(15)五十二 仁和寺にある法師
語釈
(1)@ 仁和寺にある法師、年寄るまで、A石清水を拝まざりければ、1心憂くてあ
るとき思ひたちて、ただ一人、1B徒歩2よりまうでけり。C極楽寺・D高良などをみ
て、1かばかりと3心得て帰りにけり。さて、かEたへの人にあひて、 「2年ごろ
思ひつること、3果たしはべりぬ。4聞きしにも4過ぎて、5尊く5こそおはしけれ。
Fそも、参り6たる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、6ゆかしかりしかど、
神へ参るこそG本意なれと思ひて、7山までは見ず。」とぞ言ひける。
(2) 8少しのことにも、先達はあらまほしきことなり。
(注)@仁和寺
にある石清水八幡宮。 B徒歩より。 C極楽寺 男山のふもとにあった、八幡
宮附属の寺。 D高良 極楽寺のとなりにあった八幡宮附属の神社。Eかたへの
人にあひて そばにいた仲間に向かって。Fそも それにしても。G本意 本来の
意志。かねてからの目的。H先達 案内者。指導者。
一 次の1〜7の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 仁和寺 2 石清水 3 徒歩 4 高良 5 心得て
6 本意 7 先達
二 次の1〜の語の意味を辞書で調べよ。
1 心憂し(1)
2 心得(3)
3 年頃(4)
4 おはす(4)
5 ゆかし(5)
三傍線部1〜6の問に答えよ。
1 何がどうだと心得たのか。
2 どういうことを指しているか。
3 実際にはどうだったのか。
4 主語を記せ。
5 何に対する評価か。
6 何を知りたかったのか。
7 山に何があったのか。
8(1)法師の失敗の原因は何処にあると考えられるか。
(2)またそのことに関わっている語句を抜き出せ。
四 次の文法問題に答えよ。
1 、3、4 品詞名 基本形 活用の種類
2 文法的に説明せよ。
5 結びの語 活用形 活用の種類
4 結びの語 基本形
五 口語訳
(1)仁和寺にいた法師が年を取るまで石清水を参拝したことがなかったので、情けなく思ってあるとき、決心してただ一人徒歩で参詣した。極楽寺・高良などを拝んでこれだけと理解して帰ってしまった。そして、仲間に向かって、「長年の間心にかけていたとを果たしました。聞いていた以上に尊くていらっしゃいました。それにしても、
参詣した人が皆山へ登ったのは何ごとがあったのだろうか。知りたかったけれど、神
へ参詣することが本来の目的だと思って、山までは見なかった。」と言った。
2 少しのことにも、案内者はあってほしいものだ。
構成
1 僧 石清水八幡宮参詣
「ただ一人徒歩で。」=失敗の伏線
↓
極楽寺・高良 参詣 =失敗
↓
「年ごろ思ひつること果たしはべりぬ」=念願を果たした満足
↓
「聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ」=感動と得意
↓
「参りたる人ごとに山へ登りしは何事かありけん」=参詣人への疑問
↑
「神へ参るこそ本意なれ」=山へ登った人を批判
2 指導者は必要
主題 指導者の大切さ
(15)五十二 仁和寺にある法師 解答
一 1 にんなじ 2 いわしみず 3かち 4 こうら 5 こころえ
6 ほい Fせんだち
二 1 つらい。 2 理解する。 3 長年の間。 4 いらっしゃる。
5 見たい聞きたい知りたい。
三 1 石清水八幡宮が極楽寺、高良だけだと思った。
2 岩清水八幡宮に参詣したということ。 3 果たしていなかった。
4 仁和寺にある法師。 5 石清水八幡宮。6 人々が山に登った理由。
7 石清水八幡宮。 8 (1)先達を無視した点。
(2) 「ただ一人、徒歩より」)
四 1 形心憂し用ク活 3 動心得用ア下二 4 動過ぐ用ガ上二
2 格方法手段 5 おはしけれおはし已