桃花源@記 

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語釈                                     陶 潜

        ノ                   ノ           ラフルヲ ヲ  ス   ト

  A晋 B太 元 中、 C武 陵 人 1捕 魚 為 業。

                                         レ      レ

    リテ ニ   キ    ル          ヲ   チ  フ    ノ  ニ

D縁 渓 行、2忘 路 之 遠 近。 忽 逢 桃 花 林。

    レ            二             一         ニ          i

    ムコト ヲ                  ニ  シ

E 岸 3「数 百 歩、中 無 雑 樹。

    レ                         二      一

                              タリ

芳 草 鮮 美、F落 英 繽 紛。

           ダ  トシ  ヲ     t   ミ  キテ  ス   メント ノ   ヲ

漁 人 4甚 異 之。 復 前 行、欲 窮 其 林。

               レ                   レ   二      一

     キ       ニ     チ  タリ      ヲ

林 尽 水 源、 便 得 一 山。

      二     一          二      一

  ニ   リ             トシテ    シ  ルガ  

山 有 小 口、髣 髴 1 有 光。

      二      一            レ   レ

 

 チ  テ   ヲ    リ     ル

便 捨 船、従 口 入。

      レ      レ

 

(注)@記 文体の一種。事実をありのままに述べるもの。A晋 東晋(317〜420年。)。B太元 孝武帝の時の年号。276〜296年。C武陵 今の省常徳市 。D縁渓 谷川に沿って。E夾岸 河の両岸。F落英 地理落ちる花びら。

 

一 書き下せ。

 

二 口語訳。

晉の太元年間のこと、武陵の人で、魚取りを仕事としている者がいた。(あるとき)谷川に沿って(舟を進めて)行くうちに、どれほどの距離を来たのかわからなくなってしまった。(すると)突然、桃の花の咲く林に出くわした。(桃の林は)岸を挟んで数百歩の間(続いており)、その中にほかの種類の木はない。香しい草が色鮮やかに生い茂り、落花がしきりに乱れ散っている。漁夫はとても不思議に思った。さらに先に進んで、その林を究め尽くそうとした。林が尽きたところに水源があり、すぐそこに一つの山があった。山には小さな洞窟があり、中からぼんやりと光がさしてきているようである。漁夫はそのまま船を捨て、洞窟の入り口から中へ入った。

三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

1 晋 2 武陵 3 桃花 4 忽 5 芳草 6 繽紛 7 漁人 8 便 9 髣髴 10 従 

 

四 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

1 雑樹

 

2 芳草

 

3 繽紛

 

4 髣髴

 

五 二重線部1の文法問題に答えよ。

 

1 若

 

六 傍線部1〜4の問いに答えよ。

 

1 後で何といっているか。

 

2 どういう意味か。

 

3 何が。

 

  何故こう思ったか。

 

5 指示内容を記せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

1解答

 1 晋の太元中、武陵の人魚を捕ふるを業と為す。渓に縁りて行き、路の遠近を忘る。忽ち桃花の林に逢ふ

岸を夾むこと数百歩、中に雑樹無し。芳草鮮落英繽紛。漁人之を甚異とし、復た前み行きて、其林を窮めんと欲す。林水源に尽き 便ち一山を得たり。山に小口有り、髣髴として光有るがごとし。便 捨 船、従 口 入。

三 1 しん 2 ぶりょう 3 とうか 4 たちま 5 ほうそう 6 ひんぷん

  7 ぎょじん 8 すなわ 9 ほうふつ 10 よ

四 1 色々な木。 2 良い香りの草花。 3 花などが乱れ飛ぶさま。 4 ほのかなさま。

五 1 比況 ごとし ようだ

六 1 漁人。 2 道に迷った。 3 桃の林。 4 桃の木だけの幻想的な風景だったので。

  5 「無雑物」

 

 

 

 

 

 

 

 

2 

  メハ  メテ  ク  カニ    ズルノミ ヲ タ   クコト               トシテ    ナリ

初 極 狭、 纔 通 人。復 行 数 十 歩、豁 然 開 朗。土 地 平

                   レ

                  タリ  リ                 

曠、 屋 舎 儼 然。有 良 田 美 池、桑 竹 之 属。 

                       二                           一

             ジ             コユ  ノ  ニ        シ        スル    ノ      ハ

阡 陌 交 通、鶏 犬 相 聞。其 中 1往 来 種 作 男 女 衣 著、

  ク    シ         ノ                  ビニ    トシテ  ラ  シム

悉 1 2外 人 黄 髪 垂 髫、並 怡 然 自 楽。

 

(注)@黄髪 黄色くなった髪。老人。 A垂髫 下げ髪。子供。

 

一 書き下せ。

 

 

二 口語訳。

 洞窟ははじめのうちはとても狭く、ようやく人が通れるだけであった。さらに数十歩進むと、からりと明るく目の前が開けた。土地は平らで広く、家々が整然と並んでいる。よい田畑と美しい池があり、桑や竹の類の植物が生えている。(田畑の間には)東西南北に道が通じており、鶏や犬の鳴き声が聞こえる。その中を人々が往来し、種をまいたり耕作したりしている。男女の衣服は、皆外部の人と同じである。黄ばんだ髪の老人も、髪を束ねて後ろに垂らした幼児も、のんびりとしていて楽しそうである。

 

三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

1 ()纔 2 豁然 3 平曠 4 阡陌  5 鶏犬 

 

四 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

1 豁然

 

2 開朗

 

3 平曠

 

4 阡陌

 

五 二重線部1の文法問題に答えよ。

 

1 如

 

六 傍線部1、2の問いに答えよ。

 

1 主語を記せ。

 

2 誰のことか。

 

 

 

 

 

 

 

解答

2 初めは極めて狭く、纔かに人を通ずるのみ。復た行くこと数十歩、豁然として 開朗なり。土地平曠、屋舎儼然たり。良田美池、桑竹之属有り。阡陌交通じ、鶏犬相聞こゆ。其の中に往来種作する男女の衣著は、悉く外人のごとし。黄髪垂髫、並びに怡然として自ら楽しむ。

三 1 わず 2 かつぜん 3 へいこう 4 せんぱく 5 けいけん

四 1 広々と開いているさま。 2 広々と開けて明るい。 3 平らで広々としているさま。

  4 あぜ道。

五 1 比況 ごとし ようだ

六 1 村人。 2 外国人。

 

 

 

 

 

      テ      ヲ  イ     イニ  キ   フ  ヲ   リテ  タル ニ      フ     ニ  

3 見 漁 人 乃 1大 驚、問 所 従 来。 具 2 3

    二     一           レ  二    一

  チ シテ リ  ニ   ケ  ヲ シテ ヲ  ル  ヲ

便 @要 還 家。4設 酒 殺 鶏 作 食

          レ        レ      レ      レ

         キ   ルヲ       ニ      タリテ     ス

村 中 聞 有 5此 人 咸 来 問 

         レ   二        一

    ラ  フ            ケ            ヲ  ヰテ              ヲ

自 云 「A先 世 避 7秦 時 乱 率 妻 子 邑 人 

                    二                               一

  タリ  ノ     ニ         タ   デ 

来 此 絶 境 1不 復 出 焉。

  二          一    二      一

  ニ                     スト    フ            レ   ノ ゾト     チ     ラ ルヲ

遂 与 8外 人 間  隔。」9 「10今 是 何 世」 乃 不 知 有

      二        一                                           レ   レ

      シ          ニ  ノ              ニ  ニ       フニ  ヲ  ク           ス

漢、無 論 魏 晋。此 人 一 一 為 具 11 所 聞、皆12B 

   レ  二      一                              レ   レ

                 タ   ヰテ   リ   ノ  ニ       ダス      ヲ  マルコト       ニシテ 

13余 人 各 復 C延 至 其 家 皆 出 酒 食。 停  数 日 

 

  シ  ル   ノ   ノ      リテ  フ       ル  ラ   ニ      ン0  フニ

辞 去。此 中 人 語 云 14不 足 為 外 人 道 也。」

                        レ 下  二    一  上

 

(注)@要 来てほしいと迎える。A先世 先祖。B歎惋 嘆息したり驚いたりする。C述 招く。

 

一 書き下せ。

 

二 口語訳。


 村人は漁夫を見ると、大変驚きどこから来たのかを尋ねた。漁夫は詳らかに(すべて)答えた。(すると村人は)そのまま是非にと迎えて(漁夫を)家に連れて帰り、酒を用意し鶏を殺し、食事も作ってもてなしてくれた。村中の人たちはこんな人が村に来ていると聞いて、皆やってきて尋ねる。(その家の主が)自分から言うことには、「私の先祖は、秦の時代の戦乱を避け、妻子や村人を引き連れて、この世間から隔絶した土地にやってきたのですが、それから二度と外に出ませんでした。そのまま、外部の人と隔たってしまったのです」と。そして漁夫に尋ねた。「今はどういう時代なのでしょうか?」と。驚くことに、彼らは漢の時代があったことを知らず、無論のことながら魏や晉も知らないのであった。この漁夫は村人たちのためにいちいち事細かに、自分の聞き知っていることを話してやった。村人たちは皆、びっくりして溜息をついている。ほかの村人も、それぞれにまた自分の家に漁夫を招いて連れて行き、みんな酒食を出してもてなした。漁夫は数日間村に滞在してから、別れを告げることにした。別れの際に、村人の一人が漁夫にこう言った。「外部の人にお話になるほどのことではありませんよ」と。

三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

1 具 2 問訊 3 邑人 4 遂 5 及

 

四 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

1 邑人 

 

2 問訊

 

五 二重線部1の文法問題に答えよ。

 

1 不 復

 

六 傍線部1〜14の問いに答えよ。

 

1 なぜか。

 

2 主語を記せ。

 

3 指示内容を記せ。

 

4 村人の気持ちを記せ。

 

5 指示内容を記せ。

6 主語を記せ。

 

7 暴政で知られる皇帝の名。

 

8 意味を記せ。

 

9 主語を記せ。

 

10 答に当たる部分を記せ。

 

11 主語を記せ。

 

12 どういう理由からか。

 

13 誰が。

 

14 何故こう思ったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答

一 3 漁人を見て乃ち大いに驚き従りて来たる所を問ふ。具に之に答ふ。

便ち要して家に還り、酒を設けて鶏を殺して食を作る。

村中此人有るを聞き咸来たりて問訊す。自ら云ふ「先世秦時の乱を避け

妻子邑人を率いて此絶境に来たり復た出でず。遂に外人と与に間隔す。」と。

問ふ「今是れ何の世ぞ。」と。乃ち漢有るを知らず。魏晋に論無し。

此の人 一一為に具に聞く所を言ふに、皆歎惋す。余人各復た延ゐて其の家に至り皆酒食を出だす。停まること数日にして辞去す此の中の人語りて云ふ、外人の為に道ふに足らざるなり。」と。

三  1 つぶさ 2 もんじん 3 ゆうじん 4 つい 5 すなわ

四 1 村人。住民。 2 尋ねる。

五 1 部分否定 二度とは〜ない 二度とは〜しない

六 1 外部の人に有った事が無いので。

  2 漁人。

  3 どこを通ってkたのかという問い。

  4 歓迎の気持ち。

  5 漁人。

  6 村人。

  7 始皇帝。

  8 外部の人。

  9 村人。

  10 晋。

  11 漁人。

  12 自分たちが外部の動きにいかに無知であったのかが分かったから。

  13 漁人がいることを聞いて集まった人々。

  14 俗世間の人間によって自分たちの平和な村を壊されたくなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4  

  ニ  ヅ    テ  ノ   ヲ  チ   リ       ニ       ニ      ス  ヲ

既 出、得 其 船 便 扶 向 路 1処 処 @誌 之

          二     一       二      一               レ

  ビ        ニ   リテ     ニ   クコト   シ  ノ

及 A郡 下 詣 太 守 説 1 此。

  二        一   二      一         レ

            チ    メシモ ヲシテ ヒテ   レニ  キ  ネ   ニ   ヲ  シシ    ニ  ヒテ      タ

B太 守 即 2 人 随 2 往 尋 向 所 誌、3遂 迷 3不 復

                 三       レ           ニ       一レ                ニ

      ヲ 

 

  一レ

(注)@誌 目印を付ける。A郡下 郡役所のある所。B太守 郡の長官。

 

一 書き下せ。

 

二 口語訳。

4 まもなく(漁夫はこの村を)出て、自分の船を見つけ、そのまま元来た道に沿って帰り、(帰る途中)あちらこちらに目印をつけておいた。郡の役所が置かれている町につくと、郡の長官のところへ行き、かくかくしかじかでしたと自分の体験したことを話した。長官はすぐに部下を派遣して、漁夫の行くのについて行かせ、先に印をつけたところを捜させたが、そのまま迷ってしまって二度とその道を捜し出すことはできなかった。

 

三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

1 既 2 扶 3 郡下 4 詣 5 則

 

四 二重線部1〜3の文法問題に答えよ。

 

1 如

 

2 遣

 

3 不 復

 

五 傍線部1〜の問いに答えよ。

 

1 何のためか。

 

2 指示内容を記せ。

 

3 なぜか。

 

 

 

 

 

解答

一4 既に出づ。其の船を得て便ち向の路に扶り処処に之を誌す。

郡下に及び太守に詣りて説くこと此のごとし。

太守即ち人を遣めしも其れに随ひて往き誌しし所を尋ねしめしも、遂に迷ひて復た路を得ず。

三 1 すで 2 よ 3 ぐんか 4 いた 5 すなわ

四 1 比況 ごとし ようだ

  2 使役 遣AB AをしてBせしむ AにBさせる

  3 部分否定 復た〜ず 二度とは〜ない

五 1 再び村を訪ねようと思ったため。

  2 漁人

  3 村人の願いを無視し、欲を出したため。

 

 

 

 

 

 

 

@  南 陽 A劉 子 驥、高 尚 士 也。

聞 1、欣 然 規 往。1 果。B尋 病 終。

後 遂 無 問 津 者。

 

 

(注)@南陽 今の河南省南陽市。 A劉子驥 名は麟之。当時の隠者。B尋 まもなく。

 

一 書き下せ。

 

二 口語訳。

5南陽の人、劉子驥は、俗世を超越した(人格の高潔な)人であった。(彼は、)この話を聞いてとても喜び、その地に行くことを計画した。しかし、志を果たさぬまま、まもなく病死した。その後、桃源郷への道を捜し出そうとする人はいないままである。

 

三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

1 南陽 2 劉子驥  3 高尚 4 欣然 5 往

 

四 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

1 高尚

 

2 欣然

 

五 二重線部1の文法問題に答えよ。

 

1 未

 

六 傍線部1〜の問いに答えよ。

 

1 指示内容を記せ。

 

 

解答

一 南陽の劉子驥は、高尚の士也。之を聞き、欣然として往かんことを。

未だ尋いて病みて終はる。後遂に津を問ふ者無し。

三 1 なんよう 2 りゅうしき 3 こうしょう 4 きんぜん 5 ゆ

四 1 程度が高く上品なこと。 2 喜び楽しむ様。

五 再読文字 未だ〜ず まだ〜ない 

六 1 桃源郷の話。

 

構成

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5 

 

審 大元中

谷川

桃花の村

村に水源

山に入り口

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時・場所

 

武陵の人

職業=漁師

分からない

不思議と思う

入っていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答える        →

 

 

 

 

 

詳しく話す      →

 

 

 

 

船に乗り目印をつける

長官に話す

長官=探させるがだめ

 

劉子驥=行こうと思う

    病死する

渡し場を尋ねるものはいない

漁人

 

 

 

 

 

 

 

狭い 数十歩

土地は平らで広い

家は

整っている

良田 美池

桑・竹がある

鶏犬の鳴き声

農耕をしている男女

老人と子供は楽しそうに遊んでいる

 

←「どうしてきた?」

 

←もてなす

←「先祖は秦の時代の乱を避け、こ

の人里離れたところにきた。外

に出ない。」

←「今はどんな?」

  漢・魏・晋を知らない

←驚く

←「外の人に話すな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃源郷

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主題 桃源郷(ユートピア)