蛇足             斉巻第四 一三四

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 語釈

          ニ  リ     ル        フ   ノ        ニ        ヲ

@ 楚 有 A祠 者。 賜 其 B舎 人 C卮 酒。

      ニ        一     ニ                    一

            ヒテ  ク 

舎 人 D相 謂 曰、

     シテ   マバ   ヲ     ラ       ニテ  マバ  ヲ    ラン  リ  

「数 人 飲 1 不 足、一 人 飲 之 E有 余。

            レ        レ              レ        レ

       フ  キテ  ニ     リ  ヲ   ヅ     ル      マント ヲ

 F請 画 地 2 蛇、先 3 者 飲 酒。」

            レ        レ                    レ

        ノ      ヅ   ル  キテ  ヲ     ニ  マント 

  一 人 蛇 先 成。引 酒 1 飲。

                      レ        レ

    チ      ニテ  チ  ヲ      ニテ  キテ   ヲ   ク

 乃 左 手 持 卮、右 手 画 蛇 曰、

                レ             レ

          ク   ルト ガ    ヲ         ダ  ラ                  ル

   4「吾 能 為 之 足。」  2 成、一 人 之 蛇 成。

                 ニ      一         レ ルニ    

        ヒテ ノ   ヲ   ク               ヨリ シ

 奪 其 卮 曰、  「 蛇 G固 無 足。

      ニ      一    

              クンゾ ク  ランヤト ガ   ヲ             ニ  ム      ヲ

 5H子 3安 能 為 之 足 。」 M 6 飲 其 酒。

                      ニ      一                 ニ      一

       ル   ノ   ヲ          ニ   フ  ノ   ヲ 

 7為 蛇 足 者 、 終 亡 其 酒

        ニ     一               ニ      一

 

(注)@楚 春秋戦国時代の国名。A祠者 祭りを司る人。B舎人 おそばに仕える人。C卮酒 大きな杯に満たした酒。D相謂 話し合う。E有余 たっぷりある。F請 さあ・・・しよう。G固 もちろん。H

子 あなた。

 

一 書き下せ。

 

二 口語訳。

楚に祭礼を司る人がいた。側近の者に大きな杯に入れた酒をふるまった。側近達は話し合って言うことには、「数人で飲んだら足りないが、一人で飲めばたっぷりある。ひとつ地面に蛇の絵を描いて、一番早く書いた者が飲むことにしたらどうだろう。」と。一人の蛇がまず出来上がった。その男は酒を引きよよせて飲もうとした。そして男は左手に杯を持ち、右手で蛇を書きながら言うことには、「私は蛇の足をかく余裕があるぞ。」と。(足が)まだ書き終わらないうちに別の一人の蛇が出来上がった。その杯を奪って」言うことには、「蛇にはもともと足はない。Lどうして蛇の足をかくことができようか(いやできない。)」と。そういって酒を飲んでしまった。蛇の足をかいた者はとうとう酒を飲み損なった。

 

三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

  1 蛇足     2 楚       3 卮酒   4 請    5 為

 

  6 乃      7 能       8 固    9 遂    10 終

 

四 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

1 固

 

五 二重線部1〜3の文法問題に答えよ。

 

1 且

 

2 未

3 安

 

六 傍線部1〜7の問いに答えよ。

 

  1 指示内容を記せ。

 

  2 「為」と3「成」の意味の違いを記せ。

 

  4 どういう気持ちから発せられたか。

 

  5 意味を記せ。

 

  6 「遂」と7「終」の意味の違いを記せ。

 

  7 このような結末になった根拠に相当する部分を五字以内で抜き出せ。

 

構成

 

    1 蛇を最初に書いた者=足を書く

 

 

    2 次に、蛇を書いた者=酒を飲む

 

主題 蛇足=蛇の足

 

      余計なつけたし

解答

一 楚に祠る者有り。其の舎人に卮酒を賜う。舎人相謂曰く、「数人にて之を飲まば足らず、一人にて之を飲まば余り有り。 請ふ地に画きて蛇を為り、先づ成る者酒を飲まん。」と。 一人の蛇先づ成る。酒を引きて且に飲まんとす。乃ち左手にて卮を持ち、右手にて蛇を画きて曰く、「吾能く之が足を為る。」と。未だ成らざるに、

一人の蛇成る。 其の卮を奪ひて曰く、「 蛇固おり足無し。子安んぞ足を為らんや。」と。遂に其の酒を飲む。

蛇の足を為る者、終に其の酒を亡ふ。

三 1 だそく 2 そ 3 ししゅ 4 こ 5 つく 6 すなわ 7 お 8 もと 

9 ゆい 10 つい 

四 1 もともと。元来。 

五 1 再読文字 且に〜んとす 今にも〜しようとする 

  2 再読文字 未だ〜ず   まだ〜ない

  3 反語 安くんぞ〜せんや どうして〜しようか(いや〜ない) 

六 1 卮酒。2 2 こしらえる 3 出来上がる 完成 4 得意。 余裕。

  5 蛇に足を付け加えることなどできるはずがない。

  6 6 その結果。7 とうとう。結局。7 「蛇固無足」