舟刻舟求剣 『呂氏春秋』
語釈
ニ リ ル ヲ ノ リ ツ ニ
1楚 人 有 @渉 2江 者。3其 剣 A自 舟 中 墜 於 水。
二 レ 一 二 一 二 一
カニ シテ ノ ニ ク レ ガ ナリト リテ チシ
遽 刻 其 舟 曰、「是 吾 剣 之 B所 従 墜。」
二 一 二 一
ル リ ノ ノ シシ リテ ニ ム ヲ
舟 止。C従 4其 所 刻 者、 入 水 求 5之。
二 レ 一 レ レ
ハ ニ ケリ モ ハ カ ムコト ヲ キ クノ ヒテ
6舟 已 行 矣、而 剣 不 行。求 剣 71若 此。2不 亦 惑 乎。
レ レ レ 二 一
(注)@渉江 江を舟で渡る。A自 〜から。起点。B所従墜 落ちた場所。C従 〜から。ここでは〜二従って
一 書き下せ。
二 口語訳。
楚の人で、長江を渡った者がいた。その剣が舟の中から水に落ちた。
すると、あわてて舟に目印を刻んで、「わしの剣が落ちたのはここだぞ」と言った。
やがて、舟が岸に着いて止まった。
すると、彼は舟に刻んだ目印のところから水に入って剣を探した。舟は動いてしまっている。しかし、剣は動いていない。だのにこのようにして剣を探すとは、なんとたわけたことではないか
三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 刻舟 2 楚人 3 自 4 遽 5 従 6 已 7 而 8 惑
四 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 遽
2 刻
3 已
五 二重線部1、2の文法問題に答えよ。
1 若
2 不亦〜乎
六 傍線部1〜7の問いに答えよ。
1 「楚人」とは「楚の国の人」と言う意味だが、楚の国はこの時代他の国からどのように評価されていたか。この文章から判断せよ。
2 「江」は「長江」のことだが他に何というか。
3 指示内容を記せ。
4 指示内容を記せ。
5 指示内容を記せ。
6 何をたとえているか。
7 「若此」とはどのようにすることか。
楚人
長江 舟で渡る 剣を落とす 舟に印をつける
舟が止まる 印をつけた所にもぐり剣を探す
主題 原義―舟から剣を落とした者が、そこに印をつけ、ここが落とした場所だと剣を探す。
転義―時勢が移り変わることを知らないで、昔通りのやり方にこだわり続ける愚かさ。
古い習慣にこだわる頑固者。
解答
一 楚人に江を渉(わた)る者有り。其の剣舟中より水に墜つ。遽かに其の舟に刻みて曰く、「是吾が剣の従りて墜ちし所なり」と。舟止まる。其の刻みし所の者従り水に入りて之を求む。舟は已に行けり、而)も剣は行かず。剣)を求むること此のごとし。亦た惑)いならずや。
三 1 きざ ふね 2 そひと 3 よ 4 にわ 5 よ 6 すで 7 しか 8 まど
四 1 急に。素早く。「急遽」 2 ほる。 3 もう。もはや。
五 1 比況 ごとし ようだ 2 反語 不亦A乎 亦Aならずや 大変Aではないか(いやAだ)
六 1 未開の辺地として軽く見られていた。 2 揚子江。 3 渉江者。
4 自分(楚人。渉江者。) 5 剣。 6 時勢の変化。
7 舟が動いたことを計算に入れないで剣を探そうとすること。