(7)十二 同じ心ならん人と
語釈
(1)同じ心なら1む人と、しめやかに物語して、をかしき事も、世の1はかなき事も、@うらなくいひ慰
ま2んこそうれしかるべき3に、2さる人あるまじければ、3露たがはざら4んと向ひ居たら5んは、ただひ
とりある心地やせ6ん。
(2)互に言は7んほどのことをば、「4げに」と聞くかひあるものから、いさゝか違ふ所もあら8ん人こそ、
「我はさやは思ふ」など爭ひ憎(にく)み、「さるから、さぞ」とも うち語らはば、つれづれ慰ま9めと思へ
10ど、げには、少しかこつかたも、我と等しからざら11ん人は、大かたのよしなしごといは12ん程こそ
あら13め、Aまめやかの心の友には、はるかにへだたる所のありぬべきぞ、わびしきや。
(注)@うらなく 隠し隔てなく。Aまめやかの 真実の。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 露 2 慰まめ
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 しめやかなり
2 うらなし
3 げに
4 かこつ
5 わびし
三 傍線部1〜4とAの問いに答えよ。
1 同じような意味の語を抜き出せ。
2 どういう人か。
3 何に「たがはざらん」としているのか。
4 内容を詳しく説明せよ。
A 友人を何種類あげているか、抜き出せ。また、同じ事を言っていると思われるものを結び、一番宵友を
選べ。
四 二重傍線部1〜3の文法問題に答えよ。
1、2、4〜9、11〜13 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
3、8 文法的に説明せよ。
五 口語訳
(1)
心が同じであるような人と、しんみり話しをして、趣あることも、世の無常であることも、隠すことなく言って心を慰めるとしたら、嬉しいはずであるのに、そういう人はいないだろうから、少しでも違わないようにと向かっていたとしたら、一人で居る気持ちがするだろう。
(2)
お互いに言おうとするほどのことを、「なるほど。」と聞く値打ちがあるものの、少しは違うところもあるような人は、「私は、そう思うか(いや思わない)。」ど争い憎み、「そうだから、そうだ。」とも話しあったら、所在ないのも慰むだろうと思うけれど、少し不平を言うことも、自分と等しくないような人は、通り一遍のとりとめもないことを言っているようなうちはいいが、真実の心の友には、はるかに及ばないところがあるはずであるのは、やりきれない。
構成
A
(1) 同じ心の友との話 ―嬉しい
B に 接助 逆説確定 ―そういう人は居ない
同じでない友に逆らわないように対談 ―一人で居るよう
C
(2)多少池を異にしている友と議論 ―面白い
ど 接助 逆説確定
自分と同じでないような人 ―普通一般のとりとめないことを言っているうちはいい。
しかし A
真実の心の友には遠い
主題 同じ心の人は居ない。それ以外の人はあじけない。
真実の友のいない孤独感
(6)十二 同じ心ならん人と 解答
一 1 つゆ 2 なぐさ
二 1 しんみり。 2 心の内を隠さない。 3 なるほど。 4 不平を言う。 5 やりきれない。
三 1 「よしなしごと」
2 「同じ心ならん人」 3 相手の気持ちに。 4 なるほど相手お意見ももっともだ。
四 1 助動む体仮婉 2 助動む体仮婉 4 助動む止意 5 助動む体仮婉 6 助動む体推
7 助動む体意 8 助動む体仮婉 9 助動む体推 11 助動む体仮婉 12 助動む体推
13 助動む已推
3 接助 逆説確定 10 接助 逆説確定