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(18)五十六 久しく隔たりてあひたる人の
語釈

(1)    

久しく隔たりて逢ひたる人の、わが方にありつる事、數々に殘りなく語り續くるこそあいけれ。隔てな

 

く馴れぬる人も、程経て見るは、恥しから1ぬかは。2次ざまの人は、あからさまに立ち出でても、今日

 

りつる事とて、息もつぎあへず語り興ずるぞかし。

(2)

よきの物語するは、人あまたあれ、一人に向きて言ふを、自ら人も聽くにこそあれ。4よからぬ人

 

は、誰ともなく、あまたの中にうち出でて、見る事のやうに語りなせば、皆同じく笑ひのゝしる、いとらう

 

がはし。をかしき事をひても5いたく興ぜぬと、興なき事をひても6よく笑ふにぞ、品のほどはから3

 

れぬべき
(3)
 7人の見ざまのよしあし、才ある人は8の事など9定めるに、おのが身にひきかけていひ出でたる、

 

いとわびし。

 

一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

 1 隔てなく 2 興なき事

 

二 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

 1 あいなし

 

 2 恥づかし

 

 3 あからさまなり

 

 4 あまた

 

 5 おのづから

 

 6 才

 

三 傍線部1〜9の問いに答えよ。

 

 1 (1)なぜか。

    (2)『隔たり』は時間空間のどちらについて言っているか。

 

 2 どのような人か。

 

 3 どのような人か。

 

 4 どのような人か。

 5、6 それぞれどういう人物の特徴が述べられているか、抜き出せ。

 

 7 どの部分に続くか。

 

 8 指示内容を記せ。

 

 9 誰が定めあったのか。 

 

 四 二重傍線部1〜3の文法問題に答えよ。

 

 1〜3 品詞分解 口語訳

 

五 口語訳

(1)

 長い間、隔たっていて会った人が、自分の方にあったことをたくさん残りなく話し続けるのは、興ざめだ。

隔てなく慣れ親しんだ人も、時間がたってあうと、気づまりでないか(いやきづまりだ)。第二流の人は、ちょっと外出しても、今日会ったことと言って、息を継ぐこともできないくらいに話し面白がるものだ。

(2)

 身分高く教養のある人が話をするのは、人は大勢いても、一人に向いて言うようなので、自然に人も聞くのだ。身分教養のない人は、誰と言うこともなく、大勢の中に出て、見ることのように話すので、みな同じように笑い大騒ぎするのは、大変騒々しい。面白いことを言っても、たいして面白がらない、面白くないことを言ってもよく笑うことに、人柄の程度はきっと推測できる。

(3)

 人の風采の良しあしや学問のある人はその学問の事などを批評し合っているのに、自分の身をひいさいにだしたりするは、大層不愉快だ。

 

構成

 

(1)   長い間離れていて会った人=あれもこれも話す。  興ざめ

第二流の人=まくしたてる

 

(2)   身分高く教養のある人=一人に向かって話す   一座の人=傾聴

身分低く教養のない人=誰にともなく作って話す 一座の人=騒ぐ

(3)   風采」・学問を引き合いに出す。         うんざり

 

主題 談話 自己主張の無反省さを批判

 

 

(18)五十六 久しく隔たりてあひたる人の  解答
一 1 へだ 2 きょう

二 1 興ざめだ。 2気づまりである。 3 ちょっと。4 数多く。 5 自然に。

  6 学問。

三 1 自己中心的に無神経に喋りまくる人はたえられなかったから。空間(時間なら回想になる)。

  2 「よき人」よりも教養や品位の劣っている人。 3 身分も高く教養もある立派な人。

  4 教養も低く趣味の良くない人。 5 よき人。 6 次ぎざまの人。 7 定めへるに。

  8 才。9人々。

四 1 助動ず止打 係助詞反語 は係助詞強意 ないか(いや・・・だ)

 2 に助動断なり用 こそ係助詞強意のだ 

3 れ助動る用可 ぬ助動ぬ止 べき助動べし体推 きっと推測できる