(18)一三〇 九月ばかり、夜一夜
語釈
九月1ばかり、夜一夜降りあかし2つる雨の、今朝はやみて、朝日の花やかにさしたるに、前栽の菊の露、
こぼる3ばかり@ぬれかかりたるも、いとをかし。透垣、羅文、薄などの上に4かいたる蜘蛛の巣の、こぼれ
殘りて、所々に糸も絶えざまに雨のかかりたるが1白き玉を貫きたるやうなるこそ、いみじうあはれにをかし
けれ。
すこし日たけぬれば、「2萩などのいとおもげなりつるに、露の落5つるに枝のうち動きて、人も手ふれぬに
ふと上樣へあがりたる、いみじういと3をかしといひたること人の心地には、つゆ4をかしからじと思ふこそ
5また6をかしけれ。」
(注)@ぬれかかり 「ぬれわたり」と同意。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 九月 2一夜 3 前栽 4 透垣 5 羅門 6 萩
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 夜人一夜
2 けざやかなり
3 前栽
4 たく
三 三つに分類されるうちのどれか。また、傍線部1〜6と「 」の問いに答えよ。
1 何のどんな状態のことか。
2 なぜか。
3,4,6 それぞれ誰が何を「をかし」「をかしからじ」「をかしけれ」と思うのか。
5 使われた理由。
「 」の文構造を説明せよ。
萩などのいとおもげなりつるに、露の落つるに枝のうち動きて、人も手ふれぬにふと上樣へあがりたる
いみじういと3をかしといひたること人の心地には、つゆ4をかしからじと思ふこそまたをかしけれ。
四 二重傍線部1〜5の文法問題に答えよ。
1、3 の違いを説明せよ。
2、5 それおぞレ文法的に説明せよ。
3 音便の種類 本の形
五 口語訳
九月の頃、一晩中降り夜を明かした雨が、今朝やんで、朝日が大層はっきりと差し出したときに、前栽
においた露がこぼれるくらいぬれかかったのも趣深い。透垣の羅文が軒の上にかいた蜘蛛の巣が破れ残っ
ているのに雨がかかって白い玉を置いたようなのこそひどくしみじみと趣深い。
少し日が高くなると、萩などで大層重そうなのに、露が落ちると枝のうちが動いて、人も手を触れない
のに大層趣深いと言ったことtどもを人の心には少しも趣深くないと思うことはまた趣深い。
構成
九月 朝早く 雨の後 庭 |
時
|
庭の草木の露 風情 蜘蛛の巣についた雨のしずく 真珠のよう 静止の美 露が落ちて跳ね上がる 面白い 微妙な動きの美 |
描写 |
主題 露の美
(18)一三〇 九月ばかり、夜一夜 解答
一1 ながつき 2 ひとよ 3 せんざい 4 すいがい 5 らもん 6 はぎ
二 1 一晩中。 2 はっきりしている様子。 3 植え込み。 4 日が高くなる。
三 随想的章段
1 雨のしずくの蜘蛛の巣にかかっている状態。白い玉(真珠)を糸で貫き通した。
2 露が下りているから。
3 清少納言が 「萩などのいとおもげなりつるに、露の落つるに枝のうち動きて、人も手ふれぬに
ふと上樣へあがりたる」を
4 人が清少納言の「いひたることども」を
6 清少納言が自分に面白く感じたことが「人の心にはつyおかしからじと思ふ」ことを
5 自分が興じていることを他人の目でもう一度見つめなおし、新たな感興を催したので。
「 」
S1萩などのいとおもげなりつるに、露の落つるに枝のうち動きて、人も手ふれぬにふと上樣へあがりたる
もV1いみじういと3をかしといひたることどもの、V2人の心には、つゆ4をかしからじと思ふこそV3
またをかしけれ。
S1+V1=(S2)+V2=(S3)+V3
四 1 福助 程度ほど 3福助 程度くらい
2 助動つ体完 5 動落つ体落つる活用語尾
4 イ音便 かきたる