処知則難

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                             説難

語釈

            の7        ス   タント  ヲ

昔―者 @鄭 武 公 欲 伐 A胡。

                       レ  レ

  ニ  ヅ   テ   ノ   ヲ  アハセ     ニ   テ マラシム ノ   ヲ 

故 先 以 其 女 妻 胡 君、以 娯 其 意。

                     二      一       二      一

リテ  フ          ニ   ク         ス    ヰント ヲ     カ  キ   ツ  ゾト
因 問 於 群 臣 曰、「吾 欲 B用 兵。1誰 可 伐 者。」

      二         一             レ  レ               レ   レ

ヘテ  ク       シ   ツ    
大 夫 関 其 思 対 曰、「胡 可 伐。」

                                  レ

リテ      シテ ヲ   ク     ハ          
武 公 怒 而 戮 之 曰、「胡 C兄 弟 之 国 也。

                   レ    

       フハ  テト    ヲ   ゾ  ト

 言 伐 3 何 也。」

レ     

キ     ヲ   テ  ヲ  シ   シムト   ニ   ニ      ヘ   ニ
胡 君 聞 4、以 鄭 為 親 5、遂 不 備 鄭。

ヒテ  ヲ   ル   ヲ

鄭 人 襲 胡 取 之。

レ            レ

ニ    リ             フリ      ル   ノ      ク
宋 有 富 人。天 雨 牆 壊。其 子 曰、

     二      一     

   ンバ  カ  ズ     ニ  ラント        ノ            モ       フ

 

「不 築、必 2 有 盗。」其 隣 人 之 父 亦 云。

    レ            レ                      

 レニシテ    タシテ イニ  フ   ノ   ヲ ノ       ダ  トシテ  ノ  ヲ      ヘリ          ヲ   

暮 而 果 大 亡 其 財。其 家 甚 智 其 子而 疑 隣 人 之 父。

二      一             ニ      一     二             一

    ノ      ハ   ク       タレリ      キ   ハ    レ    セ    キ  ハ         ハ

此 二 人 、説 皆 当 矣。D厚 者 3 戮、E薄 者 4 疑。

レ                  レ

  チ  ザル         キニ         スルコト  チ   キ

則 非 知 之 難 也、7処 知 則 難 也。
(注)@鄭武公 東周初年のころの鄭の君主。A胡 北方の夷野句に。B用兵 軍事行動を起こす。C兄弟之国 婚姻関係を結んだ国。D厚者 ひどい場合。E薄者 軽い場合。

 

一 書き下せ。

 

二 口語訳。

昔、鄭の武公は胡を征伐しようとした。
その為、まず娘を胡の君主に嫁がせ、そうすることで胡の君主の心証を良くしておいた。
そして、群臣にこう聞いた、「私は戦争をしようと思う。どこを征伐するのが良かろうか。」
大夫の関其思がこう答えた、「胡を、征伐なされるべきです。」
武公はこれを聞くと怒り、大夫関其思を殺してこう言った、
「胡は兄弟のような国だ。そうであるのに、これを征伐せよというのは、何事か!」
胡の君主は、このことを聞いて、鄭が自分たちに親しいと考えそれから鄭の侵攻に対する備えをしなくなった。
鄭人はその隙に胡を襲って占領した。

宋にある富豪がいた。雨が降って、家の塀が崩れた。
その家の子はこう言った、「塀を築きなおさなければ、必ず盗みに入られるだろう。」
また、隣家の父も同様なことを言った。日が沈んで夜になると、やはり、多くの財産を盗まれてしまった。
その家の人は、その子を相当に賢いと褒め称えたが、隣人の父に関しては、怪しいと考えた。
この鄭の大夫と、隣家の父との二人は、意見は全て正しいのに、ひどい場合には殺され、軽い場合でも疑いの目を向けられた。
ということは、知識を得たり本質的に理解したり見分けたりするのが難しいのではなくて、
それらによって得たものをどう処理するかが難しいのである。
だから、繞朝が言ったことは正しく、晋では彼を聖人だと評価したが、秦では死刑にされた。
このようなことについては、考察せねばなるまい。

三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

1 鄭 2 大夫  3 関其思 4 戮 5 遂 6 富人 7 甚

 

四 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

1 処知

 

2 妻

 

3 太夫

 

4 戮

 

5 処

 

五 二重線部1〜の文法問題に答えよ。

 

1 誰

 

2 将

 

3 為

 

4 見

 

六 傍線部1〜7の問いに答えよ。

 

1 武公が「怒」って「戮」したのはなぜか。

 

2、3、4,5、6 それぞれ指示内容を記せ。

 

7 どういうことを言うのか。 

 

構成

 

1 武公 Q「どこをうつか?」

 

  関其思A「胡」 殺される。・・理由 油断させておいて、殺そうとしたため。

 

2 宋の金持ち

 

  息子   「盗人」 利口と思われる

 

  隣家の主人「盗人」 疑われる

 

主題 知った事に対処することの困難さ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答

昔、鄭の武公胡を伐たんと欲す。故に先づ其の女以て胡君に妻せ、以て其の意を娯ましむ。
因りて群臣に問ひて曰はく、「吾兵を用ひんと欲す。誰か伐つべき者ぞ。」と。
大夫関其思対へて曰はく、「胡伐つべし。」と。
武公怒りて之を戮して曰はく、「胡は兄弟の国なり。
子之を伐てと言ふは何ぞや。」と。
胡君之を聞き、鄭を以て己に親しむと為し、遂に鄭に備へず。鄭人胡を襲ひ之を取る。

宋に富人あり。天雨ふり牆壊る。其の子曰はく、「築かざれば、必ず将に盗有らんとす。」と。
其の隣人の父も亦云ふ。暮れて果して大いに其の財を亡ふ。
其の家甚だ其の子を智とし、而るに隣人の父を疑ふ。
此の二人は、説は皆当たる。厚き者は戮され、薄き者は疑はる。
則ち知の難きに非ず、知を処するの則ち難きなり。故に繞朝の言は当たり、其れ晋に聖人と為さるるも、
秦に戮されしなり。此れ察せざるべからず。

 

三 1 てい 2 たゆう 3 かんきし 4 ころ 5 つい 6 ふじん 7 はなはだ

四 1 知を用いる方法。 2 嫁にやる。嫁がせる。 3 広く官位のある者を言う。

  4 ころす 5 切り盛りする。

五 1 疑問 誰か〜 誰が〜か 2 再読文字 将に〜する 〜しようとする

  3 受身 る られる 4 受身 る られる

六 1 胡に親近感を持たせ、油断させて攻めようと考えたため。

  2 関其思。 3 胡。4 胡は婚姻ン関係を結んだのだから攻めないと武公が言ったこと。

  5 胡。 6 関其思。隣の主人。

  7 知ったことに対しどう対処するかということ。