語釈
ハ カラ テ ム ハ リテ ヲ ヨリ シ ヨリ
(1)
学 不 可 以 已 。1青 取 之 於 2藍、青 於 而 藍。
レ 二 一 二 一 二 一
ハ シテ ヲ シ ヨリ ノ ナル タルモ ニ メテ テ セバ
3氷 4水 為 之 、而 A寒 於 水。木 直 5B中 縄 撓 以 為
レ 二 一 レ レ
ト ノ タル ニ モ リト ル タ セ ムル
輪、其 曲 6中 C規 。雖 有 D㰏 暴 、1不 復 E挺 者、撓
レ レ 二 一 レ 二 一
ムル ヲシテ ラ
2使 7之 8然 也。
二 一
二 クレバ ヲ チ 二 ケバ ニ チ シ
(2)
故 9木 受 縄 則 直、金 F就 砥 則 利。
レ レ
ク ビテ ニ スレバ ヲ チ ラカニ
君 子 10博 学 、而 日 11G参―省 乎 己 、則 智 明、而
ニ 一
ヒ シ チ
行 無 過 矣。
レ
二 レバ ラ ニ ル ラ キヲ
(3)
故 12不 登 高 山 不 知 天 之 高 也。
レ 二 一 レ 二 一
レバ マ 二 ル ラ キヲ
不 臨 深 渓、不 知 地 之 厚 也。
レ 二 一 レ 二 一
レバ カ ヲ ル ラ ナルヲ
不 聞 13先 王 遺 言 不 知 学 問 之 大 也。
レ 二 一 レ 二 一
マレナガラニシテ ジクシ ヲ ジテ ニスルハ ヲ
干・越・夷 貊 之 子 、14生 而 同 声、長 而 異 俗、
レ
へ ムル ヲシテ ラ
教 使 15之 然 也。(勘学編第十一学不可以)
二 一
(注)@藍 草の名。青色の染料を取る。A寒 冷たい。B中縄 墨縄と一致する。C規 コンパス。D㰏 暴 日にさらされて乾燥する。E挺 真直ぐになる。F就砥 といしにかける。G参―省 何度も反省する。H干・越・夷貊 ともに異民族の国の名。
一 書き下せ。
(1)
(2)
(3)
二 口語訳
(1)「学問は途中でやめてはならない。」と。
青は、藍草から取ってできるものだが、藍草より青く、
氷は、水が変化してできるものだが、水より冷たい。
木がまっすぐで定規にぴったり合うようでも、
湾曲させて輪にすれば、其の曲がりようはコンパスにぴったり合うようになり、
枯れて乾燥しても二度とまっすぐにならないのは、湾曲させることがそうさせたのである。
(2)同様に木は定規に当てられれば、まっすぐになり、金属は砥石で磨かれれば鋭くなり、
君子は幅広く学んで一日に我が身を何度も振り返るならば、物事に通じ行動を誤らなくなるものである。
(3)ところで、高い山に登ってみなければ天の高さを知ることはできず、
深い渓谷を間近に見てみなければ大地の厚さを知ることはできず、
古代に聖王の残した言葉を聞いてみなければ、学問の重大さを知ることはできないものである。
干や越、夷や貉といった異民族の子供らは、生まれたときは同じように産声を上げるが、
成長すれば異なった風俗を身に付ける、これは教育がそうさせているのである。
三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 已 2 藍 3 雖 4 㰏暴 5 砥 6 深渓 7 遺言
8 干 9 越 10 夷貊
四 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 深渓
2 遺言
五 二重線部1、2の文法問題に答えよ。
1 不 復
2 使
六 傍線部 1〜の問いに答えよ。
1と2、3と4の関係によって何を言おうとしているのか。
5 どういうことか。
6 どういうことか。
7 指示内容を記せ。
8 どういうことを言うのか。
9 (1)「受縄」「就砥」はどちらも何のたとえか。
(2)「直」「利」はどちらも何のたとえか。
10と11はどういう関係になっているか。
12 「高山」に登らなければ「天之高」が分からないのはなぜか。
13 (1)何にたとえているか。
(2)何のことか説明せよ。
14 どういうことか説明せよ。
15 指示内容を記せ。
構成
(1)青(色) ←藍(植物) 青≥藍 青い
氷 ←水 氷≥水 冷たい
輪 ←真直ぐな木 曲げる。本にもどらない
(2)真直ぐ ←木 墨縄
鋭利 ←金属 砥 砥
知識明らか・過ち無し ←君子 広く学び反省する
(3)天の高さ × ←高山に登らない
大地の厚さ× ←深い谷に臨まない
学問の偉大さ× ←聖王の言葉を聞かない
異民族の子と違う ←教え
主題 学問の大切さ
藍より青し 出欄の誉れ
解答
一「学は以て已むべからず。」と、
青は、之を藍より取りて、藍より青く、
氷は、水之を為して、水より寒し。
木直くして縄に中るも、輮めて以て輪と為さば、
其の曲なること規に中り、槁暴有りと雖も復た挺びざるは、
輮むること之をして然らしむるなり。
故に、木、縄を受かば則ち直く、金、礪に就かば則ち利く、
君子博く学びて日に己を参省せば、
則ち智明らかにして行ひに過ち無し。
故に高山に登らざれば、天の高きを知らず、
深谿に臨まざれば、地の厚きをしらず、
先王の遺言を聞かざれば、学問の大なるを知らざるなり。
干越夷貉の子、生まれたるときは而ち声を同じくするも、
長ずれば而ち俗を異にするは、教へ之をして然らしむるなり。
三 1 や 2 あい 3 いえど 4 こうばく 5 といし 6 しんけい
7 いげん 8 う 9 えつ 10いばく
四 1 深い渓谷。 2 前人の残した言葉。
五 1 部分否定 復た〜ず 二度とは〜しない
六
1と2、3と4 本性をさらに優れたものにすることができるということ。
5 墨縄にぴったりとあうこと。 6 コンパスにぴったりとあうこと。
7 木 8 曲がったままで元の状態には戻らないこと。
9 (1)広く学問をして、何度も反省すること。(2) 知恵がつき行動に過ちがなくなること。
10 学んだことが確かに行動として現れているかどうか反省すること。
11 「高山」に登っても天はさらに其の上に広がっているので。
12 (1)「高山」深渓(2)上代の優れた聖王の残した言葉。
13 生まれた時は同じ声で泣くが、大きくなるとそれぞれの土地の風俗・習慣を異にするようになる。
14 生まれた時には同じ声で泣いた人達。