語釈
シ ナルハ ヨリ ムル ヲ シ 二 ク ンズル
天 下 莫 柔―弱 於 1水。而 2攻 堅 強 者、莫 之 能 先 。
二 一 二 一 二 一
テ ノ キヲ フル ヲ
以 其 無 @易 3之 也。
二 一レ レ
二 チ 二 ツハ ニ キモ ル ラ
故 柔 柔 之 勝 剛 弱 之 勝 強 、天 下 1莫 不 知 、
レ レ レ レ
シ ク フコト
4莫 能 行。
二 一
ヲ テ フ クル ヲ レヲ フ オ ト
是 以 5聖 人 云、「受 国 之 A垢、是 謂 6B社 稷 主。
二 一 二 一
クル ヲ レヲ フト ト ハ シ スルガ
受 国 之 C不 祥 是 謂 7天 下 王。」8D正 言 2E若 反。
二 一 二 一 レ
(注)@易之 水の柔弱な性質を変化させる。A垢 汚辱。B社稷 国家。「社」は土地の神。「稷」は穀物の神。C不祥 不吉。D正言 真理にかなった正しい言葉。E若反 一見すると真理に反しているように見える。
一 書き下せ。
二 口語訳
世の中に、水ほど柔軟で弱々しいものはない。しかし堅くて強いものを攻めるには、水にまさるものがない。(それは)水というものの柔弱な性質を変化させるものは何もないことによるのである。柔らかいものが堅いものに勝ち、弱いものが強いものに勝つことは、世の中に知らない者はないのに、だれも実行する者がいない。
だから聖人の言葉に、「国の汚辱を引き受ける者、これを国家の主という。国の災厄の処理と責任を引き受ける者、これを世界の王者という。」とあるが、本当に正しい言葉は、一見、真理に反するように聞こえるものである。
三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 柔弱 2 堅強 3 故 4 社稷 5 不詳
四 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 柔弱
2 堅強
3 剛
4 聖人
五 二重線部1,2の文法事項に答えよ。
1 莫 不
2 若
六 傍線部1〜8の問いに答えよ。
1 1、6、7の共通点は何か。
2 (1)「之」の指示内容を記せ。
(2)具体的な例としてどのようなことがあるか。
3 指示内容を記せ。
4 こういうのはなぜか。
5 「聖人」の言った中身を要約せよ。
8 ここではどの言葉をさすか。
構成
正言 反するようだ → |
柔弱=水 柔 弱 ≦ ≦ ≦ 堅強 剛 強 聖人「国の汚辱=国家の王。 − 国の不吉=天下の王。」 − 下にいる |
道家 |
真理 |
堅強が優れている。 国の汚辱・不吉=国民・家来 王=上でいばる。 |
常識 |
主題 柔弱こそ王者の徳
解答
一 天下 水より柔弱なるは莫し。而れども堅強を攻むるは、之に能く先んずる莫し。其の以つて之を易ふる無きを以つてなり。故に柔の剛に勝ち、弱の強に勝つは、天下 知らざる莫きも、能く行ふこと莫し。
是を以つて聖人云ふ、「国の垢を受くる、是れを社稷の主と謂ふ。国の不祥を受くる、是れを天下の王と謂ふ。」と。正言は反するがごとし。
三 1 じゅじゃく 2 けんきょう 3 ゆえ 4 しゃしょく 5 ふしょう
四 1 柔らかで弱い。 2 固くて強い。 3 かたい。 4 道家で無為自然の道を体得した人。
五 1 二重否定 ざる無し でないことはない。強い否定。2 比況 ごとし ようだ
六 1 柔弱ということ。 2 (1)水。(2)雨だれが石に穴をあける。
3 水の性質。
4 そのことを信じて徹することができず、途中でやめてしまうため。
5 王は民の犠牲になる気持ちで治めなければならない。
8「柔 勝 剛 弱 勝 強」 聖人の言葉