愛 蓮 説

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語釈

                        キ   ス      ダ   シ

水 陸 草 木 之 花、可 愛 者 甚 蕃。

  ノ          ハ  リ   ス   ヲ

晋 陶 淵 明 独 愛 菊。

                     レ

 リ                     ダ   ス      ヲ

自@李 唐 来、世 人 甚 愛 牡 丹。

   二     一                  二      一

    リ   ス          デテ     ヨリ           マラ

予 独 愛 蓮 之 出 淤 泥 而 1不 染

          下          二       一        レ 

  ハレテ    ニ            ナラ 

濯 清 漣 而 不 A妖 

   二      一      レ

      ハ  ジ   ハ  ク         アラ     アラ        

2B中 通 外 直、不 蔓 不 枝 

                       レ      レ   

       クシテ     ク        トシテ ク  チ

香 遠 益 清、亭 亭 浄 植

  クシテ    ス        ルヲ  カラ       ス    

可 遠 観 而 6不 可 C褻 玩 焉。   

  二      一        上レ  二        一 

     ヘラク  ハ             ナル

予 謂 菊、花 之 隠 逸 者 也、

      ハ             ナル  

牡 丹、花 之 富 貴 者 也、

    

 

  ハ              ナル     ト

蓮、花 之 君 子 者 也。

       ヲ       スルハ ノ  二   シ  ル   クコト        

 菊 之 愛、陶 後 鮮 有 聞。 

                          レ   レ

  ヲ      スルハ ジキ  ニ           ゾ

蓮 之 愛、同 予 者 2 人。

              レ

      ヲ     スルハ    ナルカナ   キコト     

牡 丹 之 愛 7宜 乎 衆 矣    

周敦頤(1017〜1073年 思想家)

 

(注)@李唐 唐の時代。唐の王朝の姓が李氏であるかあら、このようにいう。A妖 あやしくなまめかしい美しさ。B中通外直 蓮の茎の形状をいう。C褻玩 (近づいて)なれなれしくもてあそぶ。

 

一 書き下せ。

 

 

 

二 口語訳。

 あらゆる花の中には愛らしいものがとても多い。
 晋代の詩人陶淵明は唯一人菊を愛した。唐代より、人々は牡丹を愛でている。
 私は蓮の花の、汚泥から生えるのに穢れのない、清水に洗われても浮ついたところのないのを誰よりも愛している。
 その茎は中が空洞で真っ直ぐに伸び、蔓も枝もない。その香りは離れれば離れるほど芳しく、きれいに真っ直ぐ立っている。遠くから鑑賞することはできても近くに寄って弄することはできない。
 菊とは花の中でも隠遁者だと思う。牡丹は花の富豪、そして蓮は花の中の君子である。
 ああ! 菊を愛する者は陶淵明以後ほとんど聞かない。私と同じように蓮を愛する者がいるだろうか? 牡丹を愛する者はもちろん沢山いるだろう!

 

三 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

1 甚 2 陶淵明 3 牡丹 4 蓮 5 汚泥 6 清漣 7 蔓 8 褻玩 

 

9 隠逸 10 富貴 11 君子 12 噫 13 宜

 

四 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

1 汚泥

 

2 清漣 

 

3 隠逸

 

4 富貴

 

五 二重線部1〜の文法問題に答えよ。

 

1 噫 

 

2 何

 

六 傍線部1〜7の問いに答えよ。

 

1 、2、3、4、5、6 それぞれどういう事態をいっているか。また、どういうことをたとえているか。

 

7 こういう理由は何か。 

 

構成

 

人    花  特色  好む人

 

陶淵明  菊  隠逸  いない 

 

世人   牡丹 富貴  多い

 

 

予    蓮  出淤泥而不染  濯清漣而不妖  中通外直  不蔓不枝  香遠益清,

        亭亭浄植    可遠観而不可褻玩焉

 

        君子  何人いるか?

 

主題 蓮を愛するのは、それが君子のようだからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答

1 

水陸草木の花、愛すべき者甚だ蕃し。晋の陶淵明は独り菊を愛す。李唐より来世人甚だ牡丹を愛す。  

予独り蓮の汚泥より出でて染まらず、清漣に濯はれて妖ならず、中は通じ外は直く蔓あらず枝あらず、    

香遠くして益清く亭亭として浄く植ち遠観すべくして褻玩すべからざるを愛す。

2。   

予謂へらく、菊は花の隠逸者なり、牡丹は花の富貴なる者なり、蓮は花の君子なる者なり。     

噫、菊を之愛するは陶の後に鮮し聞くこと有る鮮し。蓮を愛するは予に同じき者何人ぞ。牡丹を之愛するは

宜なるかな衆きこと。    

三 1 はなはhだ 2 とうえんめい 3 ぼたん 4 はす 5 おでい 6 せいれん

  7 つる   8 せつがん   9 いんいつ 10 ふうき 11 くんし

  12 ああ 13 うべなるかな

四 1 汚泥。2 澄んだ水の表面にたつさざなみ。 

3 世の中の煩わしさから逃れて人目のつかないところへ退く。 4 

五 1 感嘆 ああ ああ 2 疑問 何か 何か

六 1 泥に染まって汚れることがない。 周囲の悪に染まらない。 

  2 中は穴が開いていて、外形はまっすぐ。 心中は道理に通じていて、言行は道理に従って正しい。

   

  3 蔓をはびこらせたり枝を張らせたりしない。利欲のためあちこち手出ししない。

  

  4 香りは遠くにいてもすがすがしく漂ってくる。人柄は遠く離れていても慕われる。

  5 高くそびえ立つ。高潔な人柄がどこからも自然に人に仰がれる。

  6 手でもてあそべない。 徳の尊厳。

  7 大勢いることはもっともなことよ。高貴は世人のあこがれの対象であり、牡丹はそのシンボルとして

見られる花であるから。