(17) 五十五 家の作りやうは
語釈
(1)
家の作りやうは、夏をむねとす1べし。冬はいかなる所にも住ま2る。暑き頃わろき住
まひは、堪へがたき事なり。
(2)
深き水は涼しげなし。淺くて流れたる、はるかに涼し。細かなるものを見るに、遣戸は
蔀の間よりも明し。天井の高きは、冬寒く、ともしび暗し。造作は、1用なき所をつくり
3たる、見るもおもしろく、よろづの用にも立ちてよしと4ぞ、@人のさだめあひ侍りし。
(注)@人のさだめあひ侍りし 人々が評しあったことだ。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 堪へがたき 2 遣戸 3 蔀 4 天井 5 造作
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 むね
2 わろし
3 遣戸
4 蔀
5 明し
6 よし
三 傍線部1の問いに答えよ。
1 「用なき所」を作るのがなぜよいのか。
四 二重傍線部1〜4の文法問題に答えよ。
1〜3 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
4 結びの語 基本形 活用形
五 口語訳
(1) 家の作り方は、夏を主とするべきだ。冬はどういうところにも住むことができる。
暑いころ、よくない住まいは耐えられない。
(2) 深い水は涼しげがない。浅くて流れているのは、遥かに涼しい。細かなものを見てみると、遣戸は蔀の間よりも明るい。天井が高いのは、冬寒く、灯が暗い。建築は用がない所をつくったほうが見ても面白く、色々な役にもたって良いと人々が評し合った。
構成
(1) 家の作り方=夏を主
(2) 例 庭 浅く流れている水 涼しい
建具 遣戸の間 明るい
≦
蔀の間
内部 高い天井 冬寒く灯暗い
部分 実用的でない所 見て面白く役に立つ
主題 住居のあり方
(17) 五十五 家の作りやうは 解答
一 1 た 2 やりど 3 しとみ 4 てんじょう 5 ぞうさく
二 1 主となるもの。 2 よくない。
3 鴨居と敷居のみぞにはめて、左右に開閉する戸。引き戸。4 格子の裏に板をはって雨風や日光を遮るようにしたもの。 5 明るい。 6 よろしい。
三 1 見た目に面白く色々な用にも立つから。
四 1 助動べし止当 2 助動べし止当 3 助動る止可 4 しき体