病入@膏肓 成公十年
語釈
ノ ナリ ム ヲ ニ
A晋 B恵 公 C疾 病。 求 醫 D于 E秦。
ニ 一
ム ヲシテ メ ヲ ダ ラ
F秦 伯 1使 G醫 緩 H爲 1之。 2未 至。
二 一レ レ
ルニ
ミルラク リテ ト ク ハ
2公 3夢、疾 爲 二 竪 子 曰、「彼 良 醫 也。
二 一
ル ツケンコトヲ ヲ クニカ レント ヲ
懼 4傷 我。3I焉 逃 5之。」
レ レ レ
ノ ク ラバ ニ ヲ セント
其 一 曰、「6居 肓 之 上、膏 之 下、4J若 我 何。
二 一 レ
リテ ク ル カラ ム リ ニ
醫 至。曰、「疾 5不 可 爲 也。在 肓 之 上、膏 之 下。
レ レ 二 一
ムレバ ヲ ナリ セントスルモ ニ バ ラ ニ
K攻 7之 不 可。達 8之 不 及。藥 不 至 焉。」
レ レ レ レ レ
ク ト ク シテ ガ ヲ ラシム ヲ
公 曰、「9良 醫 也。」厚 為 之 礼 而 帰 之。
二 一 レ
(注)@膏肓 「膏」は、心臓の最下部にある脂肪。「肓」は心臓と横隔膜の間。A晋 春秋戦国時代に国名。B恵公 春秋時代の晋の代二十八代君主。在位はBC600〜BC581年。C疾病 病状が悪化すること。D于 「於」と同じ。E秦 春秋戦国時代の国名。F秦伯 秦の国王。在位はBC604〜BC577年。G醫緩 医者で 緩」という名前の者。H爲 治療する。I焉 ここは場所を尋ねる表現。J若何者 方法がないことを強調する。K攻 治療する。
一 書き下せ。
二 口語訳。
晋の恵公は重病になった。秦に名医を求めた。秦伯は医者の緩に命じて、晋の恵公の病を治療させることにした。
未だ緩が来ないうちに、恵公は夢を見た。夢の中で、二竪子と為って言うことに、「彼は良医だ。懼らくはわれわれ傷つけるだろう。どこに逃げたらいいだろうか。」と。其の一が言うことに。「横隔膜の上、心臓の下に逃げ込めば、我々どうしようか(どうしようもないだろう)と。
医者の緩が来る。言うことに、「疾は治療することが出来ない。横隔膜の上、心臓の下に病巣があり、之を治療することが出来ないのだ。」と。
恵公は夢の通りだったので、「なるほど名医だ。」と言い、厚くお礼を与え国に返した。
三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 膏肓 2 恵公 3 秦国 4 竪子 5 秦伯 6 焉 7 若 何
四 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 病入膏肓
2 疾病
3 良医
4 竪子
五 二重線部1〜5の文法問題に答えよ。
1 使
2 未
3 焉
4 若 何
5 不 可
六 傍線部1〜10の問いに答えよ。
1、5、7、8、10 それぞれ指示内容を記せ。
2 誰のことか。
3 夢の内容はどこかどこまでか。
4 どういうことか。
6 同じことを言っている個所を抜き出せ。
9 認めたのはなぜか。
重病 秦に医者を求めた。 夢を見る。 子供「あれは名医だ。どこににげるか?」 子供「横隔膜の上、心臓の下。」 「名医だ。」お礼をし、帰す。 |
晋 景公(君主 |
医者の緩に治療させる。 秦に行く。 「診察できない。横隔膜の上、心臓の下に病巣 がある。不可能だ。針も届かず、薬も届かない。」 |
秦 秦伯(君主) 医緩(医者) |
主題 原義―病気が非常に重く、治療のしようがないこと。
転義―癖や好みの直しようもなく深いこと。
解答
一 晋の恵公疾病なり。医を秦に求む。秦伯医の緩をして之を為めしむ。未だ至らず。公夢みる。疾、二竪子と為りて曰く、「彼は良医なり。懼らくは我を傷つけん。焉にか之を逃れん。」と。其の一曰く、「肓の上、膏の下に居らば、我を若何せん。」と。
医至る。曰く、疾は為むべからず。肓の上、膏の下に在り。之を攻むるも可ならず。之を達せんとするも及ばず。薬は至らず。為むべからず。」と。
公曰く、「良医なり。」と。厚く之が礼を為して之を返す。
三 1 こうこう 2 けいこう 3 しんこく 4 じゅし 5 しんぱく
6 いず 7 いかん
四 1 病気が進行して治療のできないこと。
2 疾病―やまい。疾―やまい 病気。急性や悪性の病気。軽い。病―へい 病気が重くなる。重い。
3 よい医者。 4 子供。
五 1 使役 使AB AをしてBせしむ AにBさせる
2 再読文字 いまだ〜ず まだ〜ない 3 疑問 いずくにか どこに〜か
4 反語 いかんせん どうすることができようか(いやできはしない)
六 1 景公の病気。5 医緩の治療。 7 景公の病気。 8 膏肓。 10 医緩の治療。
2 景公。 3 「疾為二〜若我何」 4 病気を退治すること。
6「在膏上肓下」
9 病巣がある場所を景公が夢で見た通りに診断したから。