張僧繇の神技をたたえる。
画竜点睛
語釈
〔出典〕 『歴代名画記』
ハ ノ
@
張 僧 繇、A呉 中 人 也。
シ ヲ ク ジテ ニ カシム ニ
A
武 帝 C崇―飾 仏 寺、多 命 僧 繇 画 1之
ニ 一 ニ 一 レ
ノ ノ ハ ゼ ヲ
D金 陵 安 楽 寺 四 白 龍、2不 點 眼 睛。
レ ニ 一
ニ フ ゼバ ヲ チ ビ ラント テ シ ト ク
毎 云、「點 睛 3即 飛 去。」4人 以 爲 妄 誕、固
レ ニ 一
フ ゼンコトヲ ヲ
5請 點 之。
レ レ
ニシテ アリテ リ を リ ニ リテ ル ニ
須 臾 雷 電 破 壁、6両 龍 乗 雲、騰 去 上 天。
レ レ ニ 一
ダ ゼ ヲ ス
二 龍 1未 點 眼 者 E見 在。
レ レ
(注)@張僧繇 生没年未祥。南朝梁の人。A呉中 今の江蘇省蘇州市。B武帝 502〜549年在位。南朝梁の初代皇帝。C崇飾 立派に飾り立てる。D金陵 梁の都。今の江蘇省南京市。E見在 現在も存在する。
一 書き下せ。
ニ 口語訳
張僧繇は呉中の人である。武帝は仏寺を美しく飾る為に、多くを僧繇に命令して仏寺に絵を描かせた。金陵の安楽寺の四匹の竜はひとみを描き入れない。いつも言う、「もしひとみを描き入れたらすぐに飛び去るだろう。」と。人はそれゆえでたらめと見なして、頑なに相手に求めてひとみを描き入れさせた。たちまちにして雷と稲妻が壁を破り、2匹の竜は雲に乗り、躍り上がって天にのぼった。2匹の竜でまだひとみを描き入れていない竜は、現在もいる。
三 次の語の読みを記せ。
1 画竜点睛 2 崇飾 3 金陵 4 眼晴 5 毎 6 云 7 則
8 妄誕 9 須臾 10 雷電 11 騰
四 次の語の意味を調べよ
1 画竜点睛
2 眼晴
3 妄誕
4 須臾
5 雷電
五 次の文法事項に答えよ。
1 未
六 次の傍線部の問いに答えよ。
1 指示内容を記せ。
2 その理由を説明せよ。
3 (1)この語を用いて同じ意味の熟語を三つ作れ。
(2)同じ意味で用いられている塾ぐぉ抜き出せ。
4 何が「妄誕」なのか明らかにして口語訳せよ。
5 この後にはどういう内容が省略されているか。
6 どういう竜か。
構成
安楽字の四匹の竜
目を描かない 張僧繇「目を描けば飛び去る
人 「うそだ。」「描け」
目を描いた 二匹―点に去る
目を描かない二匹―寺に残る
張僧繇の神技をたたえる。
張僧繇の神技をたたえとともに仏法の功徳をたたえる。
画両転晴 原義 達を描いて瞳を書き入れる。
転義 最後の大切な所に手を加えて物事を完成すること。
解答
一張僧繇は、呉中の人なり。武帝、仏寺を崇飾するに、多く僧繇に命じて之を画かしむ。金陵の安楽寺の四白竜は、眼睛を点ぜず。毎に云う、睛を点ぜば即ち飛び去らん、と。人、以て妄誕と為し、固く請いて之を点ぜしむ。須臾にして雷電壁を破り、両竜雲に乗り、騰去して天に上る。二竜未だ眼を点ぜざる者は、見に在り。
三 1 がりょうてんせい 2 すうしょく 3 きんりょう 4 がんせい 5 つね
6 い 7 すなわ 8 もうたん 9 しゅゆ 10 らいでん 11 おど
四 1 最後の大切なところに手を加えて物事を完成するもののたとえ。
2 目玉。ひとみ。
3 うそ。いつわり。
4 sばらく。少しの間。
5 雷と稲妻。
五 1 再読文字 未だ〜ず まだ〜ない
六 1 仏寺。
2 瞳を入れたら飛び去ると思ったから。
3 (1)即時 即刻 即座 (2) 須臾
4 人々は画龍が飛び去るのをうそだと
5 張僧繇が「竜の瞳を書き入れると飛び去る」といったことを確かめる。
6 眼晴を描きいれた二つの竜。