語釈
ム ヲ ニ ル ヲ ニ
(1)
@桓 公 読 書 A堂 上 。B輪 扁 斲 輪 於 堂 下。
ニ 一 ニ イチ
キテ ヲ リ ヒテ ニ ハク
釈 C椎 鑿 而 上、問 桓 公 曰、
ニ 一 ニ 一
ヘテ フ ノ ム ハ ス ノ ト ト
「敢 問。公 之 所 読 者、為 何 言 邪。」
レ 二 一
ハク ト ハク リ ト
公 曰 「1聖 人 之 言 也。」曰 「聖 人 D在 乎。」
ハク ニ セリト ハク ラバ チ ノ ム ハ
公 曰 「已 死 矣 。」曰「然 則 2君 之 所 読 者、
レ
ノ ナル ト
古 人 之 糟 伯 1已 夫。」
ハク ム ヲ クンゾ ン スルヲ
桓 公 曰、「寡 人 読 書。輪 人 2安 得 議 乎。
レ
ラバ チ ナリ クンバ チ セント
有 E説 則 可。3無 説 則 死。」
レ レ
ハク テ ヲ ルニ ヲ ルコト ヲ ケレバ
(2)
輪 扁 曰、「臣 也、 以 4臣 之 事 観 之、 斲 輪 F徐
ニ 一 レ レ
チ ニシテ カラ ケレバ チ ニシテ ラ
則 5甘 而 不 固。G疾 則 6苦 而 不 入。
レ レ
カラ カラ テ ヲ ニ
不 徐 不 疾 、H得 之 於 手、
レ レ 二 一
ジ ニ 二 ハ フ リテ スルモ ノ ニ
而 I応 於 心、口 不 能 言。有 J数 存 鳶 於 7其 間、
二 一 レ レ レ 二 一
ハ ハ テ フルコト ニ
臣 不 能 以 喩 臣 之 子。
レ 三 二 一
モ ハ クルコト ヲ ヨリ
臣 之 子、亦 不 能 受 8之 於 臣。
レ レ 二 イチ
ヲ テ ニシテ イテ ル ヲ
是 以 9行 年 七 十 而 老 斲 輪。
レ
ト ハ ノ ルモノ カラ フ セリ
古 之 人 与 K其 不 可 伝 也、死 矣。
二 一レ レ
ラバ チ ノ ム ハ ナル ト
然 則 君 之 所 読 者、 古 人 之 糟 伯 已 夫。」
レ
(第十三天道編十一 桓公読書)
(注)@桓公 春秋時代の斉の君主。前685〜643年在位。A堂 表座敷。B輪扁 車輪作りの扁。C椎鑿 つちとのみ。D在 生存している。E説 納得のいく説明。F徐 車輪の削り方の遅いこと。G疾 車輪の削り方の早いこと。H得之於手でその感覚を覚える。I応於心 心でそれを納得する。J数 方法。技術。K其不可伝也 伝えることのできないもの、つまり精神。
一 書き下せ。
二 口語訳
(1)
桓公が座敷で本を読んでいた。輪扁は車輪を堂の下で作っていた。(輪扁が)土とのみをおいて上り、桓公に訪ねて言うには、「失礼ですが教えてください。王が読んでいる本には何が書いてあるのか。」と。公は言った、「聖人の言葉だ。」 と。言った、「聖人は生存しているか。」と。言った、「もう死んでしまった。」と。
いった、「 そうするとあなたがよんでいるのは、古人の糟粕にすぎない。」 と。いった、「 私が書物を読んでいる。輪人がどうしてとやかく言うことができよか。。納得のいく説明ができれば許す。「もしできなければ殺す。」と。
(2)
輪扁はいった、「私は私の仕事で考えてみると、輪を削るのに削り方が遅いと緩くて固定できない。削り方が早いときつくて入らない。「遅からず早からずとは、手でその感覚を覚え心でそれを納得するわけで口では説明することはできない。私の子供もまたそれを私から受け継ぐことはできない。方法があって遅いとつかのまにである。私の子供もまたそれを受け継ぐことができない。こういう訳で七十の老人になっても輪をけすっている。昔の人と伝えることのできないものはなくなってりう。してみるとあなたの読んでいるものは。古人糟粕にすぎない。」と。
三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 糟粕 2 輪扁 3 椎鑿 4 敢 6 以 7 徐 8 疾 9 行年 10 然
四 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 糟粕
2 寡人
3 行年
五 二重線部1〜2の文法問題に答えよ。
1 已 夫
2 安〜乎
六 傍線部 1〜9の問いに答えよ。
1 「聖人」とは具体的にどういう人を言うか。
2 理由を述べた一文を抜き出せ。
3 解釈せよ。
4 具体的に何か。
5 「甘」「苦」はそれぞれどういうことをいうのか。
6 (1)何をなのか。
(2)その理由は何か。
7 何を指すか。
8 指示内容を記せ。
9 理由は何か、十字以内で記せ。
構成
主題 思想や技術のこつは、人に伝えられない。人の死とともに消滅する書物も糟粕だ。 解答 一 (1)) 桓公諸を堂上に読む。輪扁輪を堂下に削る。椎鑿を釈きて上り、桓公に問ひて曰く、「敢へて問ふ。公の読む所の者は何の言と為すか。」と。公曰く、「聖人の言なり。」と。曰く「聖人有りや。」」と。公曰く「已に死せり。」と。曰く、「然らば則ち君の読む所の者は、古人の糟粕なるのみ。」と。桓公曰く、「寡人書を読む。輪人安くんぞ議するを得んや。説有らば則ち可なり。説無くんば則ち死っせん。」と。 (2) 輪扁曰く、「臣や臣のことを以て之を観るに、輪を削ること緩ければ則ち甘にして固からず。疾ければ則ち苦にして入らず。徐からず疾からざるは、之を手に得て、心に応じ、口に言ふ脳はず、数有りて是を其の間仇に存するも、臣は以て臣の子に喩ふること能はず。臣の子も、亦之を臣より受くること能はず。是を以て行年七十にして老いて輪を削る。古の人と其の伝ふべからざるものとは、死せり。然らb則ち君の読む所の者は、古人の糟粕なるのみ。」と。 三 1 そうはく 2 りんぺん 3 ついさく 4 あ 5 すで 6 も 7 ゆる 8 はや 9 こうねん 10 しか 四 1 かす。また、つまらにもののたとえ。 2 諸侯の自称。 3 取った年数。 五 1 限定 のみ だけだ 2 反語 安くんぞ〜や どうして〜か(いや〜ない) 六 1 堯・舜・烏・周の文王・周公といった人たち。 2 古 之 人 与 其 不 可 伝 也、死 矣。 3 納得のいく説明がなかったら殺す。 4 車輪作りの仕事。 5 穴に軸を差し込むのに、緩くて固定できないのが、「甘」 きつくて入らないのが「苦」 6 (1)輪の」削り方のちょうどよい具合。 (2)感覚的なものは他人に言葉でおしえられないから。 7 削り方の「徐・疾」の中。 8 車輪の削り方のこつ。 9 臣 不 能 以 喩 臣 之 子 |
(1) (2) |
節 |
書物(伝えられる。説明できる)を読む。 A「聖人の言葉。」 → A「死んでいる。」 → 「失礼な。説明できなければ殺す。」 → |
桓公 |
|
車輪を作る。 ←Q「何がかいてあるか?」 ←Q「聖人は生きているか?」 ←「その書物は古人の糟粕だ。」 ←「輪を削るのにこつは手で覚えて心で納得する。 口で説明できない。子にも教えられない。 子も受けつがない。昔の人とその伝えられない ものはなくなっている。書物は古人の糟粕だ。」 |
輪扁 |