(13)四十五 公世の二位のせうとに
語釈
公世の二位の1せうとにA1良覚僧正と聞こえ1しは、きはめて腹2あしき人なりけり。坊の
傍らに、3大きなる榎の木のありければ、人、「榎の木の僧正」とぞ言ひける。2この名、しか
るべからずとて3かの木を切ら4れにけり。4その根のありければ、「きりくひの僧正」と言ひ
けり。いよいよ腹立ちて、きりくひを掘り捨てたりければ、5その跡、大きなる堀にてありけれ
ば、「堀池の僧正」ぞ言ひける。
(注)@公世の二位 藤原公世(?−一三0一)。歌人で箏の名手。従二位に叙せられた
のでこう呼ぶ。A良覚僧正 生没年未詳。延暦寺の大僧正で歌人。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 公世の二位 2 せうと 3 良覚僧正 4 傍ら 5 榎の木
6 堀池の僧正
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 せうと
2 腹あし
3 坊
4 しかるべし
5 きりくひ
6 腹立つ
三 傍線部1〜5とA・Bの問いに答えよ。
1 (1)「良覚僧正」のことを記すのに「公世の二位」という兄弟のことにふれたのはなぜ
か。
(2)「良覚僧正」の名と「きはめて腹あしき人」との結びつきはそれだけで読者にユー
モアを感じさせる。なぜか。
2〜5 それぞれ指示内容を記せ。
A この文章を二段落に分けるとすると、第二段落はどこから始まるか。初めの五字で記せ。
B この文章のあとで、「良覚僧正」がさらに堀を埋めてしまったら人々はどうすると考え
られるか
四
1 品詞名 基本形 活用形 文法的意味
2 品詞名 基本形 活用形 活用の種類
3 品詞名 基本形 活用形 活用の種類
4
品詞名 基本形 活用形 文法的意味
五 口語訳
(12)四十五 公世の二位のせうとに
の兄弟で、良覚僧正と申し上げた方は、非常に怒りっぽい人だったと言うことだ。僧坊のすぐそばに、大きな良覚僧正があったので、ひとは、「榎の木の僧正」と呼んだそうだ。このあだ名はけしからんと言って、その木を切ってしまわれたそうである。その根があったので、「切り株の僧正」と言ったそうだ。ますます腹を立てて、その切り株を掘り起こして他へ捨てたところ、その跡が大きな堀のようであったので、「堀池の僧正」と言ったということだ。
構成
五 構成
榎の木 切る 掘る |
良覚僧正 |
←「榎の木の僧正」 ←「切り株の僧正」 ←「堀池の僧正」 |
人々 |
主題 あだ名に立腹する自尊心の強い高僧
似た慣用句 「人の口に戸はたてられない。
(13)四十五 公世の二位のせうとに
解答
一 1 きんよのにい 2 しょうと 3 りょうがくそうじょう 4 かたわ 5 えのき
6 ほりけのそうじょう
二 1 おとこの兄弟。2 怒りっぽい。 3 僧の住まい。 4 適当である。 5 切り株。
6 腹が立つ。
三 1 (1)紹介する時は、相手が知っていることに関わらせて切りだす。公世の二位の方が有名。(2)良覚(名)良く覚る。噂にとらわれない。 人柄(現実)立腹しやすい。感情的。噂にとらわれる。
2「榎の木の僧正」3 榎の木 4 榎の木の根。 5 掘り捨てた跡。
Å 「坊の傍らに」 B また別の名を考え出す。
四 1 助動き体過 2 形あし体ク活 3 形動大きなり体成り活 4 助動る用尊