(29)
三一七 八月つごもり
語釈
八月つごもり、@太秦に詣づとて見れば、1穂にいでたる田を、人いと多く見騒ぐは2稲刈るな
りけり。3早苗取りしかいつのまに、まことにCさいつころ、賀茂へ詣づとて4見し1が、2はあ
れにもなりにけるかな。5これは男どもの、いと6赤き稲の、本ぞ7青きを持たりて刈る。8何に
かあらむして本を切るさまぞ、やすげに、9せまほしげに見ゆるや。
いかで10さすらむ、穂をうち敷きてD並み2をるも、をかし。E庵のさまなど。
(注)@太秦 今の京都市右京区太秦にある広隆寺。A穂にいでたる 穂が伸びて実を結んでいる。B早苗取りしかいつのまに 『古今集』に「昨日こそ早苗取りしかいつのまに稲葉そよぎて秋風の吹く」(秋上 よみ人知らず)とある。Cさいつころ つい先だって。前段の「賀茂へ参る道に」参照。D並みをる 並んで座っている。E庵 田のかたわら
の仮小屋。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 太秦 2 詣づ 3 穂 4 早苗
5 並む
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 詣づ
2 やすげなり
3 せまほしげなり
三 Aと傍線部1〜10の問いに答えよ。
A a類集的章段、b日記的章段、c随想的章段のうちどれに分類されるか。
1 どういう「田」をいっているか。
2 どういう気持ちか。
3 作者のどういう気持ちが表れているか。
4 何を見たか。
5 何に対して「これ」といったのか。
6 、7 現代の色ではそれぞれ何色か。
8 「何にかあらむ」は、具体的に何をさすか。漢字一字で答えよ。
9 誰が何を「せまほしげ」に思ったか。
10 指示内容。
四 1・2の文法事項に答えよ。
1 文法的意味。
2 活用の種類
活用形
五 口語訳
八月末、太秦に参詣するとき見ると、穂が伸びて、実を結んでいる田を人が大層多く見て騒ぐのは稲刈りをするのであった。早苗を取ったのはいつのことか本当につい先だって、賀茂へ参詣するとき見たが、もうこんなになったとは感無量だ。稲刈りは男達が大層黄色い稲の本が緑のを持って刈っている。何か知らないもので本を切る様子はたやすそうでして見たいように見える。どうしてそうするのだろうか。穂を敷いて並んで座っているのも趣深い。仮小屋の様子など。
構成
主題 |
作者の目 |
行動 |
主役 |
行き先 |
時期 |
項目 |
田植えへの関心 |
よく知らぬ経験 |
田植えする |
女達 |
賀茂(都の東北) |
田植えの頃 |
賀茂へ参る道に (28)一二六 |
稲刈りへの関心 |
よく知らぬ経験 |
稲を刈る |
男達 |
太秦(都の西南) |
稲刈りの頃 |
八月つごもり (29)三一七 |
(29)
三一七 八月つごもり 解答
一 1 うずまさ 2 もう 3 ほ 4 さなえ 5 な
二 1 お参りする。 2 たやすSをうだ。 3 ・・・したい。
三 1 稲先に実を結んだ稲田。 2 始めて気がついた感動。
3 稲の生育の早さに今更のように気づいた気持ち。4 田植え。
5 田植えは女であったのに対して稲刈りは。 6 黄色 7 緑 8 鎌
9 清少納言が稲刈りを。 10 「鎌をうち敷きて並みをる」
四 1 格助 主格 2 動ラ変をり体