TOPへもどる

古文へもどる

 

 

    (32)二六二 文言葉なめき人こそ       

語釈

 

(1)@文言葉1なめき人1こそいとにくけれ。A世をなのめに書き流したる言葉の、1にくきこ

 

。 2さるまじき人のもとに、あまりかしこまりたるも、げにわろきことなり。されど、わが3

 

たらむはことわり、人のもとなるさへ、にくく2こそあれ。

 

(2)おほかた、4さし向かひてもなめきは、などかく言ふらむと、5かたはらいたし。まいて、

 

Bよき人などをさ申す者は、いみじうねたうさへあり。7田舎びたる者などの、8あるは、を

 

こにていとよし。

 

(3)9男主などなめく10言ふ、いと悪し。わが使ふ者などの、「何と11おはする」「12

 

たまふ」など 13言ふいと14にくし15ここもとに、「侍り」などいふ文字をあらせばや、と1

 

聞くこそ多かれ。17も言ひつべき者には、「あな、Cにげな、愛敬な。などかう、この言

 

葉はなめき。」と言へば、18聞く人も言はるる人も笑ふ。19かうおぼゆればにや、「Dあまり

 

見そす。」など言ふも、20人わろきなるべし

 

 

(注)@文言葉  手紙の言葉遣い。A世をなのめに  世間というものをいいかげんに考えて。Bよき人  身分の高い人。Cにげな  形容詞「にげなし」の語幹。Dあまり見そす細かいところに目をつけすぎる。「そす」は動作の度が過ぎる意を表す。

 

 

  次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

      田舎        男主      愛敬

 

  次の語の意味を辞書で調べよ。

 

      なめし

 

      げに

 

      ねたし

 

  *と傍線部1〜19の問いに答えよ。

 

      a類集的章段、b日記的章段、c随想的章段のうちどれに分類されるか。     

  

   「にくきこそ」の次にどういう意味の語が略されているか。

 

      「さるまじき人」を説明せよ。切か。

 

      何を「得」るのか。

 

      「さし向か」うとはどうすることを意味しているか。漢字二字の一語で答えよ。

   

  「かたはらいたし」は本文ではどういう意味で使われているか。

 

      「さ」の指示内容を記せ。

 

      会話の言葉が失礼である場合、一般に悪いといっているのに、「田舎びたる者」

        の場合はよいといっているのはなぜか。

 

      「さ」の指示内容を記せ。

 

      (1)「男・主」と取る場合と、(2)「男主」と続ける場合とがある。(3)

        またもし、「をのこ主」となっていたらどうか。三つの場合についてその異動を

        説明せよ。

 

    10、13、16について、誰が誰のことを言い、あるいは誰が聞くのか。次の中か

        ら選べ。

 

          よき人などをさ申す者                使用人        作者

 

    11、12  について、誰が誰に言うのか。

 

    14  (1)なぜ「にく」いのか。

 

          (2)また「のたまふ」をどのように言えば、作者の意にかなうのか。

 

    15  「ここ」の指示内容を記せ。

 

    17  「さ」の指示内容を記せ。 

 

    18  (1)「聞く人」、「言はるる人」はそれぞれどういう人か。

 

          (2)なぜ「笑ふ」のか。

 

    19  これ以下を甲の注釈書には、「私がこう思うせいか『細かい所に目をつけすぎ

          る』などというのも、人聞きが悪いからだろう。」と解釈してある。ところが

          乙の注釈書には、「かうおぼゆればにや」を「(そう言われてみれば)そうだ

          と気がつくからであろうか。『細かい所に目をつけすぎる』などというのも、

          人聞きが悪いからだろう。」と解釈してある。「おぼゆ」の主体は甲・乙それ

          ぞれ誰になるか。

 

    20  「人わろくなるべし」は、誰のことか。

 

         1〜3の文法事項に答えよ。

 

    1〜3の語の結びの語と活用形を記せ。

 

 

 

(4)殿上人・宰相などを、@ただ名のる名を、いささかつつましげならず言ふは、いとかたはな

 

るを、Aきよう、さ言はず、B女房の局なる人をさへ、「あのおもと」「君」など言へば、1めづ

 

らかにうれしと思ひて、ほむること1いみじき。殿上人・君達、C御前よりほかにては、官をの

 

み言ふ。また、御前にては、おのがどちものを言ふとも、2聞こしめすには、などてか、「3まろ

 

」などは言は2。Dさ言は3にかしこく、言はざら4にわろかるべきことかは。

 

 

(注)@名のる名  その人の実名。本名。Aきよう、さ言はず  きっぱりとそんな言い方をしないで。B女房の局なる人  女房の局で使われている侍女。C御前  天皇や中宮の御前をさす。Dさ言はむにかしこく、言はざらむにわろかるべきことかは  「まろが」などというと偉く、そう言わないとまずいというわけでもあるまい。

 

 

  次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

      殿上人        宰相        女房の局        君達       

 

  次の1〜3の語の意味を辞書で調べよ。

 

      殿上人         

 

      宰相

 

      かたはなり

 

 

三 傍線部1〜3の問いに答えよ。

 

      (1)「めづらかにうれしと思」う主語は誰か。

 

        (2)なぜ「うれし」と思うのか。

 

      「聞こしめす」の主語は誰か。

 

      (1)天皇や中宮の前では自分のことを「まろ」と言ってはいけないとあるが、

              現代語にあてはめてみた場合、「まろ」はどのような自称語にあたるか。

       

(2)このようなときには、「まろ」にかわってどのように言えばよいのか。

 

  二重線部1〜4の文法事項に答えよ。

 

      結びの語            活用形

 

      文法的意味

 

      文法的意味

 

      文法的意味

 

五 口語訳

(1)

手紙の言葉遣いが不作法な人こそ大層しゃくに障る。世間をいい加減に書き流している言葉がしゃくに障る。かしこまる必要もない人のところへあまりかしこまっったのもいかにもよくない。しかい、じぶんが(そういう手紙を)受け取ったとしたら当然人の本へ来たのさえしゃくに障る。

(2)

大体、対話していても不作法なのはづしてこういうのだろうとそばで見聞きをしていてもたえられない。まして、身分お高い人を不作法に申す人は、ひどく忌々しくさえある。田舎者などが、不作法であるのはおろかであるから大層よい。

(3)

男主人などを不作法に言うのはひどくよくない。自分が使っている人などが「どうこでいらっしゃる。」「おっしゃる。」などと言うのはひどくしゃくに障る。このあたりに「侍り」となどと言う文字をあらせたいと聞くことが多い。そうもいうような人々は「ああふさわしくない。どうしてこうこの言葉は不作法なの。」と言うと、聞く人も言われる人も笑う。こう思うせいだろうか。「細かいところに目をつけすぎる。などというのも体裁が悪いからだろう。

(4)

殿上人・宰相などをその人の本名を少し無遠慮に言うのは大層見苦しいことで、きっぱりとそんな言い方を言わないで、女房の局で使われている侍女をさえ「あのお方。」「君。」などというと珍しく嬉しいと思って大層ほめてくれる。殿上人、君達御前より他の所では官名だけを言う。また御前では自分の友人が物を言うとも、お聞きなさるときには、どうして「わたしが。」などと言おうか(いわない)。そういうと偉く、そう言わないとまずいというわけでもあるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

構成

 

(1)

 

 

 

(2)

 

 

 

(3)

 

 

 

 

 

(4)

手紙用語

 

 

 

話し言葉

 

 

 

敬語

 

 

 

 

 

人の呼び名

言葉遣い

1不作法

2丁寧に書く必要のない人に丁寧に

 

1不作法

2身分高い人に不作法

3田舎者が不作法

 

1男主人に召し使いが不作法

2男主人に召し使い尊敬

 

言葉遣いを注意する

  された人=笑う 批判する

 

1殿上人・参議に実名

2侍女に「あの方」「君」

3殿上人や若殿方に官名のみ

    (御前以外)

4御前 「まろ」と言わない

語の使い方

わるい

 

 

たえない

いまいましい

ばかげていてよい

 

よくない

気にいらない

 

 

 

 

見苦しい

うれしい

 

感想

 主題 その場にふさわしい緊張と配慮に欠ける言葉を非難

 

 

 

 

 

 

 

 

 (32)二六二 文言葉なめき人こそ   解答

(1)(2)(3)一 いなか 2 おとこしゅう 3 あいぎょう

 二 1 不作法だ。 2 いかにも 3 いまいましい。

三 C 1 「あれ」 2 それほどかしこまる必要もない人。 3 「文言葉なめき」手紙

4 対話 5 側で見聞きするに堪えない。 6 「なめく」 

7 田舎者の場合には素朴さの反映でかえって愛嬌だから。

8 「なめく」 9 (1)夫と主人 (2)男主人 (3)下男が主人と

10 ウがイのことを 13 ウがイのことを 16 エ

11、12 自分の召使いが客に対して

14(1)「のたまふ」は「言ふ」の尊敬語であって、自分の主人のことを目上の谷に尊敬語で表現するのは誤りだから。(2)「申し侍り」 15 自分の夫などについて人に話す場合。

17 「あな、にげな、愛敬な。などかう、このことばはなめき。」

18(1)「聞く人」清少納言が「あなにげな。などかうこの言葉はなめき。」と注意するするのを傍らで聞いている人」 「言はるる人」清少納言から注意を受けている人。 

(2)痛いところをつかれてきまりが悪く照れ隠しに苦笑する。

19 甲 作者 乙 注意された人 20 言われた人にとって。 

四 1 にくけれ 已 にくし 2 あれ 已 あり 3 多かれ 已 多し

 

(4)一 1 てんじょうびと 2 さいしょう 3 にょうぼうのつぼね 

4 きんだち 5 つかさ

二 1 いみじき 体 いみじ 

2 助動む体推 3 助動む体仮定 4 助動む体仮