(7)E末摘花5源氏紫の上と二上院にて絵を描く
語釈
・接偶然条件
(1)@二条院に1おはしたれば(光源氏)、紫の君、いともうつくしき片生ひにて(紫の君)、「A紅はかうな
・接単純接続
つかしきもありけり」と見ゆるに(光源氏)、無紋のB桜のC細長、1なよらかに着なして、2何心もなくても
のし2たまふさま(紫の君)、いみじうらうたし(光源氏)。D古代の祖母君のE御なごりにて(紫の君)、歯黒
・格対象 ・接原因理由
めもまだしかりけるを(紫の君)、ひきつくろはせ3たまへれば、F眉のけざやかになりたるも、うつくしうき
よらなり(紫の君)。「G心から、などか、かうH憂き世を見あつかふらむ。かくI心苦しきものを(紫の君)
も見てゐたらで」と、4思しつつ(光源氏)、例の、もろともに雛遊びし5たまふ(光源氏・紫の君)。
(注)@二条院 光源氏の邸宅。A紅はかうなつかしきもありけり 同じ紅でも、こんない親しみのもてるのもあったのだ。ここは、末摘花(故常陸宮の姫君)の所からの帰宅後の場面で、紫の君の衣の色から末摘花の花の色を連想した感想。B桜 襲の色目。表は白、裏は赤、または蘇芳。C細長 上着の一種。仕立て着こなしからつけられた名称かという。D古代の 古風な。E御なごり お躾の名残。祖母の尼君は前年9月に亡くなった。F眉のけざやかに 眉がくっきりと。眉毛を抜き黛を引いたさま。G心から 自分から求めて。H憂き世 気の進まぬ人間関係。さびしく暮らす境遇に同情して末摘花と交際することなどを言う。I心苦しき いじらしい人(紫の君)。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 片生ひ 2 無紋 3 細長 4 歯黒め 5 憂き世 6 雛遊び
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 片生ひ
2 らうたし
3 歯黒め
4 まだし
5 ひKつくろふ
6 雛
三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜2の問いに答えよ。
登場人物
1 「なよらかに着なして」とあるが、「着て」とどのように違うかに注意して、「着なす」を三十字以内で説明せよ・
2 「何心もなくて」とはどういう意味か、四字以内で答えよ。
四 二重傍線部1〜5の敬語について次の表を埋めよ。
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
給ふ |
おぼし |
給へ |
給ふ |
おはし |
語 |
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主語 |
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種類 |
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地の文 会話文 |
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敬意 誰が |
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誰を |
(2)絵など描きて、色どりたまふ(紫の君)。よろづにをかしうすさび散らし1たまひけり紫の君)。我も描
き添へたまふ(光源氏)。1髪いと長き女を描きたまひて、鼻に紅をつけて見たまふに(光源氏)、@画に描き
ても見ま憂きさましたり(女の絵)。わが御影の鏡台にうつれるが、いときよらなるを見たまひて、手づからこ
A紅鼻を描きつけ、にほはして見たまふに、かくよき顔だに、さてBまじれらむは見苦しかるべかりけり。姫
・接偶然条件
君、見て、いみじく笑ひたまふ紫の君)。「まろが、かくかたはになりなむ時、いかならむ」とのたまへば光源
氏)、「Cうたてこそあらめ」とて(紫の君)、さもや染みつかむと、あやふく思ひたまへり紫の君)。Dそら拭
ごひをして光源氏)、「さらにこそ、白まね。用なきすさびわざなりや。E内裏にいかに2のたまはむとすらむ」
・接偶然条件
と、いとまめやかにのたまふを(光源氏)、2いといとほしと思して、寄りて、拭ごひ3たまへば(紫の君)、
「F平中がやうに色どり添へたまふな(紫の君)。G赤からむはあへなむ(光源氏)」と、戯れ4たまふさま(光
源氏)、いとをかしき妹背と見え5たまへり(光源氏・紫の君)。
(注)@画に描きても見ま憂き 絵に描いたのでも見苦しい。A紅鼻 紅花から取った染料。末摘花を念頭に置いた戯れ。Bまじれらむは 赤い色が混じっているのは。Cうたてこそあらめ いやですわ。Dそら拭ごひ 拭いとる真似。E内裏 ここは、天皇を指す。F平中 平貞文(?〜923)。歌人。ここは、硯の水入れを使って泣き真似をした平中が、水の代わりに墨を入れられたの知らず、顔に塗ってしまう藩士を踏まえる。G赤からむはあへなむ 赤いぐらいは、(黒いのと違い)我慢できよう。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 鏡台 2 拭ふ 3 戯れ 4 妹背 5 染みつく
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 色どる
2 にほはす
3 あやふし
4 白む
5 用なし
6 いとほし
7 妹背
三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1・2の問いに答えよ。
登場人物
1 (1)「髪いと長き女」はどういう女性を表すか。
(2)この後、この女になにをしたか。そうしたらどうなったか。
四 二重傍線部1〜5の敬語について次の表を埋めよ。
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
給へ |
給ふ |
給へ |
のたまは |
給ひ |
語 |
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主語 |
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種類 |
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地の文 会話文 |
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敬意 誰が |
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誰を |
五 口語訳
(1) 二条院にいらっしゃると、紫の上は大層可愛い。十分に成長しないで姿で紅はこのように美しい姿のもあったのだと目に映ると、無紋の桜の細長を着ならして無邪気にいらっしゃる様は大層可愛い。古風な祖母の御なごりで、歯黒めもまだしていなかったので、光源氏は整えさせなさったので、眉がくっきりとなったのも、可愛くさっぱりして美し。自分からもとめて、どうしてこう気の進まぬ人間関係に気をもむのだろう。このようにいたわしいものを見ていないで、とおおもいになりながらいつものようにいっしょに人形遊びをなさる。
(2) 絵なども書いて、色をつけなさる。万事面白く気の向くままに書き散らしなさった。光源氏も一緒に描きなさる。髪が大層長い女を書きなさって、鼻に紅をつけてご覧になると、絵に描いたのでも見るのも辛い。自分の御姿が鏡に映っているのが、大層さっぱりして美しいのをご覧になって自分の手でこの紅花を書きつけ美しく色づかせ、ご覧になると、このようにいい顔でさえ赤い色が混じっているのは見苦しいはずだった。姫君はみて大層笑いなさる。「私がこうなったらどうなるだろうか。」とおっしゃると、「つらい。」 と言ってそのように染みつくとしたらと心配に思った。拭いとる真似をして「全く白くならない。つまらない戯れをしたものだ。天皇がどうおっしゃるだろうか。」と大層まじめにおっしゃるのをひどく可哀そうだと御思いになって、寄って拭いなさると、「平中のよに色どりを添えなさるな。赤いのは我慢できよう。」と戯れなさる様子は、大層好ましい夫婦と見える。
構成
(1) (2) |
節 |
二条院 |
時 場所 |
好ましい → 歯黒め 眉を抜く 黛 → 長い髪の女の鼻に紅 自分の鼻に紅花 雛遊び
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光源氏(18才〜19才) |
十分に成長していない。 (末摘花)赤い鼻 無邪気 ←「いや」 ←可愛そう 拭う 雛遊び |
紫の上(10才〜11才) |
主題 美しい紫の上と不器量な末摘花の対比
(7)E末摘花5源氏紫の上と二上院にて絵を描く 解答
(1)一 1 かたおい 2 むもん 3 ほそなが 4 はぐろ 5 うきよ 6 ひなあそび
二 1 十分にせいちょうしないこと 2 かわいい 3 鉄を酒酢などに浸して酸化させた液。歯を黒く染めるのに用いる。おはぐろ 4 まだその時期に至っていない 5 身だしなみをする
6 紙でつくった小さな人形で女の子のおもちゃ
三 光源氏 紫の上
1 体にしっくり合わせて自分に似合うように巧みに着ること 2 無邪気に
四
(2)一 1 きょうだい 2 ぬぐう 3 たわむれ 4 いもせ 5 し
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
給ふ |
おぼし |
給へ |
給ふ |
おはし |
語 |
(し=光源氏) |
光源氏 |
(ひきつくろはせ=紫の上) |
(ものし=紫の上) |
光源氏 |
主語 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
種類 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 会話文 |
作者 |
作者 |
作者 |
作者 |
作者 |
敬意 誰が |
光源氏 |
光源氏 |
紫の上 |
紫の上 |
光源氏 |
誰を |
二 1 色をつける 2 美しく色づかせる 3 心配だ 4 白くなる 5 つまらない
6 かわいそうだ 7 夫婦
三 光源氏 紫の上
1 (1)美人 (2)鼻に紅を付ける 絵に描いたのでも辛い
2 鼻に塗った紅が染みついて、拭っても落ちないふりをした源氏の戯れが、村S機の上には本当に思えたから
四
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
給へ |
給ふ |
給へ |
のたまは |
給ひ |
語 |
(見え=二人) |
(戯れ=光源氏) |
(拭い=紫の上) |
天皇 |
(散らし=紫の上) |
主語 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
種類 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
会話文 |
地の文 |
地の文 会話文 |
作者 |
作者 |
作者 |
光源氏 |
作者 |
敬意 誰が |
二人 |
光源氏 |
紫の上 |
天皇 |
紫の上 |
誰を |