タニ シ ヲ メテ リ
@ 香 炉 峰 下 新 A卜 山 居、草 堂 初 成
ニ 一
ス ニ
偶 題 東 壁
二 一
白 居 易
語釈
ク レドモ ホ シ クルニ ニ ネテ ヲ レ ヲ
日 高 睡 足 猶B 慵 起 C 小 閣 重D 衾 不 怕 寒
レ レ レ レ
ノ ハ テテ ヲ キ ノ ハ ゲテ ヲ ル
E 遺 愛 寺 鐘F 欹 枕 聴 香 炉 峰 雪G 撥 簾 看
レ レ
ハ チ レ ルルノ ヲ ハ ホ リ ルノ ヲ
1H 匡 廬 便 是 逃 名 地 2I 司 馬 仍 為 送 老 官
レ レ
ク キハ レ スル ゾ リ ルノミナランヤ ニ
心 泰 身 寧 是3J帰 処 故 郷 1何 2独 在 長 安
二 一
(注)@香炉峰 江西省にある廬山の高峰の一つ。A卜 (家を建てるために)地相を占って。B慵 だるい。C小閣 小さな家。D衾 ふとん。E遺愛寺 香炉方の北にある寺。
F欹枕 枕にもたれる。G撥 はねあげる。H匡廬 廬山の別名。I司馬 ここでは、左遷されたものだけが就く名前だけの閑職。J帰処 身を落ち着けるところ。
一 詩について。
1 形式
2 韻字
3 展開の仕方
4 対句
二 書き下し文にせよ。
第一句
第二句
第三句
第四句
第五句
第六句
第七句
第八句
三 口語訳
第一句 日が高くのぼり、睡眠は十分だがそれでもまだ起きるのがおっくうだ。
第二句 小さな家だが、掛け布団を重ねているので寒さの心配はない。
第三句 遺愛寺の鐘の音を寝ながら枕を傾けて聞き入り、
第四句 香炉峰のを簾を巻き上げて眺める。
第五句 廬山の地こそまさに俗世間の名利から逃れるのにふさわしい土地であり、
第六句 司馬の官はなんといっても老後を送るのにふさわしい役職である。
第七句 身も心も安らかでいられるところこそ、人が身を落ち着けるべき場所である。
第八句 故郷はどうしてただ長安だけにあろうか(いや、そうとは限らない)。
四 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 香炉峰 2 山居 3 白居易 4 小閣 5 衾
6 遺愛寺 7 簾 8 匡廬 9 司馬 10 仍
五 次の1〜の語の意味を辞書で調べよ。
1 山居
2 草堂
六 傍線部1〜3の問いに答えよ。
1 なぜ「逃名地」になるのか。
2 なぜ「送老官」になるのか。
3 どこでの生活か。
構成
第一句 睡眠十分 草堂の生活 頸
第二句 寒くない
第三句 鐘の音 頷
第四句 雪
第五句 静かな地 左遷の身 頚
第六句 閑職
第七句 安らか 尾
第八句 長安だけではない
主題 悠々自適な生活における平静な心境
解答
一 1 七言律詩 2 寒 看 官 安 3 首 頷 頸 尾 4 第三句と第四句 第五句と第六句
二 第一句 日高く睡り足れども猶起くるに 慵し 第二句 小閣衾を重ねて寒を怕ず
第三句 遺愛寺の鐘は枕を欹てて聴き 第四句 香炉峰の雪は簾を撥げて看る
第五句 匡廬は是れ名を逃がるるの地 第六句 司馬は仍ほ老いを送るの官為り
第七句 心泰く身寧きは是れ帰する処 第ハ句 故郷何ぞ独り長安に在るのみならにゃ
四 1 こうろほう 2 さんきょ 3 はっきょい 4 しょうかく 5 ふすま 6 いあいじ
7 すだれ 8 きょうろ 9 しば 10 な
五 1 山中の住居。 2 自分の家を謙遜して言う。
六 1 廬山は清浄な地で、名利を求めるこころがきえるから。
2 司馬は閑職で気ままな生活ができるから。 3 香炉峰下の草堂の生活。
参考
雪のいと高う降りたるを(第二百九十九段) 枕草子
雪のいと高う降りたるを、@例ならずA御格子参りて、B炭櫃に火おこして、物語などして集まり侍ふに、「少納言よ、C香炉峰の雪いかならむ。」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。 人々も、「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそよらざりつれ。なほ、Dこの宮の人にはE、さべきなめり。」と言ふ。
口語訳
雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもと違って御格子をお下げ申して、角火鉢に火をおこして、雑談などをして集まって思考しているときに、「少納言よ、香炉法の雪はどんなだろうか。」とおっしゃるので、御格子を(人に)上げさせて(私が)御簾を高く上げたところお笑いになる。 人々も「そういうことは知っており、歌などにまで詠うけれど、おもいつきもしなかった。やはり、この中宮にお仕えする女房としてはそれにふさわしい人であるようだ。」と言う。
(注)@例ならず いつもと違って。A御格子参りて 御格子をお下げもうしあげて。B
B炭櫃 角火鉢。C香炉峰の雪 『白氏文集』の句(128ページ)。Dこの宮の人
この中宮にお仕えする女房としては。Eさべきなめり それにふさわしい人であるようだ。