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語釈                            リ              ニ

(1)昔 者、@彌 子 瑕 有 寵 於 衛 君。

                   カニ スル  ノ   ニ  ハ    トシテ    セラル

衛 國 之 法,1 駕 君 車 者、 罪 A刖。

                       二     一 

          ノ          ナリ       カニ  キテ     グ     ニ     

彌 子 瑕 母 2B病。人 閨@往 夜 告 彌 子。

                                         二      一

           リテ  シ  ノ   二   テ   ヅ

彌 子 4 駕 君 車 以 出。

               二       

     キテ      トシ    ヲ  ハク  ナル        ニ         ニ   ルト  ノ      ナルヲ

君 聞 而 賢 5 曰「孝 1哉。為 母 之 故,忘 其 刖 罪。」

              レ                     レ             二          一

                ビ           ニ   シテ  ヲ      シ   sテ クサ

異 日,與 君 遊 於 果 園,食 桃 而 甘。不 盡,

          レ      に          一   レ              レ

  テ  ノ   ナヲ ハス  二       ハク  スル  ヲ       ル   ノ       ヲ   テ   ハスト

以 其 半 啗 君。君 曰「愛 我 哉。忘 其 口 味,以 啗 寡 

  二

人。」

  一

    ビ       ノ    ヘ      ムニ      ヲ      ニ

及 彌 子 色 衰 愛 弛,得 罪 於 君,

    二                      一  二           一

     ハク    レ   ヨリ  テ  リテ  ス  ガ   ニ       テ  ハスニ  ニ  テスト    ヲ

君 曰「7是 固 嘗 矯 駕 吾 車,又 嘗 啗 我 以 餘 桃。」

                          二      一           レ      二      一

        ニ             ヒハ    ダ  ハラ      メニ

(2)故 彌 子 之 行 2 變 於 初 也,

                        レ   二      一

  モ    テ               ヲ  ルル  トセ  シテ  ニ   タル  ヲ   ハ               

而 8以 前 之 所―以 見 賢,而 後 獲 罪 者,9愛 憎 之 變

        三          二      一レ                 レ

 也。

 

  ニ  ルトキハ        ニ  チ          タリテ        ヘラレ  ヲ 

故 有 愛 於 主 則 10智 當 而 11加 親

      レ          一                          レ

 ルトキハ        ニ   チ         タラ    レテ  セ          ヘラク  ヲ

有 憎 於 主 則 智 不 當 3 罪 而 12加 C疏

   レ  二      一          レ         レ              レ  

  ニ                      ハ           カラ  ル  シテ              ヲ

故 諫  談 論 之 士,4不 可 不 察 D愛 憎 之 主 而

                                  レ  レ   下  二               

    ニ  カ

 後  焉。

        上

            ノ         ル         ナルトキハ  キ  ラシテ     ル

(3)13 龍 之 為 蟲 也,柔  可 狎 而 騎 也,

                       レ               二          一

  レドモ  ノ  ノ   ニ   リ      ノ       ナル    シ   ニ   ラバ    ルル   ニ      

然 其 喉 下 有 逆 鱗 E徑 尺。5 人 有 14嬰 之 者

                 二      一                      ニ        レ    一

    チ  ズ    ス  ヲ

 則 必 殺 人

           レ

      モ       リ          ク       ク   クンバ ルル                 ニ   チ

人 主 亦 有 逆 鱗。 者、 能 無 嬰 人 主 之 逆 鱗,則 

             二      一                レ   ニ                 一     

        カラン

15 矣。

(説難 第十二 五 逆鱗)

 

(注)@彌子瑕 衛(春秋時代の国名)の主君の寵臣。A刖 足切りの処罰。B病 病気が重くなる。C疏 疎んぜられる。「疎」と同じ。D愛憎之主 主君が自分を愛しているか、憎んでいるかとういうこと。F徑 尺 直径一尺。F嬰 「触」に同じ。G幾矣 (理想的な状態に)近い。成功が期待できる。

一 書き下せ。

 

 

二 口語訳

(1)   彌子瑕は衛野君の寵愛を受けていた。衛の国の法ではこっそり君の車に乗る者は、罰として足切りの刑になっていた。が、彌子瑕の母の病気が重くなった。或る人がひそかにやってきて夜にそれを知らせたので、彌子瑕は嘘をついて君の車に乗って出かけた。君は之を聞いて、それを賢いと言って、「孝行だ。母のためにその足切りの刑を忘れたのだ。」と。

後日君と果樹園で遊んだが、桃を食ってうまかった。食べつくさないでその半分を君にわせた。君は言うことに、「私を愛しているのだ。其のおいしい味を忘れて私に食わせたのだ。」と。

彌子瑕の容貌が衰え寵愛もうすれると、君から咎めを受けることになった。君はいった、「これはもと嘘をついて私の車に乗った事がある。また、食べ残しの桃を私に食べさせた。」と。

(2)そうすると、彌子瑕の行動はなにの変わりもないのに、前に誉められたことについて後で咎めを受けるとは君主の愛憎が変わったからである。だから、人をいさめ諭す人、盛んに議論する人は、相手の愛憎の気持をよく察してそれから話を持ちかけなければならない。

(3)そもそも竜という動物は、それをかいならしてのることもできる。しかし、その喉の下に直径一尺ほどの逆さの鱗があって、もしだれかがそれにさわったりすると、必ず其の人を殺してしまう。君主にもこの逆さの鱗があるのだ。君主のその逆鱗にふれないで、おれるなら、ほぼ説得に成功するだろう。

 

三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

1 彌子瑕 2 寵 3 竊 4 矯 5 啗 6 寡人 7 固 8 嘗 9 所以 10 故

 

11 諫 12 談論 13 愛憎 14 騎 15 逆鱗 

 

四 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

1 寵

 

2 孝

 

3 異日

 

4 

 

5 談論

 

6 逆鱗

 

五 二重線部1〜5の文法問題に答えよ。

 

1 哉

 

2 未

 

3 見

 

4 不 可 不

 

5 若

 

六 傍線部1〜15の問いに答えよ。

 

1 「竊」3「 閨vの意味の違いを説明せよ。

 

2 「病」と「疾」の意味の違いを説明せよ。

 

4 どう「」ったのか。

 

5 指示内容を記せ。 

 

6 意味を記せ。

 

7 こういう衛君の心情を説明せよ。

 

8 意味を説明せよ。

 

9 (1)具体的に説明した一文を抜き出せ。

 

10 どういうことか。

 

11 どういうことか。

 

12 どういうことか。

 

13 どういう意味か。

 

14 どういう意味か。

 

15 何に「幾」いのか。

 

構成

 

(1)

 

 

 

(2)

 

 

(3)

 

 

 

 

母の病で車を使う

食べ残しの桃を食べさせる

容貌衰える

 

行動に変わりはない

諌め諭す人=愛憎を察して話すべきだ

 

逆鱗に触れなければ説得に成功する

 

 

 

彌子瑕

 

孝行だから

愛しているからだ

寵愛薄れる

 

愛憎が変わった

 

 

竜  =逆鱗

君主=逆鱗

 

 

 衛 寵愛有り

 

偽りだ

偽りだ

寵愛薄れる

 

愛憎が変わった

 

 

竜  =逆鱗

君主=逆鱗

 

 

 衛 寵愛無し

 

主題 君主を説得しようとする場合、逆鱗に触れないようにすれば成功する。

 

 

 

 

 

 

 

 

解答

 

(1)   昔者、彌子瑕、衛の君に寵有り。衛国の法ひそかに君の車に賀する者は刖なり。彌子瑕お母病む。人間かに往きて夜彌子に告ぐ。彌子矯りて君の車に賀して以て出づ。君聞きてこれを賢として曰孝なるかな。母の故のために其の刖罪を輪する。」と。異日、君と果園に遊ぶ。桃を食らいて甘しとして尽くさず、其の半ばを以て君に啗わしむ。君曰く、「我を愛するかな。其の口味を忘れ

て以て寡人に啗わしむ。」と。彌子の色衰え愛弛むに及び、罪を君に得たり。君曰く、「是れ固嘗て矯吾車に賀し、又嘗て吾に啗わしむるに余桃を以てせり。」と。

(2)   故に彌の行は未だ初めに変わらざるに、而も前の賢と背らるる所以を以てして後に罪を得たる者愛

憎の変あればなり。故に主に愛有れば、則ち智当たりて親を加え、主に憎有れば、則ち智は当たらず。罪せられて疏を加う。故に諫言談論の士は、愛憎の主を察して而る後にかざるべからず。

(3夫れ竜の虫為るや、獣行して乗るべきなり。然れども其の喉下に逆鱗径尺なるもの有り。若し人これ  に嬰るる者有らば、則ち必ず人を殺す。人主も亦逆鱗あり。説く者能く人主の逆鱗に嬰るること無くんば、則ち近し。

三 1 びしか 2 ちょう 3 ひそ 4 いつわ 5 くら 6 かじん 7 もと

  8 かつ 9 ゆえん 10 ゆえ 11 かんぜい 12 だんろん 13 あいぞうのぬし 

14 の 15 げきりん

四 1 君主のお気に入り。 2 よく父母に仕えること。 3 後日。 4 人を諌め諭す。

  5 盛んに話し議論する。 6 天子の怒り。

五 1 感嘆 かな なあ。 2 再読文字 未だ〜ず まだ〜ない 3 受け身 る られる

  4 二重否定 ざるべからず しないわけにはいかない

六 1 「窃」人の目を盗んでこっそりする。 3「間」 隙間を見計らってそっとする。

  2 「病」病気が重くなる。 「疾」病気になること。

  4 「我が君の命令で外出する。」

  5「 彌 子 矯 駕 君 車 以 出」

   6 彌子の容色が衰え、君の寵愛がなくなってくると。

   7 以前から悪いこと失礼なことをやってきたと憎らしげに罪を暴きたてている。

   8 以前に賢とされた理由。 

9 (1)「故 有 愛 於 主 則 智 當 而 1加 親,

有 憎 於 主 則 智 不 當 見 罪 而 加 疏。」

     (2)愛から憎しみへの変化。

   10 こちらの知恵が君主の意にかなうこと。 11 ますます親しまれる。 11 

   12 ますます疎んぜられる。 13 あの竜の虫としての性質。

   14 それに触れるような人がイタtきには、必ず其の人を殺す。

   15 最上の結果に。