語釈
ハク ハ ノ ハ ノ
孟 子 曰、「仁 人 心 也。義 人 路 也、
テテ ノ ヲ ラ チテ ヲ ラ ムルヲ
@ 舎 1其 路 而 弗 A由。B放 2其 心 而 不 知 求。
二 一 レ 二 一 レ レ
シイ ラバ ノ タルル チ ル ムルヲ ヲ
3哀1哉。4人 有 鶏 犬 放、則 知 求 之。
二 一 レ レ
リテ モ ラ ムルヲ ハ シ
有 放 心 2而 不 知 求。5學 問 之 道 6無 他。
二 一 レ レ レ
ムル ノ ヲ
求 其 放 心 3而 已 矣。」 (第十一告子章句上一一)
二 ヲ
(注)@舎 「捨」に同じ。A由 通る。B放其心 本心を失う。
一 書き下せ。
二 口語訳
孟子が言うことには、「思いやりの心(すなわち仁)は人の本心である。義=(道理)は人の行うべき正しい道である。踏むべき路を捨てて、それによらず、その本心を放ち失ってしまって、それを探し求める事を知らないと言うことは、実に情けないことである。人は自分の飼っている鶏や犬がどこかへ行ってしまうと探し求めるのに、自分の本心を探し求めることを知らない。学問の道というものは、ほかでもない。ただこの失った本心を取り戻そうと求めることにあるのみである」と。
三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 仁 2 弗由 3 哀 哉 4 則 5而 已 矣
四 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 放心
五 二重線部1〜3の文法事項に答えよ。
1 哉
2 而
3 而 已 矣
六 傍線部1〜6の問いに答えよ。
1、 2 指示内容をそれぞれ、同意の漢字一字で抜き出せ。
3 何を哀しんでいるか。
4 (1)どんな状態を例えているか。
(2)このたとえにに込められている人間の本性を一般的に答えよ。
5 「学問」は何のためにするのか。
6 文中のどの部分を受けているか、抜き出せ。
仁は本心 しかし 本心を逃がして求めない →嘆かわしい
義は正道 しかし 路を捨てて従わない →嘆かわしい
比喩
鶏犬が逃げると求める 具体 小
本心が逃げても求めない 抽象 大
学問の方法=本心を求めること 主題
解答
一
孟子曰く、「仁は人の心なり。義は人の路(みち)なり。其の路を舎(す)てて由らず。其の心を放ちて、求むることを知らず。哀しいかな。人鶏犬(けいけん)の放たるること有らば、則(すなは)ち之を求むるを知らず。学問の道は他無し。其の放心を求むるのみ」と。
三 1 じん 2 よらず 3 かなしいかな 4 すなわ 5 のみ
四 1良心を失う。外物に迷って本体を失った心。
五 1 感嘆 かな だなあ 2 逆接 しかも それなのに 3 限定 のみ だけだ
六 1 義 2 仁
3 仁義を捨て失ってそれを取り戻そうとしない人たちばかりの世の中になっていること。
4 (1)鶏や犬を逃がした場合。(2)物質的欲望が先行し、心の問題をないがしろにする。
5 人間としての心を取り戻すため。
6 「求其放心」