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(6) 一一段 神無月のころ

語釈

 神無月のころ、@栗栖野といふ所を1過ぎて、ある山里に1尋ね入ること侍りしに、は

 

るかなる苔の細道を2踏み分けて、心ぼそく住みなしたる庵2あり。木の葉に埋もるる懸

 

樋の3しづくならでは、4つゆおとなふもの4なし。A閼伽棚に菊・紅葉など折り散ら

 

したる、さすがに住む人のあればなる5べし。4かくてもあられけるよと、あはれに5

 

ほどに、かなたの庭に、6大きなる柑子の木の、枝もたわわに7なりたるが、まはりを

 

きびしく囲ひたりしこそ、6少しことさめて、この木なから8ましかばと7覚えしか

 

 

(注)@栗栖野 現在の京都市山科区の地名。A閼伽棚 仏に供える水や花を置く棚。

 

一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

  1 神無月  2 栗栖野  3 侍り  4 庵   5 懸樋   6 紅葉

  

  7 柑子

 

二 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

  1 神無月

 

  2 懸樋

 

  3 庵

 

  4 つゆ

 

  5 おとなふ

 

  6 かくても

  7 あはれなり

 

  8 懸樋

 

  9 たわわなり

  

10 ことさむ

 

三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜7とA・Bの問いに答えよ。

 

  1 主語を記せ。

 

  2 主語を二通り記せ。

 

  3 二通り解釈せよ。

 

  4 内容を記せ。

 

  5 主語を記せ。

 

  6 なぜか。

 

  7 主語を記せ。

 

 A 季節はいつか。

 

 B 後半で作者の焦点はどこに絞られるか。

 

四 二重線部1〜8の文法問題に答えよ。

 

 1 品詞名 基本形 活用形 活用の種類

 

 2 品詞名 基本形 活用形 活用の種類

 

 3 品詞分解・口語訳

 

 4 (1)「つゆ」意味  (2)何と縁語になっているか。

 

 5 品詞名 基本形 活用形 活用の種類

 

 6 品詞名 基本形 活用形 活用の種類

 

 7 品詞名 基本形 活用形 活用の種類

 

 8 品詞名 基本形 活用形 文法的意味 下に語を補え。

 

五 口語訳

 十月ごろ、栗栖野という所を通ってある山里に尋ねいることがありました時に、遠くまで続く苔の生えた細い道を踏み分けて行くと、寂しい様子で住んでいる草庵がある。木の葉にうずもれる樋のしずくの音のはかは何一つ音を立てるものが無い。閼伽棚に菊や紅葉などの折ってあるのはやはり住む人がいるからに違いない。こんなふうにしても生きていけるのだなあとしみじみ見ていると、向こうの庭に、大きな蜜柑の木で枝もたわむほど実がなっている木の周りを厳重に囲ってあったのは少し興ざめて、この木がなかったならば(どんなによかったろうに)と思われた。

 

構成

 

  神無月の頃

 

  栗栖野を過ぎて、山里に入る。 苔の細道

 

  庵―懸樋・閼伽棚の紅葉―風流

 

  向こうの庭―大きな蜜柑の木 実が沢山なっている 厳しい柵―少し興さめ

 

主題 垣根への幻滅

 

 

 

 

 

 

神無月のころ  解答

一 1 かんなづき   2 くるすの  3 はべ   4 いおり  5 かけい

  6 あかだな    7 こうじ

二 1 十月  2 竹や木を地上にかけ渡して水を導くようにした樋。

  3 草木で作った粗末な仮小屋。  4 1 水滴 2 少しも・・・ない

  5 1 音を立てる  2 訪問する。 6 このようにしても

  7 しみじみした情趣がある。  8今のこうじみかん。

  9 しなうさま。  10 興ざめる。

  三 1 作者。 2 作者。庵の主。その両方。

    3 しずくが音を立てる。人が訪問する。 

4 このように人と交渉のない静寂なところでも。

    5 作者。  6 庵の主人が物欲にとらわれていることを知ったから。

    7 作者。 A 冬。  B 不要な垣根。

  四 1 動 過ぐ 用 ガ上二  2 動 あり 止 ラ変

    3 しづく 名 なら 助動 なり 未 断 で 接助 打 は 係助

    4(1)名「露」 副少しも・・・ない  5 助動 べし 止 推

    6 形動 大きなり 体 ナリ活  7 動 なる 用 ラ四

    8 助動 まし 未 反実仮想