@ 漁父之利                   巻第九 四六五

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語釈

          ニ タント    ヲ            ニ   ノ   ヒテ       ニ   ク

  趙 1且 伐 B燕。C蘇 代 為 燕 謂 D恵 王 曰、

          レ   レ                レ      

               タリテ  グルニ     ヲ       ニ  デテ   ス

「今 者1臣 来 過 E易 水。蚌 方 出 F曝。

                   二        一

  シテ       ム     ノ   ヲ        シテ     ム   ノ  ヲ

而 G鷸 啄 2其 肉。蚌 3合 而 箝 其 喙。

           二         一                二      一

      ク              フラ        ンバ フラ    チ    ラント    

鷸 曰、今 日 不 雨、明 日 不 雨、即4「有 死 蚌

                 レ              レ            二      一

  モ      ヒテ  ニ   ク                デ          ンバ デ    チ  ラント    

蚌 亦 謂 鷸 曰、5今 日 不 出、明 日 不 出、即 有 死 鷸

          レ                   レ              レ          二      一

               ゼ        ツルヲ          テ      セ   フ     ヲ 

兩 者 不 肯 7相 舍。漁 者 H得 而 幷―擒 8

            レ  二        一                    二         一

         ニ   タント ヲ

今 趙 且 伐 燕。

          レ   レ

        シク      ネテ   テ   レシメバ   ヲ      ルル              ランコトヲ   ト   

燕・趙 久 相 攻 、以 敝 大 衆、臣 恐 I強 秦 之 爲 漁 父 也。

                        二       一      三               二      一

  ハクハ          セヨト               ク   シト  チ  ム

願 王 J熟―計 之 也。恵 王 曰、善。乃 止

            二      一

(注)@漁父 漁夫。漁師。A趙 戦国時代の国名。B燕 春秋戦国時代の国名。C蘇代 戦国時代洛陽の人。遊説家。兄の蘇秦も遊説家として有名であった。D恵王 趙の恵文王。E易水 河北省にある川の名。F蚌 どぶ貝。G鷸 sぎ。H得而幷擒之 両方を一緒に捕らえた。I強秦 「秦」は春秋戦国時代の国名。蔡きぃうの力を有し後に天下を統一する。J熟―計 よく考える。 

 

一 書き下せ。

 

二 口語訳。

趙は今にも燕を討とうとしている。蘇代は燕のために恵王にこう言った、「 今私はこちらへ来る途中、易水を通り過ぎた。蚌がちょうど泥の中から出てひなたぼっこをしていた。そして、鷸が蚌の肉をついばんだ。蚌は殻を閉じ合わせて鷸のくちばしをはさんだ。鷸が言った、「今日雨が降らず、明日も雨が降らなかったら、たちまち蚌の死骸ができるぞ。」と。蚌もまた鷸に言った、「今日ここから出られず、明日も出られなければ、たちまち鷸の死骸ができるぞ。」と。両者は互いに放そうとしなかった。漁師は蚌と鷸の両方を取ることができた。

 趙は今にも燕を討とうとしている。燕と趙が長く攻め合うと大衆は疲弊する。私は、秦が漁夫になることを恐れる。どうか王は良く考えてくれ。」と。恵王は「よくわかった。」といった。そして戦いをやめた。

趙は且に燕を伐たんとす。蘇代燕の為に恵王に謂ひて曰く、「 今、臣の来たるとき、易水を過ぐ。蚌方に出でて曝す。而して鷸其の肉をむ。蚌合して其の喙を箝む。鷸曰はく、「今日雨ふらず、明日雨ふらずんば、即ち死蚌有らん。」と。蚌も亦鷸に謂ひて曰はく、「今日出でず、明日出でずんば、即ち死鷸 有らん。」と。両者相舎つるを肯んぜず。漁者得て之をせ擒ふ。趙は且に燕を伐たんとす。燕・趙久しく相攻めて、以て大衆疲れしめば、臣強秦の漁夫と為らんことを於そるるなり。願はくば王之を熟計せよ。」と。恵王曰、「善し。」と。乃ち止む。

 

三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

1 臣 2 易水 3 蚌 4 曝 5 鷸 6 啄 7 

 

8 即 9 肯 10 乃

 

四 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

1 漁父

 

2 方

 

3 肯

 

五 二重線部1の文法問題に答えよ。

 

1 且

 

六 傍線部1〜8の問いに答えよ。

 

1 誰を指すか。

 

2 指示内容を記せ。

 

3 何を合わせたのか。

 

4 (1)どういう意味か。

 

  (2)なぜそうなるか。

 

5 どういう意味か。

 

6 指示内容を記せ。

 

7 どうすることか。

 

8 指示内容を記せ。

 

構成

 

 

 恵王=燕を討とうとする。→

 

 

 

 

 

 

 恵王=和解した。

 趙

 

← 蘇代「討つな。

 

  蚌(燕)

   −    互いに譲らない

  鷸(趙)

 

 

 

 

 

 燕

 

 

 

 

←漁師(秦)一度に手に入れる」

 

 

 

 

 秦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主題 両者が争っているすきに、他の者が横取りした利益。

 

   鷸蚌の争い

 

参功  プロレスの技 四の字固めー足で四の字に組んだ相手に対して、逆に組み交わす。

 

    山女が蛇を飲み込みともに捕らえられる 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答

趙は且に燕を伐たんとす。蘇代燕の為に恵王に謂ひて曰く、「 今、臣の来たるとき、易水を過ぐ。蚌方に出でて曝す。而して鷸其の肉をむ。蚌合して其の喙を箝む。鷸曰はく、「今日雨ふらず、明日雨ふらずんば、即ち死蚌有らん。」と。蚌も亦鷸に謂ひて曰はく、「今日出でず、明日出でずんば、即ち死鷸 有らん。」と。両者相舎つるを肯んぜず。漁者得て之をせ擒ふ。趙は且に燕を伐たんとす。燕・趙久しく相攻めて、以て大衆疲れしめば、臣強秦の漁夫と為らんことを於そるるなり。願はくば王之を熟計せよ。」と。恵王曰、「善し。」と。乃ち止む。

三 1 しん 2 えきすい 3 ぼう 4 さら 5 いつ 6 ついば

  7 はさ 8 すなわ 9 がえん 10 すなわ

四 1 りょうし。漁父―漁師のジイさん。 漁者―魚を取ることで生活している人。

  2 丁度その時。 3 承諾する。 肯定 否定

五 1 再読文字 まさに〜す 今にも〜しようとする

六 1 蘇代。2 蚌。 3 貝殻。 

4 (1)死んだどぶ貝があることになる。

    (2)ひからびて。

5 鷸のくちばしが蚌の貝殻の中から出られないこと。

6  蚌と鷸。 7 お互いに投げだすこと。 8  蚌と鷸。