下の信用は得られず国政は乱れてしまう。
解答
一 曾子の妻、市に行く。其の子これに随ひて泣く。其の母曰く、「女還れ。顧反らば女の為に彘を殺そう。」と。
市に適きて来たる。曾子彘を捕らえて之を殺そうする。妻は之を止めて曰く、「特だ嬰児と戯るるのみ。」と。曾子曰く、「嬰児は与に戯るるに非ざるなり。嬰児は知有るに非ざるなり。父母を待ちて学ぶ者なり。父母の教えを聞く。今、子之を欺かば是れ子に欺くを教ふるなり。母子を欺きて其の母を信ぜざるは、教へを成す所以に非ざるなり。」と。遂に彘を烹る。
三 1 にる 2 いちにゆき 3 えいじ 4 のみ 5 ゆえん 6 こはん
四 1 煮る。煮たもの。「割烹」肉を切って煮ること。料理する。
2 生まれたばかりの乳飲みご。 3 知恵。 4 方法。 5 かえる。
五 1 順接。2 限定 特だ〜のみ ただ〜だけだ 3 否定
六 1 (1)妻。 (2)いっしょに市場まで連れて行ってほしかったから。
2 市場に行って帰ってきた。
3 (1)彘。(2)妻の約束を知っていた。妻と子供に対する教育のため。
4 曾子
5 子供を帰宅させるために、豚を料理してやると言ったこと。 6 「子」
7 父母に頼って。 8 妻。 9 嬰児。 10 「子欺之」