(31)二百九 人の田を論ずる者
@人の田を1論ずるもの、訴へにまけて、ねたさに、「1その田を刈りて取れ」とて、人をつかはしけるに、
まづ、道すがらの田をさへ刈りもて行くを、「2これは論じ2給ふ所にあらず。3いかにかくは。」といひければ
刈るものども、「4その所とても、刈るべきことわり3なけれども、5僻事せむとてまかるものなれば、いづく
をか刈らざら4ん」とぞいひける。
6ことわり、いとをかしかりけり。
(注)@人の田を論ずるもの (自分の所有地だと言って)訴訟であらそっている者。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 訴へ 2 僻事
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 訴へ
2 ねたさ
3 道すがら
4 僻事
三 傍線部1〜6の問いに答えよ。
1 指示内容を記せ。
2 指示内容を記せ。
3 下に略されている言葉を口語で記せ。
4 指示内容を記せ。
5 誰の動作か。
6 どういう点がおかしいのか。
四 二重傍線部1〜4の文法問題に答えよ。
1 品詞名 基本形 活用形 活用の種類
2 敬語の種類 誰が誰を敬うか。
3 品詞名 基本形 活用形 活用の種類
4 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
五 口語訳
他人の所有する田を、訴訟で争っている者が、訴訟に負けて、しゃくに障り、「その田を刈って取れ。」と言って、人を遣わした時に、まず、道を通りすぎながら他の田をさえ刈って行ったので、「これは訴訟で争いなさった所ではない。どうしてそうなのですか。」と言ったので、刈っていた者どもが、「その所といっても、刈ってよい道理はないけれども、道理にあわないことをしようとして参上する者なので、どこを刈らないことがあろうか(いやどこでも刈る)。と言った。
道理はたいそう面白かった。
構成
田の所有権係争 敗訴した人=腹いせに稲を刈らせる。
その家来 =腹いせに関係ない田の稲を刈る。
主題 不当の上に居直った理屈
(31)二百九 人の田を論ずる者 解答
一 1 うったえ 2 ひがごと
二 1 訴訟。」2 しゃくに障る。 3 道を通り過ぎながら。 4 道理に外れた行為。
三 1 訴訟で争った田。 2 道中の田。 3 お刈りになるのですか。 4 訴訟で争った田
5 「刈る者ども」 6 不合理な言葉が、理屈として聞こえ、一種の主人批判と見られた点。
四 1 動論ず体サ変 2 尊 道中にいる人が敗訴した人を 3 形なし已ク活 4 助動む体推