語釈
ハク ハ ホ ノ スレバ ヲ ニ チ シ
@ 告 子 曰、「性1猶A湍 水 也。決 諸 東 方、則 東 流、
二 キ 一 二 一
スレバ ヲ ニ チ ス キハ カツ ヲ
B 決 諸 西 方、則 西 流。1人 性 之 無 分 於 善 不 善 也、
二 一 レ 二 一
ホ キガ カツ ヲ
猶 水 之 無 分 於 東 西 也。
二 一レ 二 一
ハク ハ ニ キモ カツ ヲ カラン ヲ
孟 子 曰、「水 信 無 分 於 東 西、無 分 於 上 下 乎。
レ 二 一
ナル ホ クガ ニ
人 性 之 2善 也、猶 水 之 就 下 也。
二 キ 一レ
ク ル ルコト ナラ シ ル ル ラ
3人 無 有 不 善、水 無 有 不 下。
レ レ レ レ レ レ
レ ハ チテ ラセバ ヲ ク ム ゴサ ヲ
今 夫 水、搏 而 躍 之、可2使 過 顙
レ レ レ レ
シテ レバ ヲ シ ム ラ ニ
C
激 而 行 之、可 使 在 山。
レ レ レ レ
レ ニ ナラン ノ チ ル
是 3豈 水 之 性 哉。4其 勢 則 5然也。
キハ ム サ ヲ ノ モ ホ クノ ト
6人 之 可 使 為 不 善、7其 性 亦 猶 是 也。」
レ レ 二 一 レ ケレバ
(第十一告子章句上二性猶澹水)
(注)@告子 孟子と同時代の人。名は不害。孟子の論争の相手。A湍水 渦まく水。B決 せきを切って落とす。C激 水を遮り水勢を激しくする。
一 書き下せ。
二 口語訳
告子が言った、
「人の本来の性質は、渦巻く流れのようなものだ。
東の堰を切り落とせば東に流れ、
西の堰を切り落とせば西に流れる。
人の本来の性質が善と不善に分けられないのは、
堰を切り落とす前に、水が西に流れるか東に流れるかに分けられないのと同じようなものだ。」
孟子はこう答えた、
「水は、確かに堰を切り落とす前から西に流れるか東に流れるか分けられないが、
どうして上下に分けられないだろうか。
人の本来の性質が善であるのは、水が下に流れるのと同じようなものだ。
人が善でないことは無く、水か下に流れないことは無い。
そもそも水は、もしこれを打って跳ね上げれば額より高く跳ばすことも可能であり、
せき止めてから流せば山頂に届かせることも可能である。
しかし、どうしてこれが水の本来の性質であろうか。
水の勢いこそがそうしているのである。
人が不善な行為をし得るのは、人の本来の性質も、水のそれと同じく、
外部の影響を受けるからである。」
三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 即 2 就 3 夫 4 躍 5 豈
四 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 性
2 博打
3 躍
五 二重線部1〜3の文法事項に答えよ。
1 猶
2 使
3 豈
六 傍線部1〜7の問いに答えよ。
1 「人生」と「水」との共通点はどこにあるか。
2 「善」は告子の言葉のどの部分と対応関係にあるか、抜き出せ。
3 意味を記せ。
4 指示内容を記せ。
5 指示内容を記せ。
6 人が「不善」をなすのはなぜか。
7(1)「其」、「是」はそれぞれ何をさすか。
(2)何に対して「亦」なのか。
告子 水 東流・西流―条件により左右される
人間の本性 善・不善―導き方でどちらへも進む。本性は善でも不善でもない。
孟子 水の本性 高→低
人間の本性 善
水 飛び越える・山にも登るー外圧による
人間 不善行為 ―外圧による
主題 性善説
解答
一
告子曰はく、「性は猶ほ湍水のごときなり。諸を東方に決すれば、則ち東流し、諸を西方に決すれば、則ち西流す。
人の性の善不善を分かつ無きは、猶ほ水の東西を分かつ無きがごときなり。」と。
孟子曰はく、「水は信に東西を分かつ無きも、上下を分かつ無からんや。
人の性の善なるは、猶ほ水の下きに就くがごときなり。人善ならざること有る無く、水下らざること有る無し。
今夫れ水は、搏ちて之を躍らせば、顙を過ごさしむべく、激して之を行れば、山に在らしむべし。
是れ豈に水の性ならんや。其の勢則ち然らしむるなり。
人の不善を為さしむべきは、其の性も亦猶ほ是くのごとければなり。」と。
三 1 すなわ 2 つ 3 そ 4 おど 5 あ
四 1 もちまえ。 物の本質。 2 たたく。うつ。 3 はねあがる。
五 1 再読文字 猶ほ〜がごとし ちょうど〜のようだ
2 使役 使AB AをしてBせしむ AにBさせる 3 反語 豈に〜や どうして〜か(いや〜ない)
六 1 「人性」善でも不善でもよい。 「水」東にも西にも流れる。
2 「無分於善不善」3 人は皆善で水はすべて低い方へ流れる。
4 テで打つ勢いと堰止めて強くした水の勢い。5 「使 過 顙」「使 在 山」
6 利欲に迫られ欲望に誘われて本性を失ってしまうため。
7 (1)「其」人 「是」「其勢則然也」 (2)水