(10)三十二 九月二十日のころ
語釈
(1) 1九月二十日のころ、ある人に2誘はれ1たてまつりて、明くるまで月見ありくこと2はべりしに、
3おぼし出づる所ありて、案内せさせて3入り4たまひぬ。荒れたる庭の露しげきに、4わざとならぬにほひ、
しめやかにうちかをりて、しのびたるけはひ、いとものあはれなり。
(2)5よきほどにて6出で5たまひぬれど、なほ事ざまの優に7おぼえて、物のかくれよりしばし8見ゐ
たるに、妻戸をいま少し9押し開けて、月10見るけしきなり。やがて11かけこもらましかば、くちをし
からまし。あとまで見る人ありとは、いかでか知らん。12かやうのことは、ただ朝夕の心づかひによるべし。
その人、ほどなく13失せにけりと14聞き6はべりし。
(注)わざとならぬにほひ わざわざ準備したともおもえない香のにおい。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 九月二十日 2 明くるまで 3 案内 4 露 5 優に
6 妻戸 7 失せにけり
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 ありく
2 案内
3 しめやかなり
4 優なり
5 かけこもる
6 くちをし
三 傍線部1〜14の問に答えよ。
1 (1)旧暦でいうとどの季節にあたるか。
(2)「二十日のころ」の月とはどういう月か。
2,3,6,7,8,9,10,11,13,14の主語をそれぞれ記せ。
2 3 6 7
8 9 10 11
13 14
4 何のにおいか,漢字一字で知るせ。
5 適当に説明せよ。
12 (1)「かやうのこと」とはどういうことか,抜き出せ。
(2)(1)にも「朝夕の心づかい」の表れているところがある,抜き出せ。
(3)「かやうのこと」に作者が感じ取っているのはどういう心か。
四 二重線1〜6の敬語について次の表を埋めよ。
構成
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注意 |
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5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
はべり |
たまひ |
たまひ |
おぼし出づる |
はべり |
たてまつり |
語 |
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主語 |
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種類 |
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地の文 会話文 |
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敬意 誰が |
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誰を |
(1)九月二十日の頃 月見をする
家の趣 家の趣=荒れた庭の露・自然な香 趣深い
(2)家の主=客を送り出して月を見る いい
主題 日常の些細な言動からその人の普段の心がけが分かること
例 靴を出船にして入る。 刃物の刃先を自分に向けて渡す。 音が聞こえなくなってから鍵をかける。
五 口語訳
(1)
九月二十日のころ、ある人に誘われ申して、夜が明けるまで月見をして歩き回ることがございました時に、御思い出される所があって、取り次ぎをさせてお入りになった。荒れた庭には露が一面に降りていて、わざわざたいたのでは香気が、しっとり香って、ひっそりしている様子は、たいそうしみじみと趣深い。
(2)
ほどよくお出でなさったけれど、やはり事の様子が優雅に思われて、物に隠れてしばらく見て座っていたときに、妻戸をもう少し押し開けて、月を見る様子だ。すぐ鍵を掛けて家に籠ったならば、残念だっただろう。あとまで見る人があるとは、どうして知ろうか(いた知らない)。こういうことは、ただ、日常の心がけにようだろう。その人は、間もなくなくなったと聞きました。
(10)三十二 九月二十日のころ 解答
一 1 ながつきはつか 2 あ 3 あない 4 つゆ 5 ゆう 6 つまど 7 う
二 1 歩き回る。 2 取り次ぎを求めること。 3 しっとり落ち着いている。 4 優美だ。
5 鍵を掛けて室内に閉じこもる。 6 残念だ。
三 1 (1) 晩秋 (2)更け待ち月 2 ある人 3 ある人 6 ある人 7 筆者
8 筆者 9 その人 10 その人 11 その人 13 その人 14 筆者
4 香 5 供の者が退屈しないころ。
12(1)「 妻戸をいま少し押し開けて、月見る」
(2)「わざとならぬにほひ、しめやかにうちかをりて、」
13 優雅を愛する心。
四
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注意 |
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5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
はべり |
たまひ |
たまひ () |
おぼし出づる |
はべり |
たてまつり |
語 |
|
(出で=ある人) |
(入り=ある人) |
ある人 |
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(誘われ=ある人) |
主語 |
丁寧 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
丁寧 |
謙譲 |
種類 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 会話文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
筆者 |
敬意 誰が |
読者 |
ある人 |
ある人 |
ある人 |
読者 |
ある人 |
誰を |